8mgの小説ブログ

WEB小説(ちょっと挿絵)のブログです。ブログ形式だと順番的に少し読みにくいかもですが、一章ごとに完成したら、別サイトにアップしたいと考えています。※このサイトはリンクフリーです。

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WEB小説『画面の向こうのプロレスラー』をメインで更新中!ちょっとアレな性格の女子レスラーの成長物語ですm(_ _)m

画面の向こうのプロレスラー(第3話)

<前の話に戻る>

 

 

 ここは、都内某所のスタジオ内に設置された特設リング上…。

 

「目には目を。反則ばかり繰り返す不届き者には、きつ〜いお仕置きを!っね!?」

そう言う彼女は、冷静に佇みながらこちらの様子を伺っている。

 

「私の想い・・・受け止めてね!」 

彼女がそう宣言してから地獄は開始された。

 

バァンッ!!スパンッ!!ドガッッ!!バァァンッッ!!スパァァァンッッ!!

 

パァァアンンッッッ!!ダァン!!パァァンッッ!!ベキィィィッッッッ!!

 

脚技を中心とした彼女の一方的なラッシュの前に、俺の付け焼き刃のガードなど簡単に引き剥がされてしまう。顔面に何度も何度も拳と蹴りをぶち込まれ、顔の至る所が腫れ上がり、口の中が切れ、鼻血は止まらない。

 

ヤバい、ヤバい、ホントにヤバい、、、ぐぅひぃッッ!!

 

こ、こんなはずじゃ、、、ごほッッ!! 

 

ま、このままじゃ負け、、、がはぁッッ!!

 

よりによって、こんな水着のような格好の女に、、、ぐぉッッ!

 

一方的にやられて、、、ぶぉぉッッ!

 

俺のチャンネルの前回配信時・・・『百何十連勝?空気読まず止めてきまーす!!』と啖呵を切ってきたにも関わらず、この有様…しかも、反則技をあの手この手と仕掛けまくった結果がこれだ、、、ぐぎぃぃッッッ!!

 

涙で視界はもうほとんどなく、フラフラで立っているのがやっとの状態だ。

 

「じゃあ、とどめ・・・いくね!!」

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彼女は沈み込むように体勢を低くする。

 

い、嫌だ、ゆるしてくれ、、、彼女が獲物(俺)を仕留めようとする刹那、今日の試合が走馬灯のように頭を駆け巡る・・・

 

・・・とにかくどんな方法を使ってでも勝つ事が一番の目的だと考えた今日の試合、俺はグローブとシューズの中に金属製のプレートを仕込んだり…相手の目を潰す為に砂を使ったり…反則と知りながらあらゆる手を使って主導権を握ろうとした。しかし、対戦相手の彼女は俺の汚い戦法に何一つ不平を言う事もなく、正面から受け止め続ける。そして、とうとう反撃に転じた。その逆襲は凄まじく、俺の心は簡単にへし折られた。

 

・・・整った顔立ち、大きな胸、キュッとくびれたウエスト・・・

 

そんな彼女から繰り出される攻撃…しなやかな身体の動きに俺は思わず見惚れてしまう。

 

股間は大きく膨らみ、完全に勃起していた。こんなやられる間際…よりによってこんな状況で、なぜこんなにも欲情しているのか自分自身でも理解できなかった。

 

でも、ただ一つ言えるのは・・・

 

「うっ、、、ぅうつく・・・」

 

バァキィィィィィィィィィィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!

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・・・ダァン!!

 

まだ、リングに沈んではいない、、、膝を付いた状態で、奇跡的に倒れ込んでいないだけだ。

側頭部を蹴られる瞬間、定かではないが彼女に手加減をされたような気がした。

しかし、膝を付いたこの状態から起き上がる事も身体を動かす事も出来ない…もうとうに限界は超えてしまっている。

 

「おっ、ナイスガッツ!最後にようやくナイスファイト出来たね!」

そう言いながら、彼女はゆっくりとこちらへ向かって歩いてくる。

 

そして、彼女は既に動けない俺の体をリングに寝かせるように動かして、ゆっくりと俺の頭、首周りに彼女の脚、太ももを絡み付ける。

 

・・・く、四の字・・・固め・・・

ギブアップを叫ぶ事も出来ない。体も動かない。もはや逃げのびる事は出来なかった。

 

彼女の太ももに埋もれていく恐怖と今日の試合で初めて密着した彼女の身体の感触とで、俺のアレは元気にいきり立っていた。

 

「カメラさんこっち!フィニッシュホールドいくよ!!」

 

・・・あぁ、俺はトドメを刺されるのか・・・

 

僅かな意識の中、彼女の手が俺の下半身に伸びる・・・!!!!!

・・・そして俺のバトルパンツをずりおろし、イチモツをあらわにさせる。

 

「ニヒッ♡」

悪巧みをするような笑顔を浮かべた彼女は、俺のギンギンにいきりたったイチモツを激しく上下に動かしながら、テンカウントを始める。

 

「10、、9、、8、、7、、6、、、

 

ピキピキッ・・・俺のイチモツの中で何かが逆流してくるような激しい感覚に囚われる。や、やめてくれッ!や、やばい、、、

 

、、、5、、4、、3、、2、、これでフィニーッシュ!!!」

 

だ、だめだあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!

 

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ドピュッッ!ビュルルルルルルーーーーーーーッッ!

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

198cmの大男が大の字になって倒れている。そんな彼を見下ろしながらリリーはちょこっとお辞儀をしながら勝利ポーズをカメラに送った。

 

このような結末となった、先日のプロレスラー鬼頭淳弥戦から間を置かずして開催・配信された次戦・・・

床に寝転がっている対戦相手の巨漢男の名前は『林葉マー』と言う”自称アマチュア総合格闘技西北チャンプ”という肩書きを持つファイターだ。

彼は大手動画サイトに”マーチャンネル”という自分のチャンネルを持つ配信者でもある。”挑戦”というテーマを掲げて格闘技における様々なことにチャレンジするチャンネルでそこそこ人気もある。チャンネル登録者数も少なくはなく、そんな彼が次の挑戦として挙げたのが、巷で噂の165連勝中のレスラー”リリー”に挑戦することだった。

 

絶対勝てると自信を覗かせて挑んだこの試合…。

序盤戦は林葉選手の反則技が目立ちまくる醜い展開となる。

それでもリリーは不満を漏らさず、とにかく攻撃を抑えて受け身にまわる戦術を取った。そして、林葉選手の打つ手がなくなったと見るや反撃を開始する…。

本来リリーはアクロバットな技や組み技などを多様するが、今日の試合は、相手のフィールドに乗りかかるように、総合格闘技のルールに寄せた打撃技中心のスタイルをとる。

 パンチやキックを何十発も大男に浴びせかけ、最後は彼女得意のホールド技で試合を決めた!結果的には彼女の圧勝に終わったのであった。

林葉選手は失神KOされ、ヒクヒクと体は痙攣を起こしていた。リリーは救護班を呼びすぐに病院へ搬送するように送り出す。

 

「ちょっとやり過ぎちゃったね♡」

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いやっ、毎回毎回・・・あなたやり過ぎてますよ!!と視聴者から総ツッコミを入れられそうなことをいう彼女だが、この試合の前半…相手選手の反則技に相当ダメージを蓄積させられたはずなのに、リリーは何事もなかったかのように明るく振る舞っていた。

 

ド派手な技がフォーカスされがちの彼女だが、無尽蔵のスタミナと忍耐力こそがリリーの真の魅力だ。ボロボロになってるのにそう見せないような立ち居振る舞いをする彼女に感動すら覚える。

 

・・・やはり、リリーはアスリートとして尊敬する・・・ 

そんな尊敬の気持ちが10%・・・

 

残りの90%は・・・ 顔、おっぱい、おしり、、、、□△×◯ねうぇksっか・・・・

 

さて、この無様に敗北した男こと 『林葉マー』選手のその後のお話・・・果敢に挑んだ挑戦は失敗に終わった。というより、反則を繰り返すその試合内容がよくなかった。『リスペクトを欠いた行為』に彼の動画チャンネルやSNSは当然炎上した。彼自身の行動が彼を応援するファンを失望させ、彼のチャンネルから離れる者が後を絶たなかった。

慌てるように彼は試合翌日に『謝罪動画』をアップロードしたが火に油を注ぐだけだったが、それから少し間を置いてまた別の動画をアップロードする。

 

『病み上がりの俺が〇〇女王様にボコボコにされてみた』というタイトル・・・

 

・・・あれっ?何か流れ変わった・・・?

 

そこには林葉選手が〇〇女王と呼ばれるSMクラブの女性と対戦してボコられる姿があった。どうやら、リリーとの対戦で、彼の中の何かが目覚め、扉が開いてしまったようだ。

これまでとは180度違うコンセプト・・・彼のチャンネルを離れる者は多かったが、俺はそっと彼のチャンネル『マーチャンネル』を登録した・・・。

 

 

 

俺、鏡恭助(かがみきょうすけ)は、先日ライブ配信されたリリーの試合を再視聴しながら、試合内容と気になった点などをノートにメモする。

リリーチャンネルのライブ配信時は欲情・興奮に全力を尽くす俺だったが、レスラーとしてのリリーを再視聴しながら分析することは俺のルーティーンでもある。

そうやって書き残してきた俺のこのノートと資料がいよいよ役に立つ時が来たかと思うと嬉しさのあまり心が踊り狂うようだ。

 

 

・・・いよいよ明日、俺、鏡恭助はリリーと対面する・・・

 

 

 

先日、俺は大学の友人…月島理科(つきしまりか)をLINEで呼び出した。

 「どうしたの?すごい真剣な顔して?」

「月島、お前にだけ話しておきたい事がある。」

俺が発する空気が伝わったのか、彼女は隣の席に座り、まっすぐ真剣な表情でこちらを伺う。

 「この前、リリーチャンネルのメールフォームで呼びかけてみたらって月島が提案してくれた件でさ・・・」

「うんっ!」

「・・・で、一応思いの丈をぶつけるように色々書いて送ったんだ!」

「うんっ!」

「そしたら、返信があったんだ。近日中に接触出来ないかって!」

「すごいね!!」

「もちろん、宜しくお願いしますって返信したよ!でもね・・・どういう形で接触するかどうか具体的な事はまだ何もわからないんだ。」

「そうなんだ。」

「リリーの正体って、完全に機密事項・・・タブーだろ!?」

「うん。」

リリーの正体・・・プライベートについては完全非公開で相当なセキュリティーによって守られている。彼女が一体何者なのかリリーチャンネルの関係者以外はわからないと言う。その核心を突こうとしたパパラッチがこの世のサイハテに飛ばされたと言う噂を聞いた事もある。

 「もし俺がリリーと会った場合、その時点で俺とリリーの間に接点が出来るけど、そうなると色々な事情が掛かってくると思うんだ。だから俺はバイトを辞めてきた。」

・・・リリーチャンネルからの返信で、近日中にアプローチさせてもらいますという返信があったので、バイト中に返信が来たりでもしたら、詳しく打ち合わせ出来ず、最悪会う話が流れてしまっては元も子もない。それだけではなく、秘密事項であるリリーの正体を知ってしまう事はそれだけの責任を伴う事であると俺は認識していた。

 「それで、今はいつ返信が来てもすぐに対応できるように1時間以上の睡眠は避けるように徹底してるんだ。」

それが、今自分が出来る最低限の行動だった。

 「ぁ・・・ぁあわわわ・・・ば、バイトを辞めて、そこまでして待ってるの!?」

 「当たり前だ!これくらいの覚悟がないと失礼だろ!!」

 「す、スゴいね・・・!!鏡くんの心意気はわた・・・いやリリーに絶対伝わるよ!!やっ、やばい・・・は、はやく・・・し、しないと・・・

 「んっ!?どうした月島??」

「いやっ、な、なんでもない!!」

 いきなり挙動不審になる月島だが、俺の事を本当に心配してくれているだろう。

 月島理科…彼女はホントにいい子だ。俺の中での一番はあくまでリリーで、それが揺らぐ事はありえないが、この月島はホントに俺の事を親身に思ってくれる。おそらく月島は俺の事を好きなんだろうとひしひしと感じている(うぬぼれ)

 

 それから”トレーニングに付き合ってくれませんか”というリリー本人からの招待メールが届いた。

日時は◯月◯日のPM2:00 ○○区○○の△△△公園にて落ち合う予定だ。

 至って簡素なメール内容だったが、テンションMAXの俺は、すぐに月島を呼び出して状況を伝える!!

 「おっ、落ち着いて鏡くんっ!!まだ時間もあるんだから・・・そうだ準備を整えようよっ!!一緒にトレーニングすることになるとしたら・・・ほら、トレーニングウェアとか必要になるものもあるんじゃない?」

「確かに!!そうだ!!月島ナイスだよ、お前はホントにいい事言うなっ!!」 

「◯月◯日だよね・・・その前日に予行練習も兼ねて、その○○区○○の△△△公園で待ち合わせして、それからスポーツ用品店に一緒に行かない?私、その日は夕方からバイトだけどその前に付き合うよ!」

「えっ?いいのか!?ありがとう月島!!俺、女性受けしそうな格好でどれを選べばいいかわからないんだ。本当に助かる!!」

「うん、わかった!!」

・・・月島、彼女はホントに健気でいい子。こんないい子は他にいないくらいの存在だが、俺が好きなのはリリーという本当に忍びない関係性に俺は心苦しくなる時もあった。

 

 

・・・こういう経緯があって今に至る・・・

俺はPCをシャットダウンして家を出る…。リリーとのご対面を控えた前日、俺は月島と待ち合わせして明日の予行練習&必要な物の買い出しに行く・・・。

 

 

 

「鏡くん。お待たせ!」

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いつものように眉毛をハの字のにしながら月島理科がやって来る。

 

彼女との待ち合わせ場合は最寄駅から少し離れた位置にある山遊具のある公園前だった。明日この場所でいよいよリリーと対面を果たすのだ。

 

「今日はわざわざ付き合ってくれてありがとな、月島!」

 「ううん、気にしないで!今日バイトは夕方からだから充分時間もあるし…」

現在時間はAM10:30。平日ということもあって人通りも少ない。

「…それに、大学以外で一緒に出掛けるのは初めてだね!」

そう言う月島は何か嬉しそうだ。本当によかった。俺みたいな不純な奴に嫌な気ひとつも見せず付き合ってくれることに心から感謝している。

「明日、いよいよ念願のリリーとここで会えるんだな。」 

「鏡くんはリリーと会えたら何したいの?」

「ボッコボコのギッタギタに、もうこれでもかって言うくらいケチョンケチョンにやっつけられたい!」

「そ、即答…だね、、、」

「当たり前だろ。俺くらいのレベルになると訓練はしっかり行き届いて、いつどんな状況でリリーに襲われても対応出来るようにイメージは出来ているんだ。」

「・・・す、すごいね!尊敬はしないけど。。。」

そうこうしながら、公園内の山遊具前まで歩いて来た。

 

 「場所間違えないようにしっかり道のり覚えないとね。」

「そうだな…まぁ、3日前から毎日ここに来てシュミレーションしてるけどな!」

「えっ!!み、み、3日前から!?」

「当たり前だろ!リリーは基本的に正体を隠してるのに、俺との接触でパパラッチにでも見つかったらまずいだろ。だからもしもの場合の脱出経路を3日前からここに来て調査してるんだ。」

 俺はリリーと会うまでの時間を有効的に活用しようと出来る限りの事はするつもりだ。

「ホントは1週間前ぐらいから入念にシュミレートしたかったんだけどな。」

  「だ、大丈夫!そこまでしなくても鏡くんの想い、やる気は充分にリリーに伝わると思うよ!ほっ、ホントに!!」

「そうか…。でもそこまでしたいんだよ。ただの自己満足だけど、どうせやるならリリーに自分の全身全霊を掛けるくらいの事はしたい。それに別に伝わらなくてもいいんだ。無償の愛ってやつだ。」

正直、リリーに見返りを求めるような事は微塵も思ってない 。はっ?なんなの!?と軽くあしらわれるくらいの方が逆に興奮するのだ・・・俺はそれくらい調教されている。

「いやっ、伝わる!絶対に!!鏡くんの気持ちをスルーするような、おざなりにするような奴は私が絶対に許さない!!」

と、急にヒートアップする月島。いきなりどうしたと彼女をなだめるが、時々月島は気持ちを全面に押し出すような状態になることがある。すごく熱いハートを持っていて、思いやりに満ちている。そんな彼女に惹かれるのは当然の事でリリーと俺の行く末がどう展開していくかはわからない・・・でも月島には包み隠さず全てを話して共有していきたいと俺は考えていた。

 

それからは、再確認するように公園を少し散策してから、次の目的地であるスポーツ用品店(トレーニングウェアなど必要なものを購入するため)へ向かうことになった。

 

「大型スポーツ用品店がある〇〇商店街通りへは、駅に戻ってから二駅目だね。」

「なぁ、二駅くらいならここから歩いていかないか?運動にもなるし!」

「うん、いいよ!途中、勾配のある坂があるみたいだけど景色もよさそうだし!」

そうして、俺と月島は〇〇商店街通りまで、徒歩で移動することになった。

「月島、〇〇通りまでの道のりはお前に任せる。俺を導いてくれないか!!」

「う、うん、わかった」

 

月島を先頭にして移動する。彼女は時々スマホをチェックしながら道順に間違いがないか確認する。

 「うん、この道で大丈夫みたい!」

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「そうか、それはよかったナイス月島!」

ホントに月島はナイスだ!

ナイスパン・・・ナイスタイツ越しのパンチラ!と俺は拳をグッと力強く握った。

 

月島理科(つきしまりか)は、派手さはなく、前に前にとグイグイ出るようなタイプではない。それでも可愛い顔でおっぱいもデカいとなると、他の男子からモテない訳がない。大学において月島は多くの男達からアプローチを受けまくっているようだが、それをことごとく断った上で俺と仲良く接してくれる…もう俺は彼女を本当に大切にしなければという気持ちでいっぱいだ。邪な考え等は厳禁だ。

 

しかし、向こうがせっかくサービスショットを提供してくれているのに、それを見て見ぬ振りをするなんて、それこそ愚かな行動だ!パンチラをガン見する事こそ、紳士としてのたしなみであり、彼女の気持ちに最大限に応える最適解である。

現在、〇〇通りまで彼女に案内してもらっているが、そこまでの経路は既に調査済みであり、3日前から待ち合わせする公園の周辺2〜3km圏内は可能な限り歩き尽くしていた。

月島よ、、、この先〇〇通りまでは急勾配な坂や階段が続く都内有数の坂道スポットだ!お前の無防備なスカートの中を余す所なく堪能させてもらえそうだ!

・・・そう思いながら、俺は対面から人が歩いて来た時邪魔になるからという理由で、月島が俺の目の前、程よくパンチラが拝めるような位置に来るようにして歩かせる。

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・・・おやおや、この期に及んでそのような無意味な行動に出るお馬鹿さんは誰ですか?

 

やはり俺の視線に気付いたのか、月島はスカートの中が見えないように、左手でガードしようとする・・・とても愚かな行為だ!

 

月島・・・そちらがその気なら、こちらとしは・・・

 

 「ここからは本気で行かせてもらう!!」

 

俺は心の中で(心の外にも出てた)そう宣言した!!!!

 

 

・・・こんな感じで俺と月島は、〇〇通りまでの間・・・『パンチラを見ようとする者、見られまいとする者』という”どうしようもなくくだらない争い”を繰り広げながら移動した。

(↓サイドストーリーをFANBOXにて掲載!こちらもよろしくおねがいします!)

box8mg.fanbox.cc

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

「・・・・・・。」

「どした!?」

「・・・・・・。」

「まぁ、月島!そんなに気にするな!俺も全然気にしてないから大丈夫だって!」

「いやいやいやッ!散々スカートの中を覗かれまくった私が、なんで悪いみたいな風潮になってるの!?」

 現在、既に〇〇通りに到着している・・・ここまで来る途中、月島のスカート内部を堪能した俺だったが、まだプンスカ怒っている月島を、なだめて、話の要件をすり替えて、彼女の怒りを封殺した。

 

そして、いよいよスポーツショップへとやって来た俺たちはビルの中へ入る。

5階建のビルで4階までがスポーツショップエリアとなっている都内でも有数の専門店だ。スポーツ用品だけでなく、スポーツ関連の書籍や映像資料も取り扱う充実ぶりにアスリートでもない俺でさえ、お店へ入れば気持ちがワクワクしてくる。

 

俺たちは格闘技関連の商品が置いているコーナーへと移動する・・・その途中・・・

大型液晶モニターが設置され、スポーツ関連の映像が垂れ流しとなっていたが、そこに映されていた映像には、先日リリーと対戦した相手プロレスラーの『鬼頭淳弥』がスーツ姿で映し出されていた。

その映像に思わず俺と月島は立ち止まり、モニターの映像を見る。

どうやら、記者会見のライブ映像のようだ。記者からの質問に”現役続行”を高らかに宣言する鬼頭淳弥選手。

プロ団体に所属するレスラーが何処の馬の骨ともわからないような女子レスラーに無様に敗北して大恥をかいたにも関わらず、なおも現役を続行するのか?今日はあなたがいつ辞めるのかを聞きに来た!・・・等という辛辣な言葉を記者達から浴びせられた鬼頭選手だったが、その表情には一点の曇りもなかった。

「本気で戦って、実力で負けた。ただそれだけです!再戦とかそんな事を考える以前に、まずは来年のチャンピョンシップを制覇することを目標に今後も邁進します!」

そう鬼頭選手は高らかに宣言した。周りとの温度差が印象的だったが表情を見るになんの躊躇いや戸惑いもないようだ。

 

「すごいな、鬼頭さんは!!」

「うん、そうだね。」

この鬼頭淳弥選手やこの前の林葉マー選手など、リリーとの対戦で敗北した彼等がその後、何か心変わりしたような、吹っ切れたような印象に変わっている。

リリーにドピュドピュ(隠語)され、醜態の向こう側に達した彼等は何故か清々しく、その姿に共感したくなるのだ。

 

 

それからは、格闘技用のハーフスパッツやグローブ、膝プロテクター等のセンス的な部分を月島と相談しながら選び一通りの物は購入した。

「月島も何か買うのか!?」

「うん、コレっ、リストバンド!」

彼女が持つのは黒のメンズリストバンドだった。

 「これは私から鏡くんへのプレゼント!これからガンバレって応援の意味も込めてね!」

 「マジかよ!?嬉しいよ、月島!!ホントにありがとな!!」

月島には感謝しかない。今日も、そしていつも俺に付き合ってくれる上、リリーと対面するキッカケを作ってくれたのも彼女だ。

「月島には与えてもらうばかりだから、何かお返しがしたいんだけど・・・」

何か欲しいものがないか、俺が出来る範囲でのお返しを聞くが、現時点でとりわけ欲しいという物は思いつかないそうだ。

「じゃあ、貸しって事でいいかなぁ?」

「貸し・・・あぁ、わかった!」

「いずれまとめてガッツリ回収したいと思います・・・だから、その時まで震えて待ってね!」

「おいっ!やめろその言い方は!」

月島にはとてつもなく多くの大きな借りが出来てしまったようだ。まぁ彼女が楽しそうなので、俺はそれでよしとした。

 

「思ったより早く終わったなぁ。」

「そうだね。」

「月島、お前アルバイトは夕方からだろ?結構時間を持て余すよな、、、とりあえず、お昼も回ってるし、何か食べに行くか!」

「うん!」

現在の時刻は12:30…買い物が予想以上に早く終わったため、時間を潰すことになったが・・・ここまでの俺の用件は全て終わった。これからの時間は、今日付き合ってくれた月島の時間潰しに付き合うつもりでいた。

 

「明日リリーと会うから、前日の今日は何を食べればいいかかなり迷うなぁ。」

「そうだね。」

リリーと会った後、もしトレーニングに同行する・・・とかいう事になったりでもしたら、かなり激しい運動が想像される。そんな時、前日のコンディション作りは重要であり、どう立ち振舞って明日に臨むのかをしっかり考えなければならない。

「そんな鏡くんの為に、アスリートフードを取り扱うお店知ってるよ!!」

「マジっ!?そんなのがあるんだ??」

「うん。スポーツの大会前の食事にっていう触れ出しで結構人気のお店。そこなら消化が良くて簡単な食事も取れるはずだよっ!」

「おぉっ!!すげぇな月島っ!!お前はなんてナイスなんだよ!」

「うん!!だって、そのお店が私のバイト先だったりするから・・・」

「そうだったんだ!?そんな所で働いてたのか?月島お前、この前イベントのバイトで働いてるって言ってなかったっけ・・・?掛け持ち!?」

「うっ、うん!!そうなの。掛け持ちなんだ、掛け持ち!!掛け持ち!!」

 

そうこうしながら、俺と月島は彼女のバイト先のお店へ移動する事になった・・・現在いる〇〇通りからは距離もそれほど遠くはなかった。

 

そのお店の名前は『ファースト膳』・・・名前を見ると和食かなと思うがお店の装いは洋食屋さんっぽい…よくわからないお店だったが、確かに人気なのか店内はかなり混雑しているようだった。

 「こっち来て!!」

 お店に入り口に案内されるのかと思いきや、月島はお店横の小さな扉を開けて路地裏の方へ俺を誘導した・・・

 「えっ!?え!?」

戸惑っているうちにも、月島はスタスタと裏路地の先にあるまた小さな扉を開けて室内に俺を案内する・・・

「おいっ!月島これはどういうこと・・・」

「まぁまぁ!!」

そう言いながらさらに奥の扉をボタンで開けると、それは業務用のエレベーターらしきボックスだった。月島はB2ボタンを押すとエレベーターはウィーンという大きめの音を響き渡らせながら俺たちを閉じ込めた箱は下へと動き出す。

普段消極的な彼女が、なりふり構わずといった態度を取る事は珍しかった。

 

「月島!?お前の事は信頼してるから別に構わないけど・・・状況説明を今ここで問いつめた方がいいか?それとも後で聞く方がいいか?」

「・・・もうちょっと後の方で。」

「・・・わかった!」

 

月島はこれまで俺のために色々と動いてくれた。力になってくれたり、助けられたり…

そんな健気な彼女が初めて見せたわがままを否定することなんて出来なかった。

だからここは彼女の思う通りに行動することにした。

 

 

ノロノロとした搬入用のエレベーターが地下へ到着する。

エレベーターを降りると廊下のような所に出たが、真っ暗で向こうに見えるは非常口の明かりだけだ。

 

ガチャンッッッッ!!

 

ブレーカーを引き上げる音。月島がレバーを操作したようたが、辺り一面真っ暗だった空間が 一気に明るくなる。

 

「こっち。」

廊下を少し行き、L字型の角を曲がったその先は開けた地下空間になっていた。

 

「これは!!」

そこには広々とした空間の中央にリングが設置され、壁側には様々なトレーニング機材が並んでいる・・・トレーニングジムそのものだ。しかも機材関係も新しく、最新の設備が揃っているようだった。

 

「トレーニングルーム!?どうして?」

「え、えっと、、、あの、、、」

 

月島は何か物凄く緊張しているようで、少し震えている。いやっ、何か言いにくそうな事を必死に心を整えて言おうとしているようだ。

月島が見せた強引な誘導、このトレーニングルーム・・・状況を察するにおおよその事は読めてくる。

 

「言いにくいなら、俺が当ててやろうか!?」

「えっ!い、いや…」

 

「月島、お前はリリープロジェクトの関係者で、もしかしたらスタイリストか何かだろ??どうだ!?」

 

俺がリリーに会いたい会いたいと連呼するものだから、関係者である月島は、ずっとひた隠しにするのも心苦しく何とかしたかったんだろうと俺は悟った。

 

「い、いや、合ってる所もあるけど、ちょっと違う!!」

「何ッ!じゃあマネージャーか何かなのか??」

「いやっ、そうじゃなくて・・・」

「じゃあ、何だよ!?正解教えてくれるか?」

「う、うん、、、あのね、、、

 

 

 

、、、あの、、、つ、つまりは、、、

 

 

 

、、、私が、、、リリーです。。。」

 

 

 

「へっ?月島が、、、リリー??」

「そうなの、、、」

 

 

 

「ないないないないないないないない!!!」

「!?」

 

 

「それはありえんよ、月島〜!!冗談キツイぜまったく!!」

「いやっ、ホントだって!!」

「確かに、お前とリリーの髪の毛の色が似てる。体型が似てる。推定バストサイズが似てるとか、色々俺も月島がリリーじゃないかって考えた時もあったよ!でも色々考えて検証した結果、別人だって結果に至ったんだよ!」

 

俺は月島がリリーじゃないか疑惑を当然考えた事もある。しかし、月島との普段の会話や接し方を見た上で俺は月島はリリーじゃないという結論に行き着いた。

 

理由は中身が全く違うからだ!!

 

モニター越しではあるが、リリーチャンネルの動画を擦り切れるくらい何万回も見てきた俺だから言える。モニターの向こうのリリーは自分を偽って演じながら闘っているとは思えない。狂気に満ちて、実は対戦相手をリスペクトしながら破壊を好むその狂いっぷりは、演技して出せるものではない。

一方、俺と月島は出会ってからの付き合いもそこそこ長い。彼女の人となりもわかってきたつもりだ。そんな月島とリリーとを比べて同一人物だと言う方がおかしい!!

 

「月島とリリーの性格は全く別人だぞ!!お前と知り合って1年以上経つけど、これまでずっとお前は、ちょっとポンコツな月島理科を猫かぶって演じてきたのか!?俺との1年間の思い出は偽りだったのか!?そうじゃないだろ!?まぁ、これだけのトレーニングルームに案内してくれるって事は、リリーの関係者だって事は認めるよ。もしかして生き別れた双子とかか何かか!?」

「違う!!そうじゃない!!確かに私とリリーの性格は似てないけど、それでも私はリリーなの!!」

「月島、お前は強情なヤツだなぁ…。じゃあ、お前がリリーだって何か証明してくれないか!?」

「わかった。私、リリーになるよ!!それでいいよね!!」

「ああ、いいよ!!なんなら勝負でもしてみるか?それでお前の実力も証明出来るだろ!?」

「わかった・・・でもどうなっても知らないからね!!私着替えてくるから、鏡くんも着替えて待っててよね!!」

「着替えるってコレ?」

「うん。」

 

今日買ったばかりのハーフスパッツやグローブに着替えろという事だ。購入後、即使用とは思ってもみなかったが、俺は月島の提案に従う事にした。

思いもよらない展開だ。まさか、俺と月島が勝負する事になろうとは…。とは言え、あの月島のようなポンコツな女の子とまともに闘っていいものかと躊躇いもある。でも女の子とマジで勝負するというシチュエーションに遭遇する事は滅多にない。この機を逃すものかと俺は鼻息荒くOKした!

 

「じゃあ待ってて。」

月島はトレーニングルームの脇の扉を開けて、更衣室に入っていった。

 

 

・・・・・・・・・

 

 

おいおい、2人っきりで一体何やってんだ!?

 

 

俺はようやく今の状況を客観的に見つめ直せるようになった。

誰もいない広い地下室にリングがあり、そこで勝負する。そんな常軌を逸した状況が月島1人の力で出来るはずがない。絶対何者かの手助けがあっての事だと思うが、確か月島はどこかの令嬢だけど今は寮暮らしをしていると聞いた事がある。経済力でこんな状況を作り出せるものなのか?それはわからない。

 

そう言えば、明日リリーと対面するという話だったけど、それはどうなった!?

今日、何故月島と勝負する事になった??

 

色々な事がありすぎて状況がまだよく掴めない。もうこれはしばらく周りの状況に流されてみて様子を伺うしかないと判断した俺は、月島が着替え終えてやって来るのを待つ事にした。

 

真新しいハーフスパッツやグローブ、プロテクターを装着した俺は、トレーニングルームのガラス張りの壁の前に移動し、自分の全身を見渡す。

 

・・・あれっ、結構イケてるんじゃね、俺?

 

格闘家みたいなそれっぽく見える錯覚に駆られた俺は心なしか強くなったような気がしていた。

 

そうこうしているうちに

ガチャン!と更衣室を開ける扉の音がした。

 

ようやく月島が着替え終えて出て来・・・

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

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・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「初めまして、鏡恭助くん!!」

 

 

 

えっ

 

 

 

 

いやっ、おかしい・・・目の前にいるのは間違いなくリリーだ。説明などいらない。見ればわかる。

 

 

・・・でも俺は目の前のリリーを無視して、真っ先に更衣室の中を確かめた。更衣室の中には誰もいない。月島が先程まで着ていた服が丁寧に折り畳まれて置かれているだけだった。人が隠れられるようなスペースもない。

 

 

 

えっ

 

 

 

・・・って事は・・・

 

 

俺は更衣室から出て後ろを振り返った。

 

 

 

「ニヒッ♡」

そこには悪戯笑いの表情を浮かべる彼女の姿があった。

 

 

 

 

ええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

えええええええぁぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

 

天地がひっくり返るようだった。いやっ俺の周りの空間が歪んで見えている。瞬間湯沸かし器のように真っ赤になって熱量が爆上げされた自分がいる。完全に冷静さを欠いているようだ。

月島がリリーなんてあり得ない!!!あり得ないが目の前には正真正銘のあのリリーが立ち尽くしている。

 

そ、それでも俺は常日頃から彼女と会う日を想定して準備してきたんだ。自分にそう聞かせながら口を開く。

 

 

「その状態の今、月島理科、彼女は寝ているんですか!?」

 

 

!!!!!!

俺のその言葉に彼女は驚いたような表情を浮かべる。

「ううん、理科あの子はちゃんと起きてるよ!心の中ではいつも二人でくっちゃべってるわ!!今あの子は凄く恭助に申し訳なさそうにしてる。でも、凄いね!なんでわかったの!?」

「君が″初めまして″って言ったから。つまりは意識も記憶もあって2人で共有してるって事!?」

「そうよ!今は私が表に出ているだけ!」

 

 

・・・そうか、そういう事なんだ・・・

 

俺はその可能性も考えた事もある。しかし、今でも信じられないくらいだ。

 

 

「遅くなったけど初めまして!!月島理科のもう1人の人格、、、リリー!!」

 

月島理科は二重(多重?)人格で、そのもう1人の人格があの狂気のレスラー『リリー』である。これで色々な辻褄が合う。しかしながら、念願のリリーと対面出来たのにも関わらず、あまりに驚きの事実が多くて、頭がついて来ていない。感動に浸ってもいない。

 

「ようやく会えたね、恭助!!」

「俺の事・・・もう説明する必要もない・・・よな?」

「うん、恭助の事はよ〜く知ってるよ!私の事が好きとか、私の事を愛してるとか!!」

 

 

今まで月島の隣で散々リリーについての俺のコメントは全て筒抜けだった!!!!

俺の動揺にさらに追い討ちをかけられるようだった。

 

 

「それに恭助は私に会ったら何したいっていってたかなぁ??確か〜即答だったよね〜??」

 

急に冷や汗が出て来て、脚もガクガクと震えてきた。

 

「恭助はボッコボコのギッタギタに、もうこれでもかって言うくらいケチョンケチョンにやっつけられたいんだったよね!!??」

 

もう、名指しでリリーの口からそのような言葉が聞けただけでも鼻血が吹き出しそうになっていた。しかしながら、自分自身の生命の危機的状況でもある。

 

「い、いやっ、それは言葉の誤りっていうか、社交辞令みたいな・・・」

「その望み叶えてあげる♡」

 

死ぬ!!逃げられない!マジで死ぬ!!

ホントにヤバい!!

本来なら明日会う予定で心の準備がまだ出来ていない…ってそんな事を言ってる場合じゃない!!今まで俺が月島にベラベラ喋ってた事が全てリリーに伝わってた事があまりに致命傷過ぎる!!

マジでこのまま水蒸気になって蒸発したい!!

 

「・・・あの・・・怒ってる?」

「ううん、そんな事ないわ!むしろ楽しみで仕方がないの!!ずっとこの手で私を愛してくれてる恭助の事、ぐちゃぐちゃにしてみたいって思ってたから、ようやくその願いが叶うと思うと・・・興奮が収まらないの!!」

 

アカン!!これは絶対アカン奴や!!

彼女の目は完全に狂っている。彼女の言動も狂ってる!!

 

それから何を言い合ったのかよく覚えていないが、言葉巧みに強引にこのトレーニングルーム中央のリング上げさせられた俺は、リングの端と端とでリリーと対峙していた。スパーリングという事で、特にルールで縛るという事もなく、どちらかが戦闘不能となれば勝敗が決まるという事にした。ギブアップではなく戦闘不能で決まるとか、もう死は確定じゃないのだろうか?と思えてきて半泣きになる。

 

「ずーっと楽しみにしてたんだよ!!恭助をこの手でぐちゃぐちゃにするその時を♡」

 

くそぅッ!!リリーはとことん俺の精神を動揺させようとしてくる。彼女とまともにやり合って勝てるはずがない。これまでプロレスラーや様々な格闘家達と対戦し、勝利してきた彼女だ。そんな化け物相手に勝てる可能性はゼロである。もう脚はガクブルで立っているだけでもやっとだ。こんな状態で闘えるのかどうかもわからない。出来れば逃亡したい。

 

 

・・・完全に意気消沈していた俺だったが、ふと自分の手のひらに視線がいく。

 

目黒のリストバンド・・・今日月島にプレゼントしてもらった物だ。

 

そう言えば、リリーは月島理科でもあるんだよな。あのちょっとポンコツ、チョロい所もあるけど、とっても優しい彼女・・・それが月島理科だ。

 

そうだよな!リリーは月島理科だったんだよな!

 

そう考えると、さっきまでの全身の震えが嘘のように静まっていた。

 

 

「リリー!!お前は月島理科だよな!!」

 

「えっ?そうだよ。」

 

「そうだよな!?ビビる必要なんてなかったよ!!俺が月島相手に負ける訳がない!!月島がリリーだとしてもそれは変わらない!!」

 

「ふぅ〜ん、、、そうなんだ!?」

 

「リリー!!

 

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「俺が今日まで対リリー戦を想定してどれだけ準備してきたかを思い知らせてやるよ!!これは愛だ!!愛ゆえにどれだけ俺がお前を分析してきたのかを見せつけてやる!!」

 「勝つのは絶対に俺だ!!」

 

 

 

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「わかった!じゃあ私も全身全霊をかけて相手してあげる!!その愛を上回るくらいの慈愛で受け止めて、全力で恭助を潰しにいくわ!!」

「勝つだけじゃ飽き足らない!!私は破壊したいだけ!!」

 

 

 

 

「いくぞ!!」

「オッケー!!」

 

俺とリリーは両方向からリング中央へ向かってダッシュする。

 

いよいよ念願のリリーとの勝負が始まる。

 

 

 

 

わかってはいるけど、俺はこの闘いに敗れるだろう。

 

敗れるだけで済まされないかもしれない。それでも、俺はこの状況を受け入れ、未来に可能性を繋げていく為には、俺自身の闘争心を掻き立て極限状態になければならない。

これまでの平和ボケしてきた俺だけど、今はそんな日常から一転した危機的状況だ。

この生命の危機は自然災害や戦争に遭遇して受けたものではなく、大好きな女の子から齎されたものである。そう考えると自分は少しだけ恵まれてるのではと思えてくる!

”どうせ死ぬなら憧れの女の子…リリーに殺される方が本望だ″と多分俺は極限状態になれば決心が付くだろう。

俺は自分自身を極限状態に持って行く為にリリーを煽って状況を悪化させた。

このような時が来る事を実際に恐怖を感じながらも心のどこかで願ってきたからだ。

モニターの向こう側で繰り広げられてきた惨劇の当事者がいよいよ自分になるのだ。

 

 

 

 

 

 

画面の向こうのプロレスラーは 、もう画面越しではなくなったのだ。

 

 

 

 

 

 

『 見せてやるよ!!俺の華麗なる敗北を!! 』

 

 

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画面の向こうのプロレスラー(第2話)

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まあでも、リングコスチュームという名のほとんどエ〇衣装の女の子に誘われたら、試合中であれどこでも男はその誘惑に負け、飛び込んで仕舞うものである。いやっ、これは決して(誘惑に)負けた訳ではなく、男として当然の選択・・・自然の摂理なのである。

 

 

・・・だから、こうして地面をのたうち回っている鬼頭さんを俺はどこまでも支持する・・・

 

 

 

助走をつけて体ごと地面へ叩きつけようと・・・ランニング・ボディ・プレスを仕掛けジャンプした鬼頭に、膝を立てて応戦したリリー・・・彼女の膝は鬼頭の脇腹をめり込むように捉え、彼女自身も落下する鬼頭と共に地面に叩きつけられた・・・のだが、いち早く起き上ったリリーとは対照的に鬼頭は地面をのたうち回っている・・・両者のダメージの差は明らかだった。

 

 

「早く起き上がってください!今度は私からいきますね♡」

そう言いながら、軽やかなステップを踏みながらリング上(砂の上)を旋回するように移動するリリー・・・まさに獲物の周りを旋回する鷲のようだ。

 

「くそ、コラぁーーーっ!!」

よろよろと起き上る鬼頭・・・そんな彼が体制を整える前に、待ってましたとばかりに襲い掛かるリリー。

 

「バキィィィーーーッ!!ドカァーーーッ!!バシンッ!!バキッ!!ダァンッ!!ボコォォンッ!!バァァンッ!!バシンッ!!バキッ!!バキッ!!バキッ!!バキッ!!バキッ!!ドゴォォーーーンッ!!」

洒落にならないようなリリーの猛攻が鬼頭を襲う。後ろ回し蹴りを皮切りに、ハイキック、ローキック、パンチ、エルボーと相手に有無も言わせぬ連打を繰り出すリリー・・・鬼頭は最初の打撃をもろに喰らってからはガードを固めて防戦一方だ。そのガードの上から引き剥がさんとするリリーの猛攻・・・体術、とりわけ打撃においては、本物のプロレスラーをも圧倒するリリーの強さは本物と言って間違いないだろう。

 

「アハッ!!ヤァーーーッ!!ウフフゥ~!!ムフッ!!イヒィッ!!」

猛攻を仕掛けて間のリリーは満面の笑みで、発する言葉、掛け声もちょっとイヤらしい(ちょっと所ではない)息遣いと声が視聴者の興奮をさらに加速させる。

 

正直このライブストリーミングを視聴する時は、”一人での視聴”をオススメする。普通でもリリーの際どい恰好とその躍動する体を見ていると、さも〇V動画を見ているかのような気分になるのに、試合が進んで来るとさらにそれが加速し、リリーの行動ひとつひとつが(エロ方面の)精神を揺さぶってくる。男同士でも一緒に視聴するのは抵抗を覚える。視聴している所を母ちゃんに見つかったりでもしたら、それこそ記憶抹消ものである。

 

「バキィィィーーーーーーーーーッ!!」

両腕ガードの上から右足ハイキックを叩き込むリリー。鬼頭の腕や体のあちこちが真っ赤に腫れ上がっている。彼はガードを固めながらしゃがみこんで、足払いを狙う戦い方に切り替えていた。

直立状態のままリリーと打撃で戦えば負けると判断したのだろう・・・それって、本物のプロレスラーが女の子相手に体術ではかなわないと認めたようなことである・・・プライドは無いのか!?と言いたい所だが、鬼頭の判断は正しい。変にいきり立ってリリーと撃ち合おうとしてボコボコにされた男達をこれまで100人以上も見てきたのだ。

 

 

寝転んだ状態でリリーの脚を狙いにいく鬼頭・・・さながら猪木vsモハメド・アリ戦を彷彿させる様相だ。

 

「もうっ!!鬼頭さん!!だいしゅきボールドッ!!」

妙な掛け声でジャンプ一番・・・鬼頭の体へ飛び込んでいくリリー。これリリーの作戦である。女性としての誘惑を駆使しながら相手の懐へ飛び込む・・・だいしゅき△〇□

・・・という言葉が一瞬の鬼頭の集中力を狂わせ、その隙間を逃さないリリーは寝技で鬼頭と組み合った状態から抑え込んでパスガードを極める・・・ブラジリアン柔術の相手のホールド崩しまで会得している彼女には頭が下がる・・・そこからスイープ(マウントを取り返し)・・・マウントパンチ・・・と流れるように視聴する画面上では技の説明テロップが入る。

 

「バシンッ!!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!」

マウントポジションから鬼頭に向かって左右のパンチの雨を浴びせかけるリリー。それを必死に顔面ブロックしてガードする鬼頭。

 

「キスして、キスぅ~ッ!!」

いきなりパンチを止めて、鬼頭の顔に自分の顔を近づけるリリー。彼女の言葉通りにキス顔を近づいてくるリリーに一瞬戸惑う鬼頭・・・その隙を見せた瞬間、素早く体を動かして右腕を掴むとそのまま腕ひしぎ十字固めへと持ち込むリリー・・・前のラウンドと同じ状況だ。

体を伸ばして強烈なダメージを鬼頭に与えるとすぐにリリーは締めを解く・・・「うわぁぁ・・・」と悲鳴をあげて横たわる鬼頭の顔面にめがけて、素早く起き上ったリリーはジャンプする。

 

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「ダァァァァーーーーーーーーーーーーンッ!!」

・・・ヒップドロップが炸裂する・・・

 

リリーのお尻と地面に頭をサンドイッチされた鬼頭の目は完全にイっちゃている・・・やばいって、このままじゃ(鬼頭さんが)死ぬって!!試合の行方よりも、放送事故にならないかどうか不安になってきた。

既に勝敗は決していた・・・が、鬼頭サイドのセコンドからはギブアップの合図もないので試合は続行している。本物のプロ団体に所属するレスラーが、どこの馬の骨とも言えない素人の女子レスラー相手に圧倒され敗北するのは、受け入れがたい事実であるだろう。どんな言い訳も無意味だろう。そんな諸事情すら凌駕してしまうのが、これまでずっと追っかけてきた我らがリリーなのである。

 

 

「大丈夫っ!大丈夫ですよね!うん、大丈夫♡」

意識朦朧(もうろう)の鬼頭に、勝手に問いかけ、勝手に納得したリリーは、そのまま鬼頭の体を引き起こし、持ち上げようとする・・・おそらくアルゼンチンバックブリーカーの態勢に持ち込もうとしている・・・もうほんと止めたげて!!彼のライフはゼロよ!!と言いたい所だ。

 

 

「カァァーーーーンッッッ!!」

 

 

しかし、ここで3ラウンドの終了を告げるゴングが鳴り響いた。

 

 

 

「エェェェェ~~~~~!!嘘でしょ!!」

少し声を荒げて悔しがるリリー・・・しかし、その態勢は鬼頭の顔面をおっぱいで挟み込みながら立ち尽くしている風景・・・

 

 

そこ代わってくれという妬みと、もう解放してあげてという鬼頭さんへの同情が折り重なった変な感情が沸き起こっていた。

 

「うっ・・・うぅ・・・」

ブツブツ言いながら自陣へ戻るリリーとは対照的に、地面を這いつくばりながら戻る鬼頭・・・まさかこんな試合になるとは誰が予想しただろうか。 鬼頭淳弥というプロレスラーを追うファンにとっては災いの日であろう。次のラウンドでは鬼頭ファンにとってあまりにショッキングな映像になりそうなことは確かだ。

 

 

 

〜  第4ラウンド  〜 

 

 

 

・・・運命の第4ラウンドが始まる・・・

 

がんばれ鬼頭!!男を見せろ!!あんなリリーとか言うク〇女になんか負けるな!!

 

いつの間にか鬼頭を応援している自分がいた。リリーを追っかけるファンとしては、大体最後の方は、リリーを悪役側に回して楽しむことが通なのである。

 

・・・こんなエロい恰好で、こんなエッチなボディで、こんなに可愛くて、こんなにエロい性格な女の子に、全身全霊を掛けて負けてしまうなんて・・・

 

・・・被虐的な感情がMAXを振り切って快楽へと変わってしまう・・・このライブストリーミングを視聴する者にとっては最高潮の状況が今、リアルタイムで進行しているのである。

 

「アルゼンチンやめっ!!フランケンッ!!」

そう言い放つ・・・次に繰り出す技はフランケンシュタイナーであることを宣言するリリー・・・相手に向かって飛びかかり、両足で頭部を挟み込んでバク宙のような動きで相手の体ごとかっさらって地面に叩きつける跳び技である。

 

そして、ステップを踏みながら一気に加速して、フラフラになった鬼頭に飛び掛かるリリー・・・もの凄い跳躍力で鬼頭の顔に乗りかかろうとするが、鬼頭はリリーの両足を掴む・・・

 

「ぬぁぁーーーーーーーーっ!!!」

もう駄目かと思われた鬼頭がここに来て意地を見せる。リリーを抱え上げ・・・前方に背中から叩き落す!!

 

「ダァァァーーーーーーーーーンンッ!!!」

最後の力を振り絞った渾身のボディスラムが炸裂する!!

 

うぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!!激アツ展開ぃぃぃーーーーーーーーーっ!!

思わずモニタの前で立ち上がってしまった!

プロレスラー 鬼頭淳弥・・・プロである神髄をそこに見たような気分だ。

 

リリーを地面に叩きつけた鬼頭はそのままフォールへと持ち込む。

「 ワ ン ! ! ツ ー ! ! 」

まさかの意地の大逆転が見られたかと思ったが、リリーは2カウントで鬼頭のフォールを返した。もろにボディスラムを決められたのにそれも返してしまうのかというこれももの凄い熱い展開だ。

 

リリーと鬼頭・・・両者地面に寝そべった態勢でこの戦いが壮絶なものであることをモニタから溢れ出るくらいに漂わせる。

  

 

「ハッハッハーーー!!ハッハッハーーーッッ!!ハッハッハーーーッッ!!」

なんで彼女はこんなにもトチ狂っていて、なんでこんなにも魅力的なのだろうか・・・

 

 

南国の空を見上げながら笑い出すリリー・・・はっきり言ってこれはやべー奴だ。こんな人が一般にいたら裸足で逃げ出すレベルだが、今は試合中・・・視聴する者ならわかる今の状況・・・笑いながら飛び起きるリリー・・・鬼頭は全ての力を出し切った・・・その結果が今の状況。出し切った上でなお立ち上がって高笑うリリーの存在。高笑いながらもアドレナリンに満たされたリリーの表情は視聴者の心を引き付ける・・・視聴者だけではない。対戦する鬼頭の心をも引き付け、完全に心を折れさせたのだ。

 

「フランケンッ!!」

そう言いながらリリーは鬼頭を引き起こす。もはや抵抗する素振りも見せない鬼頭はなすがままに立ち上がる・・・もはや、白旗が上がっているのがモニタに透けて見える。

 

 

「ダァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンンッ!!!」

全てを出し切って真っ白になった鬼頭の頭を両足で挟み込んで、それからはなすがままに吹き飛ばされ、叩きつけられる・・・リリーの宣言通り、フランケンシュタイナーの完遂だ。

 

投げ飛ばされた鬼頭は起き上ることが出来ない。彼の体は既に限界を超えている。後はリリーがフォールするだけだ・・・だけなのだが・・・

 

 

「ねぇ鬼頭さん!?鬼頭さんは私の事好きだよね!?ねっ!?」

狂気と言う言葉を具現化したもの・・・それがリリーだろう。そう言わずにいられないのがこれから行われることだ。リリーを追いかけてきたファンはそれを“死体蹴り”と呼ぶ。体力がゼロになった相手の残り僅かな精神さえも根こそぎ奪っていくリリーのフィニッシュ技・・・それが通称死体蹴りなのである。

 

「フッフーン♫・・・よっと!」

鼻歌を歌いながら、既に行動不能。起き上がることもままならなくなった鬼頭の首を太股の裏とふくらはぎとて挟み込み(この時フォール状態にならないように鬼頭の肩を微妙に浮かせる手の込よう)そして、なんの躊躇いもなくリリーは左手を鬼頭のボクサーパンツの中に突っ込んで、鬼頭の”アレ”を扱き出す!!

 

 

「反則っ!!ファイブカウントまでっ!オーケイ!?」

なんでカタコトの日本語?と突っ込みを入れたくなるような口調でレフェリーを牽制するリリー・・・もう何が放送事故でそうでないか判断基準の感覚が麻痺してくる映像が全世界へ向けてリアルタイムでストリーミングビューされている・・・ただ一言言えるのは、こんな状況下においても、精密なカメラアングルで鬼頭さんのイチモツを見せないようにして試合風景を捉えるカメラマンが神だ!!

 

 

スリーカウントで決めて見せる!!」

なにを決めるんですか?目的の趣旨変わってませんか?

 

「レフェリー!!カウントっ!!」

 鬼頭の両肩が地面につくように押さえつけながら、レエフェリーにカウントするように促すリリー・・・その彼女の左手は今なお鬼頭の”アレ”をがっちり掴み捉えながら、上下への動きを加速させている。とっても楽しげなリリーの表情がもう絶望しか感じない。

 

 

「   ワ ン ! !       ツ ー ! !  」

 

 

 

「 う わ ぁ ぁ ぁ ぁ ・ ・ ・ ・ ・ 」

息も絶え絶えの鬼頭が弱々しい悲鳴を上げる。

 

 

 

「 ス リ ー ー ー ッ ッ ッ ッ ! ! ! ! ! 」

 

 

 

「 カン カン カン カン カン ッッ !! 」

 

 

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試合終了・・・スリーカウントの合図と共に特設リングの周りに備え付けられていたスプリンクラーから一斉に噴水が上がる。試合終了の演出である・・・。

 

 

 

 

「ドピューッ!!ビリュリュリュリューーーーッッ!!」

そして、”鬼頭のスプリンクラー”からも大量の噴水が上がる。

 

 

 

 

「ドピューッ!!ビリュリュリュリューーーーッッ!!」

そして、そして、その試合を視聴する”俺のスプリンクラー”からも少量の噴水が上がる。

 

 

 

 

「ドピューッ!!ビリュリュリュリューーーーッッ!!」

そして、そして、そして、俺だけではなく、今日のこの試合を視聴していた”世界各地の数多くの同士達のスプリンクラー”からも噴水が上がった・・・ことだろう。

 

 

 

 

 

 

4ラウンド、2分52秒・・・リリーのフォール勝ちでこの壮絶な戦いの幕が降りた。

 

 

 

 

 

勝利のガッツポーズと笑顔をカメラに送るリリー・・・その向こうで身も心もコテンパンにされた本物のプロレスラー鬼頭淳弥が昇天、失神した状態で横たわっている。おそらく鬼頭さんはこんな負け方今迄したことがないだろうと思う。メンタルが大丈夫なのか、ホント心配になる。

 

 

 

そして、画面はエンディングセレモニーへと移行しているが、はっきり言ってエンディングなんて全く頭に入ってこない。

リリーの試合は観戦した者も試合後はドッと疲れる・・・そう俺は、今日のこの試合・・・正直を言いますと・・・”4回”・・・イキました。

 

 

 

 

申し遅れました。今日のこの試合を実況解説させて頂いた”鏡恭助(かがみきょうすけ)”と言います。

 

俺は都内の外語大学に通う拙い大学生でありますが、世界一有名なプロレスラーのリリーを最大級に愛する男です!!そのリリー愛は誰にも負けないと自負するものであります。

 

毎日毎日リリーチャンネルを見ては・・・×××してます!!

 

リリーチャンネルを見始めてからは、他の物を使って×××したことはありません!!

 

まぁ、こんなことリリーファンにとっては当たり前のことなので、何の説得力もありませんが、リリーという憧れの存在・・・モニターの向こうの憧れの存在とお近づきになりたい。生涯をかけてでも叶えたい俺の夢が叶ったなら、そこにはどんな世界が待ち受けるのだろう・・・この物語はそんなifが叶ってしまった物語である。

 

 

 

 

 

 

・・・リリーvs鬼頭の壮絶な試合から一夜明けた今日・・・

 

もはや身も心もクタクタな状態の俺・・・。結局昨日の晩、冷静になってからもう2回程試合を見直した。見逃し配信ということで、リリーチャンネルではその日の間に2回再放送される・・・そして1週間後には過去試合として再視聴出来るシステムとなっている。その試合を振り返りながら、カラっ空になるまで”アレ”をやり続けたので、俺はボロボロになっていた。

 

今日は日曜日・・・バイトもなく、明日は大学の講義もあるので今日は体を休めよう・・・昨日の試合を思い出しながら朽ち果てる・・・そんなどうしようもない休日を過ごした。

 

 

 

 

 

・・・週明けの月曜日・・・大学構内を颯爽と歩く俺・・・気分もよくテンションも高い。一昨日のリリーの試合の余韻がまだ残っている。

 

 

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「おーい、月島!!」

「あっ、鏡くん。おはよう!」

 

俺は前を歩く女子に声をかける。この子は月島理科…俺と同じ国際コミュニケーション科の2階生で俺が唯一一目を置く女子である。

 

「おはよう月島!!あれっ?月島、日焼けした?」

「えっ?あ、あぁ、バイトで日焼けしたのかも・・・?」

「そうか!いやっ、そんなことより一昨日のリリーの試合見たか!?」

「えっ、えぇーと、まあ、一応・・・」

 

そう、俺がリリーの話を唯一出来る女子なのである。何人かの男友達の間ではリリーネタで盛り上がることもあるが、女子にこのリリーの話をすると十中八九ドン引きされる・・・理由は言うまでもないが、この月島理科という同級生は俺のリリーへの熱いトークを顔色一つも変えず、むしろどんどん食らいついてくれるくらい乗って話をしてくれる。

 

「スゲー試合だったな!モノホンのプロレスラーを圧倒しちまうんだから!リリーの強さは本物だぜ!!俺、感動しちまったよ!」

「そ、そうだね。」

 

男同士でリリーの話になると色々と性癖が衝突して、険悪なムードになることもあるが、男女間ならそういう心配も無く、俺が一方的に話せるので月島は俺にとって貴重な存在だ。

 

「俺がリリーのファンだと女子に言うとドン引きされるんだけど、月島、お前だけはわかってくれて嬉しいよ!」

「う、うん。」

「リリー=(イコール)男のチ○ポをこねくり回す変態痴女って言う認識だからなー女子は・・・」

「・・・・・・」

「いやっ、そうじゃないんだよ!リリーは美人で、スタイル抜群で、強くて・・・とにかく最高なんだよ!」

「そ、そうなんだ」

「俺が生きてきた中で、一番の理想の女性、それがリリーなんだよ!あー、一度でいいから彼女に会ってみたいよー!!マジで!」

「会えるといいね!」

「そう、会ってリリーの胸を鷲掴みしたい!」

「・・・・・・」

 

俺の会話に、表情豊かにこたえてくれる月島のリアクションはまるで自分のことかのように心がこもったもので、会話する俺も凄く話甲斐のある相手だ。

 

「でも、一昨日の試合・・・南国のプライベートビーチで試合とか、かなりイカすシチュエーションだったな!リリーは試合終了後はバカンスを楽しんでるのかな?」

「いやっ、それがビーチの貸し出しにも時間制限があって、試合終了後に直ぐに撤収、そして空港へ・・・って一体何してんだろ私って話で・・・」

「んっ???」

「・・・と言う裏話をSNSで呟いてたと思うよっ!リリーが!リリーがね!」

「そうかー、月島、お前ってちょくちょくリリーの小ネタ知ってるよな!もしかしたら、俺よりもリリーに詳しいんじゃない?」

「い、いやっ、そんな事ないと思うよ。ははっ・・・」

「いやっ、なかなかのもんだと思うよ!正直、関心するよ。」

「あ、ありがとう。」

「お前のその出しゃばらない性格も、俺の話になんか乗ってくれる寛大さも含めて、月島のそう言うとこ結構好きだぜ!」

「えっ!?あっ、あの・・・」

「!?って、イヤイヤそう言う意味じゃなくて、いつも俺の話に構ってくれてありがとうって意味で!!」

「あっ、そ、そう言う事ね・・・」

 

月島・・・この子はきっと俺の事が好きなのだろう(うぬぼれ)・・・正直、こんな俺の話を聞いてくれる存在は他にはいない。あまりに貴重すぎる存在なのだが・・・

 

「悪いな月島・・・俺にはもう既に心に決めた人がいるんだ。リリーと言う・・・寝ても起きても彼女の事しか考えられない最愛の存在がいるから、もしお前が俺との可能性を少しでも感じるなら、お前を不幸にさせてしまうと思う・・・だから、俺との可能性は忘れてくれ!」

「う、うん、大丈夫だよ!」

俺の正直な気持ちを伝えた。それでも月島とは今迄通りの関係でいたいという気持ちもあるが、リリーを愛する自分の気持ちに嘘はつきたくない!!

 

「ごめんな月島・・・でもそれだけ俺はリリーの事を愛しているんだ!どうせ死ぬなら、リリーに殺されて死んでもいいと思うくらい!」

「い、いや、人は殺めた事はありませんから!」

「んっ!?どうした、月島?」

「いっ、いや、なんでもない。」

「ホントに一度でいいから、リリーに会いたい。ボコボコにされてもそれが本望だよ!」

「そ、そうなんだ・・・リリーと戦いたいの?」

「もちろんだ!そして玉砕したい!」

「ふーん・・・」

「んっ!?どうした、月島??」

「い、いやっ!何でもない・・・けど・・・た、例えば、リリーの配信サイトの下に問い合わせメールフォームがあるよね。そこに練習相手募集してませんか?みたいな感じでメールを送ってみたら・・・どうかな・・・?」

「???」

「ほっ、ほらリリーって、正体を隠してるから、普段練習する時とかどうしてるのかなーと思って・・・もしかしたら実践形式の練習相手がいなくて困ってるんじゃないかなーって・・・」

「そうか・・・練習相手、スパーリング相手っつう事か、月島ー!!お前すごいよ!!その発想は無かった!!次の講義終わったらすぐにダメ元でメール送ってみるよ!なんか・・・スゲーワクワクしてきた!んじゃ行くわ!!月島、ありがとな!!」

「うん!じゃあね、鏡くん!」

 

「・・・・・・」

 

会話の捉え方によっては、遠回しに月島を振ってしまったのではないか。そうして彼女を悲しませてしまうのではないかという恐れもあったが、どうやらそんな雰囲気はなさそうで、今まで通りの関係でいられそうだ!これからも月島とリリーの話が出来る。それだけではなく、月島理科・・・彼女から面白い提案もあった。俺は上機嫌で、感謝を込めて彼女のその提案に乗っ掛かる事を決めた。

 

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画面の向こうのプロレスラー(第1話)

 あなたはこの世界で一番有名な現役プロレスラーを知っているだろうか?

それは間違いなく「リリー」だと断言出来るだろう!

 

推定年齢20歳前後と思われる覆面女子レスラー「リリー(LILLY)」・・・彼女の情報は何も公開されておらず、正確に言うと彼女は特定のプロレス団体には所属していないので、アマチュアレスラーと言える。しかし、彼女の知名度は全世界を網羅し、専属のスポンサーも付いているのだ。

 

彼女が戦う舞台はwebストリーム上だ。観客もいない彼女と対戦者だけの試合を毎回ライブ配信して活動するネット上のレスラーだ。彼女のデビュー戦は、どこかのお寺の本堂で、よくわからないおっさんとのプロレス生配信から始まった。そしてデビューから今日、彼女の戦績は数えて164連勝を達成している。

 

164連勝・・・まさに人気の秘密はこの圧倒的な強さにある。

 

華奢な彼女が、世の中のあらゆる男達と対戦し、懸命に戦い、苦戦したり、圧倒したり…彼女の成長と共に毎回様々な男達をフルボッコにする様をライブで生中継するこの映像コンテンツは、試合の回数が増えるにつれ、フォロアー数も上昇し、有料の配信サイトであるにもかかわらず、視聴者数はうなぎ登りで増え続けた。

そして現在では、世界有数の映像コンテンツへと成り上がった。彼女が試合をライブ配信する際、世界中の何百万人の視聴者が刮目するのだ。これが、今世界で一番有名な現役プロレスラー「リリー」の全容だ。

 

まあ、御託を並べるよりも、百聞は一見に如かず・・・見てみるのが一番手っ取り早い方法だ。この後、生配信が予定されている。

 

リリーライブストリーミング”第165戦目”・・・リリーチャンネルという月額制の有料サイトにて生配信されるミックスファイトだ。もう間もなく始まるので是非見てほしい・・・

 

 

 

〜 LILLY's Live Streaming Fight PART 165 〜

 

 

 「こんにちは〜!!ライブストーミングをご視聴の皆様、リリーです!!今日もご視聴頂きありがとうございます!!」

 今日もおなじみのマスクとフェイスペイントシール、スポーツビキニ・・・という可愛くセクシーなコスチュームで明るくオープニングの挨拶をする彼女が、今世界で一番ホットなプロレスラー『リリー』ある。

 

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「今日私は南国○○○島のプライベートビーチに来ています。・・・えっ!?これですか??これは、こんなに素敵なビーチなのに泳いじゃダメですかと聞いただけで、”泳いじゃ駄目。何の為にここに来たんだ。自覚はあるのか。意識低すぎ。責任感無さ過ぎ。それだから君は・・・”とか一方的に言われて、ムカついたのでお仕置きしている所です。当リリーチャンネルをご視聴の皆さんは気にしないで下さいね!」

いやいや、めちゃくちゃ気になるし、スタッフの彼・・・正直羨ましい・・・リリーにヘッドロックされているのは、桑山君と呼ばれるリリーチャンネルのスタッフで、これまでの配信でもしばしば登場する。運営の意向だからと無理難題をリリーに吹っかけてはリリーに反撃・お仕置きされるおなじみのスタッフさんである。

 

「告知していた通り、今日の対戦相手は、なんとあのBWW!!本物のプロレス団体に所属する人気レスラー鬼頭淳弥さんです!まずは対戦に至る迄の経緯を綴ったVTRをどうぞ!」

 ・・・リリーの振りで画面は用意されていたVTRに切り替わる。リリーチャンネルの生配信はかなり優秀な編集構成になっている。使用言語は基本的に日本語だが、リアルタイムで英語をはじめとする三言語へ同時翻訳される仕組みになっている。もちろんリリー自身も語学は堪能で五カ国語を話せるらしい・・・こういった世界を意識したコンテンツづくりが海外の国でもヒットの要因だろう。

 

・・・画面は鬼頭選手の紹介、プロモーション映像が流れた後、(BBWのとある試合)試合後の独占インタビュー風景が映し出される・・・

 「んっ!!リリー!?誰だそれ、ふざけてんのか!!はっ倒すぞオラー!!」

そう言いながら、もう既にインタビュースタッフ(桑山君)をはっ倒している鬼頭選手・・・明らかに茶番だが、鬼頭選手もノリノリで煽ってくれている。

「とりあえずネットで有名なだけで、実績はゼロでしょ!!ちょーし乗ってるらしいから、ガツンといくぜ!首を洗って待ってろよリリー、シャーオラー!!(カメラ目線)」

まあ、視聴者が見たいのはリリーが果敢に戦う姿なので早くしろと言いたい所だが、こういった前振りのVTRを入れて、視聴者をじらしてくるのもリリーチャンネルの演出の一つである。

 

・・・VTRが終わり、再び対戦の舞台となるプライベートビーチの風景が映し出される。Live Streaming Fight・・・澄みきった青い海。銀色の砂に六角形の間仕切りのラインが引かれただけの簡単なリング。この現場に居合わせるのは、対戦者同士と両陣営のセコンドスタッフ、試合をジャッジするレフェリー、そして数名の撮影スタッフのみで、観客も実況もいない・・・波の音だけがBGMとして流れる少しシュールな現場と言えるだろう。しかし、この物足りなさを払拭するような圧倒的なファイトを魅せるのが我らがリリーの真骨頂だ。

リリーの得意とするスタイルは、アクロバティックな飛び技系だ。生配信のカメラからはみ出すぐらいの縦横無尽に動き回るいつものような試合が出来れば、リリーは強敵”鬼頭淳弥(きとうじゅんや)”を倒す事が出来るだろう。正直、今日の試合・・・もしかしたら、リリーが初めて負けるのでは・・・と一抹の不安を抱えながら俺は視聴しているが、果たしてリリーは俺の不安を払拭してくれるのだろうか・・・

 

ラウンドワン!!ファイト!!」

 両対戦者の簡単な紹介があった後、いよいよ試合開始のゴングが鳴り響いた。

 

ちなみに、このLive Streaming Fightの試合は1ラウンド5分、ラウンドの間に1分間のインターバルをおいた5ラウンド制のルールである。

30分、60分1本勝負が主流のBWWプロレスとは異なるルール上での試合となるので、鬼頭はそのルールに対応出来るのかもひとつの見所だ。

 

 

 〜  第1ラウンド  〜

 

 

試合開始のゴングが鳴り響いたが、両者ともに動かず、その場で相手の出方を伺っている。

試合開始からガンガン攻めていくリリーも、流石に今日の対戦相手は強敵もあってか、じっくりと間合いを計りながら相手との距離を詰めていく様子。

対して、鬼頭も迂闊に前には出ず、リリーの攻勢に受けて立つといった所だ。彼はBWW(プロレス団体)の中では体格は大きい方ではない。しかし、リリーと比べるとパワーや体格差では鬼頭が完全に圧倒している。対して、リリーはスピードとテクニックでどれだけ体格差を埋めるかが鍵となる。

「シャー、オラー!!」

と言う掛け声とともに一気に間合いを詰める鬼頭・・・リリーと取っ組み合いの形になった。両者のファーストコンタクトである。

「シャー、オラー、シャー!!」

取っ組み合いの形から、鬼頭が腕力の違いを見せつけるようにリリーを一気に押し込む・・・たまらず、リリーは片足を地面に付き不利な体勢になる。とここで、鬼頭は得意の絞め技にかかろうとした瞬間・・・

 

「ダァァァーンッ!」

 

転倒したのは鬼頭の方だった。一瞬何が起きたのかわからなかったが、画面下に「両手取り四方投げ」と表示されている。

このリリーチャンネルには、リリーや対戦者が繰り出した技名をリアルタイム表示(技が終わってから5秒程で表示)してくれる演出がなされている。

これはすごい機能で、プロレスに付いて無知でド素人だった俺が、何回も見ているうちに繰り出した技名をだいたいわかるようになってきた。リリーチャンネルが入り口だけど、他のプロレスの試合も見るようになってハマり、まあニワカファンくらいにまでは昇格したかと思う。

 

そして、先程の画面表示「両手取り四方投げ」のように、リリーは他の格闘技の技もちょくちょく入れてくる。彼女がインタビューでこたえていたように『私の格闘スタイルはオムニバス』との事だ。この両手取り四方投げ合気道の技であり、リリーは様々な格闘スタイルをミックスして戦うので、何が起こるかわからない。ワクワクするような戦いを魅せてくれるとともに対戦相手にとっては戦略が立てにくく、かなり厄介や存在である。

 

さて、試合に戻るが鬼頭が得意とする関節技に持っていこうとした瞬間、リリーは手の上下の動きで鬼頭からの圧力を捌き、そのまま転倒させた。この両手取り四方投げは鬼頭が得意の関節技を決めにいこうとすれば、カウンターが待ってるぞと言うリリーからの警告の合図であるかのようだった。

 

既に両者は起き上がり、再び距離を取る。そして、もう一度鬼頭は距離を詰め、関節技を仕掛けにいこうとするが、「バタンッ!!」と先程と同じようにリリーに捌かれ投げられてしまう。

投げられた鬼頭はその場に座り込みながら『ほうほう!』と大きく頷くパフォーマンスを見せる。『さっきのはマグレではなかったみたい』と言っているかのような余裕の表情だ。流石にモノホンのプロレスラーだけあって、これまでの対戦者とは一味違う。試合の魅せ方を知っている。何をどう思いながら戦っているのか、画面を通しても伝わってくるような少し大袈裟なくらいがちょうどいいパフォーマンスだ。

 

ラリアットいくぞ、オラー!!」

次に立ち上がって右腕をぐるぐる回すパフォーマンスを見せる鬼頭は大きくな声で叫ぶ。

これに対して、リリーはその場で小刻みにジャンプを始める。これは、鬼頭のラリアット宣言に対して、真正面から受けて立つというメッセージのようだ。

そして、両者 お互いの相手に向けてダッシュする・・・

 

「オオオオオォォーーーーーーーッッッ!!!」

 思わず声が出てしまった。ダッシュしお互いが交差しようとした瞬間、リリーは鬼頭の頭に向けて大きくジャンプ・・・鬼頭の頭を両足で挟み込むと、鬼頭を軸に旋回するような動きを見せ、そのまま鬼頭を投げ飛ばしたのだ。

 

”ヘッドシザーズ・ホイップ”という表示・・・

かなりアクロバティックな技だ。こういう技をどこかで見た事があったような・・・確か、ベトナムかどこかの国の格闘技パフォーマンスであったような・・・

 

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「ダァァァーーーーーンッ!」

投げ飛ばされた鬼頭はそのまま膝を付いた状態で、両手を上げて『すごい!!やるじゃないか!!』というパフォーマンス。まだまだ余裕の表情だが、おそらく鬼頭は想像していたよりも、遥かに強いリリーに対戦相手として絶賛しているようだ。何回か技を受けてみて、相手がどれだけ強いのか推し量っていたと思われるが、これでようやく鬼頭も本気モードになるのだろうか。

 

 「ラリアットいくぞ、オラー!!」

再び立ち上がって、右手を回す鬼頭・・・また同じ事をやろうと言うのか!?

両者また同じようにお互いに向けてダッシュする・・・

 

しかし、一瞬ダッシュを止めてタイミングを外す鬼頭・・・ジャンプしようとしたリリーは一瞬躊躇して、隙が生まれてしまう。

「ドオォォォーーーーーンッ!」

躊躇してリリーに向けて、鬼頭は足の裏を見せるように右足を押し込む”ケンカキック”を繰り出した。当然、リリーは勢いに体ごと持っていかれ後方へ吹っ飛ばされる。

 

吹き飛ばされたリリーはそのまま膝を付いた状態で、両手を上げて先程の鬼頭のパフォーマンスのように振る舞う・・・『ラリアットするんじゃなかったの?』という ” Why? ” という表情とともに、リリーもまだまだ余裕があることをアピールする。

 

 両者ともにまだまだこれからといった所だ。

 

 再び両者は近付き、取っ組み合いの状態となる・・・リリーは鬼頭の頭に飛びつこうとするが、鬼頭が力づくでリリーの体を押さえ込みながら持ち上げ、そして地面に叩き付けようとする・・・が、リリーは上半身全体を使って回転するように鬼頭の胸元にしがみつき、そのまま足を交差させて鬼頭の手を払いのけ、投げ飛ばそうとする・・・が、鬼頭は踏ん張りをきかせ、上半身を低くかがみ込ませながら、地を這うような回し蹴り”水面蹴り” を繰り出したが、リリーはバク転するように後方へジャンプして蹴りをかわす・・・そして、今度は鬼頭に向かって前転するように”浴びせ蹴り”をお見舞いする・・・が、鬼頭は何とか右手で顔をブロックしてガードする。リリーの蹴り勢いが強く後ろへ押し出された鬼頭だが、きっちりガードしている・・・

 

「・・・す、すげぇ・・・」

と言う言葉が思わずこぼれるような、著しく攻守が入れ替わる、激しい攻防が繰り広げられた。何よりも(爆乳だけど)華奢な体の女の子が、本物のプロレスラー相手に、互角、いやそれ以上の戦いを見せている非日常の光景が、このモニターの向こうで繰り広げられ、それに完全に魅了されている自分がいる。自分だけではない、この生配信を見ている何百万人の視聴者の多くがこの戦いに引き込まれていることだろう。

 

リリーと鬼頭の両者は、再び身構える・・・

 

「ダァァァーーーーーンッ!」

 

鬼頭は体を回転させながら”ローリングバックブロー”を打ち込もうとしたが、それに対して、リリーも回転しながら大きくジャンプ・・・遠心力を効かせた”ローリングソバット”を繰り出し、見事に鬼頭の喉元に命中させた。ローリングバックブローは一旦相手を視界から外すのでリスクを伴うが、それが裏目に出てしまった格好だ。

 

「ごほぉっっ!!」

喉元に蹴りを打ち込まれ、これには鬼頭も堪らず苦痛の表情を見せるが・・・

 

 

「カァァーーーーンッッッ!!」

 

 

しかし、ここで1ラウンドの終了を告げるゴングが鳴り響いた。

 

 

・・・ 濃密な5分間 ・・・

 

静かな立ち上がりで始まった試合だったが、時間の経過につれ、試合もヒートアップしたが、リリーの健闘には驚くばかりだ。普段の試合ではもっと最初から怒濤の攻撃を見せるが、今日は”相手にペースを握らせない的確な攻め”と言った感じだ。本気でこの試合を勝ちにきているのがわかる。対して、鬼頭は手探りの為のラウンドと言った感じだったが、ラウンド終了間際のローリングソバットキックはかなりのダメージだったように思えた。 

 

 

  〜  第2ラウンド  〜

 

 

「シャー、オラー、シャー!!」

開始のゴングと共にいきなり雄叫びを上げる鬼頭・・・これは力の鼓舞なのか 、それともただの強がりなのか・・・

 

強烈なタックルでリリーを掴みに掛かる鬼頭だったが、その下を潜るようにリリーは体勢を低くした状態から起き上がる力を利用して、鬼頭の下あごを突き上げるような頭突き…”ヘッドアッパー”をお見舞いする。

 

「ガァァーーーーンッッッ!!」

続けて、リリーはその場でバク転しながら体ごとぶつけるラウンディンクボディプレスを決める。

「バキィィィィッ!」 

そして畳み掛けるようにリリーの右足を大きく振り上げたハイキックが鬼頭に炸裂する。

 

「ウォッ!!!!」

流石に大きく仰け反ってしまう鬼頭だったが、リリーの連続攻撃に只翻弄されるばかりでは完全に試合の主導権を持っていかれる事もわかっているようで、ここが踏ん張り時だと言わんばかりに、強烈なラリアットで応戦する。

 

「ガァァーーーーンッッ!!」

鬼頭の強烈のラリアットがリリーの胸元に命中する。リリーは体がくの字になるような態勢のまま吹っ飛ばされる。続けて、鬼頭はバックステップを取ってから、追撃のランニングエルボーを繰り出す。

ドガァァーーーーンッッ!!」

先程のラリアットと同じように、体がくの字になりながら、地面に叩き付けられるリリー。おそらく今日の試合で、リリーにとって一番のピンチだろう。

 

「シャー、オラー!!」

鬼頭は一気に試合を決めるつもりで、リリーの体を持ち上げ、パワースラムの態勢に入る。リリーを抱えたまま地面に叩き付け、そのままフォールに持ち込むつもりだ。

「!!!!!!!!」

しかし、リリーは体が宙に浮いた状態であるにも関わらず、鬼頭の足にしがみつきながら必死に抵抗すると、バランスを崩した鬼頭の隙を突いて、足を振り子のように使いながらそのまま体ごと鬼頭を押し倒した。

「ダァァァーーーーンッッ!!」

あれだけの攻撃を喰らいながら反撃に持ち込むとは、リリーは信じられない体力を持っている・・・いやっそうではなく、ラリアットやエルボーの攻撃を体をくの字に曲げてダメージを受け流したのではないかと考えられる。

 

「うおぉぁぁーーーッッ!!!」

画面上では、リリーが鬼頭を押し倒したその態勢から、腕ひしぎ十字固めへと素早く移行している状況が映し出される。ピンチから一転・・・完全に彼女の絞め技が極り、鬼頭の表情が歪む。一方、リリーは先程までの劣勢が嘘であるかのように鬼頭の右手を胸に挟み込み、笑顔まで見せている。

 

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 「しっ、シシャー、おっ、オラー!!」

 どこかぎこちなく、鬼頭の口癖まで真似をするリリー。余裕の表情だ。

 

「くっ・・・くそぉぉぉぁぁーーーーっっ!!!」

鬼頭は既に伸びきっていた腕を力づくで押し込み、なんとか両手で自分の腕をロックした。そして、そのまま力づくで起き上がった。これにはリリーも驚きの表情で、すぐに締めを解き鬼頭の腕を振りほどきながら地面に着地する。持ち上げられたまま、パワーボムを喰らわないように警戒したようだ。

 

それにしても今の場面を見るだけで、やはりリリーと鬼頭ではパワーの違いが歴然であったが、それを差し引いてもこの試合のリリーの善戦ぶりには感嘆するしかなかった。

 

 

「カァァーーーーンッッッ!!」

 

 

ここで2ラウンドの終了を告げるゴングが鳴り響く。

 

 

『あぶねぇ・・・』と言った表情だろうか?鬼頭は右腕をぐるぐると回しながらストレッチするように自陣へ戻る。

 

一方、ゴングの音と共にその場にぺたりと座り込んでいたリリーだったが・・・

 

「ハッハッハーーー!!ハッハッハーーーッッ!!ハッハッハーーーッッ!!」

いきなりトチ狂ったようにその場で笑い出す彼女・・・

 

「・・・失礼しました・・・。」

非礼を詫びるかのように、彼女は冷静な声で謝罪し、自陣に戻っていく・・・

 

しかし、その表情は少し半笑いのようでいて、妖婉さも漂う先程までとは全く違うものとなっていた。

 

 

 

 

キターーーーーーーー(゜∀゜)ーーーーーーーー!!

 

 

 

 

 

これまでリリーを追いかけてきたファンなら誰でもわかるような状況だ。

 

あの何かをやらかしそうな座った目・・・。

 

トチ狂った言動・・・。

 

そして、何故か画面からでも伝わってしまうにじみ出るようなエロス・・・。

 

これが本物のリリーとも言える『狂人化モード』になった彼女が現れた。

 

おそらく、リリーは多重人格レスラーなのだろう。一度カウンセリング受けた方がいいって言ってやりたい。

 

  

「ヒャッハーーー!!」という言葉が似合う、狂人化したリリー・・・どうしてこうなったかと言うと、いつもの事なのだが、試合を進めていくうちに彼女は興奮してきて、ある一定の興奮度ラインをこえるとこのように第二の人格とも言える狂人化したリリーとなってしまうのだ。

 

狂人化した彼女は、それまでとどう違うかについては、まず行動に躊躇いがなくなり、めちゃくちゃ強くなる事だ。そして、エロい事も平気でしてくる・・・男性の急所攻撃も余裕で、反則を疑われても5カウント内はお咎め無しだと主張する理性を持った行動なので余計にたちが悪い。そして、とにかくエロい。サービス精神満点で、自分の体を余す所無く使った物理&精神攻撃を雨あられのように浴びせ、どんな相手(男)でも蹂躙してしまうのが、狂人化したリリーである。

 

・・・果たして、狂人化した彼女は、本物のプロレスラー鬼頭をも飲み込んでしまうのか・・・そういった中で、いよいよ次のラウンドのゴングが鳴る。

 

 

 

 

  〜  第3ラウンド  〜

 

 

 

 

開始のゴングとともに、スッと横に寝転ぶリリー・・・そしてグラビアアイドルのようなポーズを取る・・・これには、鬼頭もポカンとした表情で立ち尽す。

 

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「ねぇねぇ、鬼頭さん〜!来て〜!!はやくぅ〜!!」

ゴロンと寝そべりながら、鬼頭を誘おうとするリリー・・・挑発するにしてもあまりに無防備な体勢で・・・しかも今は試合中である。彼女の行動はあまりに常軌を逸していた。

 

 でもね・・・これは違うんだ!今迄リリーを追いかけてきた者ならわかる・・・これは明らかなリリーの罠だ!

 

通称・・・”釣り野伏”・・・ファンサイトの中でそう呼ばれるリリーの戦い方だ。

 釣り野伏と言えば、戦国大名島津家が得意とする戦法で、囮部隊が敗走を装い追撃してきた相手部隊を伏兵部隊が包囲殲滅する戦法だが、今に置き換えると、あまりに無防備な体勢で敵を挑発するリリー・・・挑発に乗って懐に飛び込んできた相手を、包み込んで殲滅する・・・それがリリーの必殺とも言えるカウンタースタイルだ。

 

当然、そのことは鬼頭も研究済みだろう・・・でもね・・・あの・・・可愛くて・・・バインバインなリリーが誘ってくれている・・・男だったらわかってても火中に飛び込むよな!!!鬼頭さん!!!

 

「ふざけるなっ!!シャー、オラー、シャー!!」

助走をつけてリリーへ飛び込もうとする鬼頭・・・男の中の男だ!!それでこそ!!俺達の鬼頭だ!!

 

 

えぇっとちなみに、リリーの釣り野伏カウンターを喰らった相手はそこからボコボコに・・・されるんです・・・

 

 

<次の話へ進む> 

 

 

WEB小説 拡張された世界 〜第一章25〜

アリスの主電源を落としてからは、じっと狭い空間の中で身体の痛みに耐えながら、助けが来るのを待つだけだった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

この狭い空間に閉じ込められるのは、生まれて二回目だ。

 

一回目は、壊滅した国際宇宙研究ラボから脱出した時…

 

まあその時は、脱出ポッドの中で致命傷を負った俺は気絶していた訳だったが…

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

それから、俺とアリスはオーグセキュリティのレスキューチームに助けられ、ようやく外に出る事が出来たが、日が暮れて辺りはすっかり暗くなり、粉々になったエムズの残骸が今尚燃え上がり、辺りを照らしていた。

 

それから、アリスに突き刺さっていた破片も取り除いてもらった。

 

主電源が落ち、ぴくりとも反応しないアリス・・・。

彼女が身を張って守ってくれたおかげで、俺はこうして生きている。

 

アリスの状態は、頭内にあるコアが破壊されていないので、一種の故障のようなものであり、状態異常のひとつにすぎないが、損傷の有様を見ているとやはり心が痛む。

 

 

だからこそ、早くアリスを元の状態に直したい!

憎まれ口を叩き合いながら楽しく過ごす、元の日常へ戻りたい。

 

 

・・・でも、こんな大事件に携わってしまったのだから、やるべき事はたくさんあり過ぎる。

 結果的には、暴走列車を止めるという目的は達成出来たのだが、目の前の事だけを見ていた為、これからの事など一切考えていなかった。

 

レスキューチームとともに、現場に到着した今回の事件の担当責任者でもある晶子は、レスキューや検証官など各層の担当員に指示を出し、事件処理の指揮をしていたが、一通り指示を終えて、ストレッチャーに乗せられ搬送中の俺の所へやってきた・・・。

 

「ひっ、久しぶり・・・」

 

「悟!!!」

 

・・・ガンッッッッ!!・・・

 

搬送中の俺の脇腹に向かって、さらに追い討ちをかけるように振り下ろされる晶子の拳…。

 

そして、倒れ掛かるように俺の腹部に晶子のヘッドバッドが加えられる…。

 

その晶子の目には、大量の涙が溢れ出していた。

 

 

 

 「なんでみんなっ・・・勝手な事ばかりして・・・私をおいていくのよ!!」

 ”おいていく”という言葉が印象的だった。今回の事件解決に向けて、任務を無視して単独行動を行った事に対しての戒めだと思うが、晶子がかつて助けられなかったたくさんの命の事も含まれているように感じた。”おいていく”という事だから、晶子・・・お前も・・・

 

「おいていく訳ないだろ!!」

俺は全身の力を振り絞って晶子に怒鳴るように反論する。

「アリス、ブライヤさんだって、傷は負ったが生きている!俺なんか、皆が体をはってくれたおかげで、ほとんど無傷だ。お前を差し置いて行動した事は償わなければと思ってる。だけど、俺達がとった行動は最悪の結果を回避する為の最良の方法だったと思う。」

今回の軍事車両暴走事件の被害は、エムズ(対犯罪者用戦闘重兵器車両EMZ-03)の大破や、オーグセキュリティー捜査員の負傷や殉職もあり、多大な損害があった事は間違いないのだが、一般人の被害は避けられる事が出来た。

 

「それに俺は、この命をかけて成し遂げたい事がある!だから、それが成されるまでは何が何でも生きてやるつもりだ!晶子っ、これからもお前の力を使ってでも醜く生きてやる!・・・だから、お前も・・・死にたがりはやめろ!」

 

”死”というワードに反応してか、晶子は我に返るように落ち着きを取り戻し、大きく深呼吸する。そして…

 

「何よ、馬鹿みたい!命をかけて成し遂げたい事って何?」

 

「それは言わない!!他の人には説明はしないけど、俺には協力しろ!!どうだ、図々しいだろっ!?」

 

 「うんっ!最低ね!どうせ、アリスちゃんがらみの事だと思うけど・・・」

 

晶子とは付き合いも長い、俺の浅はかな考えは当然見透かされていた。でも、掘り下げて追求してくる事もないのが、彼女の優しい性格だった。

 

 「こんな最低な男だけど、俺が成し遂げたい目標はお前もこの世界も助ける!絶対に助けるから、これからもよろしく!!」

 

 「うんっ!よろしく!」

夕日に照らされた彼女の笑顔は、なんとも言えない魅力的な顔だった。

どうせ拡張現実のこの世界が起こした演出だろう。そう、一時的な演出で、この世界の女性全てを魅力的に見せるフィルターがかかっているに違いない。俺は自分に強く言い聞かせる。

 

「どうしたの?」

 

「い、いやっ、何でもない!」

 

「そうっ、でも今回の罪はちゃんと償ってもらうから!!」

 

「ですよね・・・」

 

電子不純わいせつ容疑であなたをこれから拘束します。

 

・・・ああ…確か、そんな容疑(アンドロイドに対する数々の嫌がらせ行為)で護送されるという設定になっていた事を思い出した。その護送車両がエムズで、護送中に暴走(実際は暴走していない)して、暴走車両を止めた・・・こんな不自然な理由でまかり通ってしまうのか不安しかない。

晶子は大怪我を負って搬送されるブライヤさんから、今回の単独行動の詳細を聞いたとの事だ(おそらくブライヤさんも相当怒られた?これから怒られるのだろう。)

 

そして、今回の軍事車両暴走事件の詳細を、オーグセキュリティーだけで処理するとは思われない。こんな大きな規模の大事件をこの世界を管理するコンピュータ”リアース”がスルーしてくれるはずはない事は明白だった。

実際、リアースの直系調査機関がこの現場へ向かっていると言う。

だから、こうして先手をうって、俺に容疑をかけて拘束する事で、リアースの目が俺に向かないように便宜を図ってくれたのだった。

 

エムズを軍事車両と対等に戦えるようにカスタマイズした事がバレると、それこそオーグセキュリティーの重大な問題となってしう。ここは、オーグセキュリティーの組織で隠蔽工作するしかないのだ。

 

 

こうして、リアースの目から逃れるようにそそくさと俺はオーグセキュリティー内の病院へ送り込まれ、診察後『電子不純わいせつ』で逮捕・拘束される事となった・・・。

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

こうして、世間を騒がせた列車暴走事件(軍用車両暴走事件)は幕を閉じる事となった。

 

事件の真相は首謀者…中富博士の電脳AIの暴走と世間には発表されることになったが、博士を暴走事件へと掻き立てた黒幕がいるという事実を。そしてその黒幕は、俺達人間とロボットとの繋がりを断ち切ろうという思想を持っている事実を公には発表しなかった。

 

それは、あまりに曖昧で確証の無い内容だったからだ。また、それが事実であればこの世界を揺るがす大問題である事だったからだ。

 

俺がこれからしようとしている事。俺の育ての親、永森博士がしようとしていた事との真逆の思想を持った者がこの世界にいる事を認識しなければならない。認識した上で行動しなければならない。

だから、必ず今後どこかでその思想を持つ者と対峙する事は間違いないと感じていた。

 

 

 

・・・でも今は、俺を助けてくれた、あのちょっとムカつく事もあるけど、すごく愛おしいあのアシスト型ロボットを復活させる事が何よりもの優先事項だった。