8mgの小説ブログ

WEB小説(ちょっと挿絵)のブログです。ブログ形式だと順番的に少し読みにくいかもですが、一章ごとに完成したら、別サイトにアップしたいと考えています。※このサイトはリンクフリーです。

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WEB小説『画面の向こうのプロレスラー』をメインで更新中!ちょっとアレな性格の女子レスラーの成長物語ですm(_ _)m

画面の向こうのプロレスラー(第1話)

 あなたはこの世界で一番有名な現役プロレスラーを知っているだろうか?

それは間違いなく「リリー」だと断言出来るだろう!

 

推定年齢20歳前後と思われる覆面女子レスラー「リリー(LILLY)」・・・彼女の情報は何も公開されておらず、正確に言うと彼女は特定のプロレス団体には所属していないので、アマチュアレスラーと言える。しかし、彼女の知名度は全世界を網羅し、専属のスポンサーも付いているのだ。

 

彼女が戦う舞台はwebストリーム上だ。観客もいない彼女と対戦者だけの試合を毎回ライブ配信して活動するネット上のレスラーだ。彼女のデビュー戦は、どこかのお寺の本堂で、よくわからないおっさんとのプロレス生配信から始まった。そしてデビューから今日、彼女の戦績は数えて164連勝を達成している。

 

164連勝・・・まさに人気の秘密はこの圧倒的な強さにある。

 

華奢な彼女が、世の中のあらゆる男達と対戦し、懸命に戦い、苦戦したり、圧倒したり…彼女の成長と共に毎回様々な男達をフルボッコにする様をライブで生中継するこの映像コンテンツは、試合の回数が増えるにつれ、フォロアー数も上昇し、有料の配信サイトであるにもかかわらず、視聴者数はうなぎ登りで増え続けた。

そして現在では、世界有数の映像コンテンツへと成り上がった。彼女が試合をライブ配信する際、世界中の何百万人の視聴者が刮目するのだ。これが、今世界で一番有名な現役プロレスラー「リリー」の全容だ。

 

まあ、御託を並べるよりも、百聞は一見に如かず・・・見てみるのが一番手っ取り早い方法だ。この後、生配信が予定されている。

 

リリーライブストリーミング”第165戦目”・・・リリーチャンネルという月額制の有料サイトにて生配信されるミックスファイトだ。もう間もなく始まるので是非見てほしい・・・

 

 

 

〜 LILLY's Live Streaming Fight PART 165 〜

 

 

 「こんにちは〜!!ライブストーミングをご視聴の皆様、リリーです!!今日もご視聴頂きありがとうございます!!」

 今日もおなじみのマスクとフェイスペイントシール、スポーツビキニ・・・という可愛くセクシーなコスチュームで明るくオープニングの挨拶をする彼女が、今世界で一番ホットなプロレスラー『リリー』ある。

 

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「今日私は南国○○○島のプライベートビーチに来ています。・・・えっ!?これですか??これは、こんなに素敵なビーチなのに泳いじゃダメですかと聞いただけで、”泳いじゃ駄目。何の為にここに来たんだ。自覚はあるのか。意識低すぎ。責任感無さ過ぎ。それだから君は・・・”とか一方的に言われて、ムカついたのでお仕置きしている所です。当リリーチャンネルをご視聴の皆さんは気にしないで下さいね!」

いやいや、めちゃくちゃ気になるし、スタッフの彼・・・正直羨ましい・・・リリーにヘッドロックされているのは、桑山君と呼ばれるリリーチャンネルのスタッフで、これまでの配信でもしばしば登場する。運営の意向だからと無理難題をリリーに吹っかけてはリリーに反撃・お仕置きされるおなじみのスタッフさんである。

 

「告知していた通り、今日の対戦相手は、なんとあのBWW!!本物のプロレス団体に所属する人気レスラー鬼頭淳弥さんです!まずは対戦に至る迄の経緯を綴ったVTRをどうぞ!」

 ・・・リリーの振りで画面は用意されていたVTRに切り替わる。リリーチャンネルの生配信はかなり優秀な編集構成になっている。使用言語は基本的に日本語だが、リアルタイムで英語をはじめとする三言語へ同時翻訳される仕組みになっている。もちろんリリー自身も語学は堪能で五カ国語を話せるらしい・・・こういった世界を意識したコンテンツづくりが海外の国でもヒットの要因だろう。

 

・・・画面は鬼頭選手の紹介、プロモーション映像が流れた後、(BBWのとある試合)試合後の独占インタビュー風景が映し出される・・・

 「んっ!!リリー!?誰だそれ、ふざけてんのか!!はっ倒すぞオラー!!」

そう言いながら、もう既にインタビュースタッフ(桑山君)をはっ倒している鬼頭選手・・・明らかに茶番だが、鬼頭選手もノリノリで煽ってくれている。

「とりあえずネットで有名なだけで、実績はゼロでしょ!!ちょーし乗ってるらしいから、ガツンといくぜ!首を洗って待ってろよリリー、シャーオラー!!(カメラ目線)」

まあ、視聴者が見たいのはリリーが果敢に戦う姿なので早くしろと言いたい所だが、こういった前振りのVTRを入れて、視聴者をじらしてくるのもリリーチャンネルの演出の一つである。

 

・・・VTRが終わり、再び対戦の舞台となるプライベートビーチの風景が映し出される。Live Streaming Fight・・・澄みきった青い海。銀色の砂に六角形の間仕切りのラインが引かれただけの簡単なリング。この現場に居合わせるのは、対戦者同士と両陣営のセコンドスタッフ、試合をジャッジするレフェリー、そして数名の撮影スタッフのみで、観客も実況もいない・・・波の音だけがBGMとして流れる少しシュールな現場と言えるだろう。しかし、この物足りなさを払拭するような圧倒的なファイトを魅せるのが我らがリリーの真骨頂だ。

リリーの得意とするスタイルは、アクロバティックな飛び技系だ。生配信のカメラからはみ出すぐらいの縦横無尽に動き回るいつものような試合が出来れば、リリーは強敵”鬼頭淳弥(きとうじゅんや)”を倒す事が出来るだろう。正直、今日の試合・・・もしかしたら、リリーが初めて負けるのでは・・・と一抹の不安を抱えながら俺は視聴しているが、果たしてリリーは俺の不安を払拭してくれるのだろうか・・・

 

ラウンドワン!!ファイト!!」

 両対戦者の簡単な紹介があった後、いよいよ試合開始のゴングが鳴り響いた。

 

ちなみに、このLive Streaming Fightの試合は1ラウンド5分、ラウンドの間に1分間のインターバルをおいた5ラウンド制のルールである。

30分、60分1本勝負が主流のBWWプロレスとは異なるルール上での試合となるので、鬼頭はそのルールに対応出来るのかもひとつの見所だ。

 

 

 〜  第1ラウンド  〜

 

 

試合開始のゴングが鳴り響いたが、両者ともに動かず、その場で相手の出方を伺っている。

試合開始からガンガン攻めていくリリーも、流石に今日の対戦相手は強敵もあってか、じっくりと間合いを計りながら相手との距離を詰めていく様子。

対して、鬼頭も迂闊に前には出ず、リリーの攻勢に受けて立つといった所だ。彼はBWW(プロレス団体)の中では体格は大きい方ではない。しかし、リリーと比べるとパワーや体格差では鬼頭が完全に圧倒している。対して、リリーはスピードとテクニックでどれだけ体格差を埋めるかが鍵となる。

「シャー、オラー!!」

と言う掛け声とともに一気に間合いを詰める鬼頭・・・リリーと取っ組み合いの形になった。両者のファーストコンタクトである。

「シャー、オラー、シャー!!」

取っ組み合いの形から、鬼頭が腕力の違いを見せつけるようにリリーを一気に押し込む・・・たまらず、リリーは片足を地面に付き不利な体勢になる。とここで、鬼頭は得意の絞め技にかかろうとした瞬間・・・

 

「ダァァァーンッ!」

 

転倒したのは鬼頭の方だった。一瞬何が起きたのかわからなかったが、画面下に「両手取り四方投げ」と表示されている。

このリリーチャンネルには、リリーや対戦者が繰り出した技名をリアルタイム表示(技が終わってから5秒程で表示)してくれる演出がなされている。

これはすごい機能で、プロレスに付いて無知でド素人だった俺が、何回も見ているうちに繰り出した技名をだいたいわかるようになってきた。リリーチャンネルが入り口だけど、他のプロレスの試合も見るようになってハマり、まあニワカファンくらいにまでは昇格したかと思う。

 

そして、先程の画面表示「両手取り四方投げ」のように、リリーは他の格闘技の技もちょくちょく入れてくる。彼女がインタビューでこたえていたように『私の格闘スタイルはオムニバス』との事だ。この両手取り四方投げ合気道の技であり、リリーは様々な格闘スタイルをミックスして戦うので、何が起こるかわからない。ワクワクするような戦いを魅せてくれるとともに対戦相手にとっては戦略が立てにくく、かなり厄介や存在である。

 

さて、試合に戻るが鬼頭が得意とする関節技に持っていこうとした瞬間、リリーは手の上下の動きで鬼頭からの圧力を捌き、そのまま転倒させた。この両手取り四方投げは鬼頭が得意の関節技を決めにいこうとすれば、カウンターが待ってるぞと言うリリーからの警告の合図であるかのようだった。

 

既に両者は起き上がり、再び距離を取る。そして、もう一度鬼頭は距離を詰め、関節技を仕掛けにいこうとするが、「バタンッ!!」と先程と同じようにリリーに捌かれ投げられてしまう。

投げられた鬼頭はその場に座り込みながら『ほうほう!』と大きく頷くパフォーマンスを見せる。『さっきのはマグレではなかったみたい』と言っているかのような余裕の表情だ。流石にモノホンのプロレスラーだけあって、これまでの対戦者とは一味違う。試合の魅せ方を知っている。何をどう思いながら戦っているのか、画面を通しても伝わってくるような少し大袈裟なくらいがちょうどいいパフォーマンスだ。

 

ラリアットいくぞ、オラー!!」

次に立ち上がって右腕をぐるぐる回すパフォーマンスを見せる鬼頭は大きくな声で叫ぶ。

これに対して、リリーはその場で小刻みにジャンプを始める。これは、鬼頭のラリアット宣言に対して、真正面から受けて立つというメッセージのようだ。

そして、両者 お互いの相手に向けてダッシュする・・・

 

「オオオオオォォーーーーーーーッッッ!!!」

 思わず声が出てしまった。ダッシュしお互いが交差しようとした瞬間、リリーは鬼頭の頭に向けて大きくジャンプ・・・鬼頭の頭を両足で挟み込むと、鬼頭を軸に旋回するような動きを見せ、そのまま鬼頭を投げ飛ばしたのだ。

 

”ヘッドシザーズ・ホイップ”という表示・・・

かなりアクロバティックな技だ。こういう技をどこかで見た事があったような・・・確か、ベトナムかどこかの国の格闘技パフォーマンスであったような・・・

 

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「ダァァァーーーーーンッ!」

投げ飛ばされた鬼頭はそのまま膝を付いた状態で、両手を上げて『すごい!!やるじゃないか!!』というパフォーマンス。まだまだ余裕の表情だが、おそらく鬼頭は想像していたよりも、遥かに強いリリーに対戦相手として絶賛しているようだ。何回か技を受けてみて、相手がどれだけ強いのか推し量っていたと思われるが、これでようやく鬼頭も本気モードになるのだろうか。

 

 「ラリアットいくぞ、オラー!!」

再び立ち上がって、右手を回す鬼頭・・・また同じ事をやろうと言うのか!?

両者また同じようにお互いに向けてダッシュする・・・

 

しかし、一瞬ダッシュを止めてタイミングを外す鬼頭・・・ジャンプしようとしたリリーは一瞬躊躇して、隙が生まれてしまう。

「ドオォォォーーーーーンッ!」

躊躇してリリーに向けて、鬼頭は足の裏を見せるように右足を押し込む”ケンカキック”を繰り出した。当然、リリーは勢いに体ごと持っていかれ後方へ吹っ飛ばされる。

 

吹き飛ばされたリリーはそのまま膝を付いた状態で、両手を上げて先程の鬼頭のパフォーマンスのように振る舞う・・・『ラリアットするんじゃなかったの?』という ” Why? ” という表情とともに、リリーもまだまだ余裕があることをアピールする。

 

 両者ともにまだまだこれからといった所だ。

 

 再び両者は近付き、取っ組み合いの状態となる・・・リリーは鬼頭の頭に飛びつこうとするが、鬼頭が力づくでリリーの体を押さえ込みながら持ち上げ、そして地面に叩き付けようとする・・・が、リリーは上半身全体を使って回転するように鬼頭の胸元にしがみつき、そのまま足を交差させて鬼頭の手を払いのけ、投げ飛ばそうとする・・・が、鬼頭は踏ん張りをきかせ、上半身を低くかがみ込ませながら、地を這うような回し蹴り”水面蹴り” を繰り出したが、リリーはバク転するように後方へジャンプして蹴りをかわす・・・そして、今度は鬼頭に向かって前転するように”浴びせ蹴り”をお見舞いする・・・が、鬼頭は何とか右手で顔をブロックしてガードする。リリーの蹴り勢いが強く後ろへ押し出された鬼頭だが、きっちりガードしている・・・

 

「・・・す、すげぇ・・・」

と言う言葉が思わずこぼれるような、著しく攻守が入れ替わる、激しい攻防が繰り広げられた。何よりも(爆乳だけど)華奢な体の女の子が、本物のプロレスラー相手に、互角、いやそれ以上の戦いを見せている非日常の光景が、このモニターの向こうで繰り広げられ、それに完全に魅了されている自分がいる。自分だけではない、この生配信を見ている何百万人の視聴者の多くがこの戦いに引き込まれていることだろう。

 

リリーと鬼頭の両者は、再び身構える・・・

 

「ダァァァーーーーーンッ!」

 

鬼頭は体を回転させながら”ローリングバックブロー”を打ち込もうとしたが、それに対して、リリーも回転しながら大きくジャンプ・・・遠心力を効かせた”ローリングソバット”を繰り出し、見事に鬼頭の喉元に命中させた。ローリングバックブローは一旦相手を視界から外すのでリスクを伴うが、それが裏目に出てしまった格好だ。

 

「ごほぉっっ!!」

喉元に蹴りを打ち込まれ、これには鬼頭も堪らず苦痛の表情を見せるが・・・

 

 

「カァァーーーーンッッッ!!」

 

 

しかし、ここで1ラウンドの終了を告げるゴングが鳴り響いた。

 

 

・・・ 濃密な5分間 ・・・

 

静かな立ち上がりで始まった試合だったが、時間の経過につれ、試合もヒートアップしたが、リリーの健闘には驚くばかりだ。普段の試合ではもっと最初から怒濤の攻撃を見せるが、今日は”相手にペースを握らせない的確な攻め”と言った感じだ。本気でこの試合を勝ちにきているのがわかる。対して、鬼頭は手探りの為のラウンドと言った感じだったが、ラウンド終了間際のローリングソバットキックはかなりのダメージだったように思えた。 

 

 

  〜  第2ラウンド  〜

 

 

「シャー、オラー、シャー!!」

開始のゴングと共にいきなり雄叫びを上げる鬼頭・・・これは力の鼓舞なのか 、それともただの強がりなのか・・・

 

強烈なタックルでリリーを掴みに掛かる鬼頭だったが、その下を潜るようにリリーは体勢を低くした状態から起き上がる力を利用して、鬼頭の下あごを突き上げるような頭突き…”ヘッドアッパー”をお見舞いする。

 

「ガァァーーーーンッッッ!!」

続けて、リリーはその場でバク転しながら体ごとぶつけるラウンディンクボディプレスを決める。

「バキィィィィッ!」 

そして畳み掛けるようにリリーの右足を大きく振り上げたハイキックが鬼頭に炸裂する。

 

「ウォッ!!!!」

流石に大きく仰け反ってしまう鬼頭だったが、リリーの連続攻撃に只翻弄されるばかりでは完全に試合の主導権を持っていかれる事もわかっているようで、ここが踏ん張り時だと言わんばかりに、強烈なラリアットで応戦する。

 

「ガァァーーーーンッッ!!」

鬼頭の強烈のラリアットがリリーの胸元に命中する。リリーは体がくの字になるような態勢のまま吹っ飛ばされる。続けて、鬼頭はバックステップを取ってから、追撃のランニングエルボーを繰り出す。

ドガァァーーーーンッッ!!」

先程のラリアットと同じように、体がくの字になりながら、地面に叩き付けられるリリー。おそらく今日の試合で、リリーにとって一番のピンチだろう。

 

「シャー、オラー!!」

鬼頭は一気に試合を決めるつもりで、リリーの体を持ち上げ、パワースラムの態勢に入る。リリーを抱えたまま地面に叩き付け、そのままフォールに持ち込むつもりだ。

「!!!!!!!!」

しかし、リリーは体が宙に浮いた状態であるにも関わらず、鬼頭の足にしがみつきながら必死に抵抗すると、バランスを崩した鬼頭の隙を突いて、足を振り子のように使いながらそのまま体ごと鬼頭を押し倒した。

「ダァァァーーーーンッッ!!」

あれだけの攻撃を喰らいながら反撃に持ち込むとは、リリーは信じられない体力を持っている・・・いやっそうではなく、ラリアットやエルボーの攻撃を体をくの字に曲げてダメージを受け流したのではないかと考えられる。

 

「うおぉぁぁーーーッッ!!!」

画面上では、リリーが鬼頭を押し倒したその態勢から、腕ひしぎ十字固めへと素早く移行している状況が映し出される。ピンチから一転・・・完全に彼女の絞め技が極り、鬼頭の表情が歪む。一方、リリーは先程までの劣勢が嘘であるかのように鬼頭の右手を胸に挟み込み、笑顔まで見せている。

 

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 「しっ、シシャー、おっ、オラー!!」

 どこかぎこちなく、鬼頭の口癖まで真似をするリリー。余裕の表情だ。

 

「くっ・・・くそぉぉぉぁぁーーーーっっ!!!」

鬼頭は既に伸びきっていた腕を力づくで押し込み、なんとか両手で自分の腕をロックした。そして、そのまま力づくで起き上がった。これにはリリーも驚きの表情で、すぐに締めを解き鬼頭の腕を振りほどきながら地面に着地する。持ち上げられたまま、パワーボムを喰らわないように警戒したようだ。

 

それにしても今の場面を見るだけで、やはりリリーと鬼頭ではパワーの違いが歴然であったが、それを差し引いてもこの試合のリリーの善戦ぶりには感嘆するしかなかった。

 

 

「カァァーーーーンッッッ!!」

 

 

ここで2ラウンドの終了を告げるゴングが鳴り響く。

 

 

『あぶねぇ・・・』と言った表情だろうか?鬼頭は右腕をぐるぐると回しながらストレッチするように自陣へ戻る。

 

一方、ゴングの音と共にその場にぺたりと座り込んでいたリリーだったが・・・

 

「ハッハッハーーー!!ハッハッハーーーッッ!!ハッハッハーーーッッ!!」

いきなりトチ狂ったようにその場で笑い出す彼女・・・

 

「・・・失礼しました・・・。」

非礼を詫びるかのように、彼女は冷静な声で謝罪し、自陣に戻っていく・・・

 

しかし、その表情は少し半笑いのようでいて、妖婉さも漂う先程までとは全く違うものとなっていた。

 

 

 

 

キターーーーーーーー(゜∀゜)ーーーーーーーー!!

 

 

 

 

 

これまでリリーを追いかけてきたファンなら誰でもわかるような状況だ。

 

あの何かをやらかしそうな座った目・・・。

 

トチ狂った言動・・・。

 

そして、何故か画面からでも伝わってしまうにじみ出るようなエロス・・・。

 

これが本物のリリーとも言える『狂人化モード』になった彼女が現れた。

 

おそらく、リリーは多重人格レスラーなのだろう。一度カウンセリング受けた方がいいって言ってやりたい。

 

  

「ヒャッハーーー!!」という言葉が似合う、狂人化したリリー・・・どうしてこうなったかと言うと、いつもの事なのだが、試合を進めていくうちに彼女は興奮してきて、ある一定の興奮度ラインをこえるとこのように第二の人格とも言える狂人化したリリーとなってしまうのだ。

 

狂人化した彼女は、それまでとどう違うかについては、まず行動に躊躇いがなくなり、めちゃくちゃ強くなる事だ。そして、エロい事も平気でしてくる・・・男性の急所攻撃も余裕で、反則を疑われても5カウント内はお咎め無しだと主張する理性を持った行動なので余計にたちが悪い。そして、とにかくエロい。サービス精神満点で、自分の体を余す所無く使った物理&精神攻撃を雨あられのように浴びせ、どんな相手(男)でも蹂躙してしまうのが、狂人化したリリーである。

 

・・・果たして、狂人化した彼女は、本物のプロレスラー鬼頭をも飲み込んでしまうのか・・・そういった中で、いよいよ次のラウンドのゴングが鳴る。

 

 

 

 

  〜  第3ラウンド  〜

 

 

 

 

開始のゴングとともに、スッと横に寝転ぶリリー・・・そしてグラビアアイドルのようなポーズを取る・・・これには、鬼頭もポカンとした表情で立ち尽す。

 

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「ねぇねぇ、鬼頭さん〜!来て〜!!はやくぅ〜!!」

ゴロンと寝そべりながら、鬼頭を誘おうとするリリー・・・挑発するにしてもあまりに無防備な体勢で・・・しかも今は試合中である。彼女の行動はあまりに常軌を逸していた。

 

 でもね・・・これは違うんだ!今迄リリーを追いかけてきた者ならわかる・・・これは明らかなリリーの罠だ!

 

通称・・・”釣り野伏”・・・ファンサイトの中でそう呼ばれるリリーの戦い方だ。

 釣り野伏と言えば、戦国大名島津家が得意とする戦法で、囮部隊が敗走を装い追撃してきた相手部隊を伏兵部隊が包囲殲滅する戦法だが、今に置き換えると、あまりに無防備な体勢で敵を挑発するリリー・・・挑発に乗って懐に飛び込んできた相手を、包み込んで殲滅する・・・それがリリーの必殺とも言えるカウンタースタイルだ。

 

当然、そのことは鬼頭も研究済みだろう・・・でもね・・・あの・・・可愛くて・・・バインバインなリリーが誘ってくれている・・・男だったらわかってても火中に飛び込むよな!!!鬼頭さん!!!

 

「ふざけるなっ!!シャー、オラー、シャー!!」

助走をつけてリリーへ飛び込もうとする鬼頭・・・男の中の男だ!!それでこそ!!俺達の鬼頭だ!!

 

 

えぇっとちなみに、リリーの釣り野伏カウンターを喰らった相手はそこからボコボコに・・・されるんです・・・

 

 

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