8mgの小説ブログ

WEB小説(ちょっと挿絵)のブログです。ブログ形式だと順番的に少し読みにくいかもですが、一章ごとに完成したら、別サイトにアップしたいと考えています。※このサイトはリンクフリーです。

WEB小説『拡張された世界』更新中:バッドエンド後の未来を舞台とした主人公♂とそのアシストロボット♀とのイチャラブSF小説ですm(_ _)m

WEB小説 拡張された世界 〜第一章23〜

エムズに乗り込んだ俺とアリス・・・相変わらず彼女はここがが定位置だと言わんばかりに、俺の膝に座ってくる。

 

「満身創痍だと思うけど、もう少しだけ頑張って動いてくれ!」

俺はそうエムズに呼びかける。損傷率は79%・・・はっきり言って爆発炎上を引き起こしかねない状況だ。

 

「マスター!私には・・・!?」

 

「あぁ、アリス・・・まぁ、ガンバレ!」

 

「ブー!なんですか、そのやる気のない激励は!!」

 

「冗談だよ!アリス・・・当然頼りにしてるよ!お前も俺もここで踏ん張らないと、お互いこんがりとエクスプロージョンしてしまうからな!」

 

「はいでも、そうはさせません!マスターは私が必ず守ります!」

 

「ありがとう、アリス!ほんとお前は頼りになるAIだよ!」

 

俺とアリスは、最後のミッションについて確認しあった後、残り僅かなエネルギーバックパックを使って、エムズを飛び上がらせた。

 

当然、17式の迎撃ミサイルの照準がエムズに集まるが発射されなかった・・・

 

それは、17式のコア・・・中富博士のAIがプログラムに対して必死に抵抗しているからだった。

 

もうこの世にはいない存在である中富博士。

彼は自分の脳を電脳化して、死亡とともに自分の電脳を17式AIに移植した。

だからと言って、中富博士自身は延命出来た訳ではない。器として電脳を活動させ続ける技術は存在しているが、その電脳の意思・・・つまり人の心まで存在させ続ける技術は、この世界にはない。

 

しかしながら、先程の付随車両内の拡張空間には中富博士の意思がはっきりと存在し、コミュニケーションを取ることすら出来た。

 計算式では説明出来ない事象が、拡張空間で起きたのだ。人の心・魂を映し出す、具現化させる力が拡張空間には存在している。

この現象・・・可能性を研究していたのが、私の恩師、育ての親である永森博士であり、その研究の成果を、バックアップメモリーに集約させ、そのメモリーを備え付けたのが、このアリスである。

 

拡張空間・・・拡張されたこの世界の可能性を追求する上で、俺やアリスが、こんな所で終わってしまう訳にはいかないのだ!!

 

 

 

  

「中富博士!!!」

 

 

 

・・・うまくエムズを17式の上部に着地させた!17式はエムズの着地の衝撃で大きく揺れ、思わず脱線しそうになる。

 

 

・・・と、同時に中富博士のジャミング制御が解け、大量の迎撃ミサイルが発射された・・・ミサイルは数十メートルの位置まで上昇し、こちら対象目標のエムズに向かって飛んでくる。

 

 

・・・「「 間に合えーーーッ!!! 」」俺とアリスは共鳴するように叫びながら、エムズの最後の一手・・・脚部のローラーを切り離し、高熱を帯びた脚部をそのまま17式に突き刺した・・・狙ったのは、中富博士のAIが搭載されているコア部分だった。

 

脚部の高熱で、コア部分を焼き切ったのだ。

 

 ・・・・・・・・・・

 

「目標、完全に沈黙。」

 

「よしっ!!!」

 

「ミサイル来ま・・・」

 

 モニタ−越しに目の前が明るくなる。超大型のスポットライトで照らされたような状態と思った瞬間・・・その後の記憶は覚えていない。

 

 

 

 

 

ドゴォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーンンンッッッッッ!!!

 

ガシャァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーンンンッッッッッ!!!

 

 ドオォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーンンンッッッッッ!!!

 

 

 

 

・・・何十発もの迎撃ミサイルを打ち込まれ、エムズ(対犯罪者用戦闘重兵器車両EMZ-03)は大破した・・・

WEB小説 拡張された世界 〜第一章22〜

前方付随車両の拡張空間内・・・

 

 ♪ ♪ ♪ ・ ・ ・ ♪ ♪ ♪ ・ ・ ・

 

合図の音楽と共に、車両内放送が流れる・・・

 

「間も無く終着駅の0779ステーションエレベーター前に到着します。」

アナウンスと共に駅員に扮した俺(拡張プログラムの擬似映像である)が現れる。

 

「中富様、間も無く終着駅です。乗り換えのご準備は出来ていますか?右前方をご覧下さい!」

示した方向には、天まで延びるようなステーションエレベーターが映り、その先にはプレートが空を自由に行き来している景色が広がる。

 

「中富博士。あなたが提唱したフロンティアライン計画が実現した世界です。」

そう、この車窓から見える景色…拡張空間で見せている世界は、俺とアリスとで急いで作ったプログラムの世界である。この即興プログラムデータを拡張空間に流し込み、その拡張空間の基となったシステムAIに干渉すること(もしくは、対話すること)を『プログラムダイブ』と呼ぶ。

このプログラムダイブを使って、中富博士のAIと対話し、17式の暴走を止めるのが、本作戦の主要目的である。

即興で作った干渉プログラムなので、チグハグな部分もあるが、中富博士のフロンティアライン計画をかなり忠実に映像化させたプログラムだ。

 

「まさか…!」

中富博士の表情が変わる。いやっ、正確に言うと中富博士のAIに何かしらの干渉を与えた証拠だった。

 

「本来は上のプレートは見えなくさせるはずですが、ステーションエレベーター周辺はセキュリティの問題から見せるようにしています。むしろ、これだけの技術の結晶をステルスしてしまうなんて狂気の沙汰ですよー!」

「君は技術者かね…!であれば、もっと多方面からの視野について学びなさい。周辺社会、生活環境への影響など考慮して考えられた計画なのだよ!」

「いいえ!それは言い訳に過ぎません!技術によって解決出来る問題を予算の都合で折り合いを付けた妥協案に過ぎません。」

「君は!失礼だな!」

「いいえ!言わせてもらいます!」

 

…何故か、空間拡張世界の中で、俺と中富博士は口論を初めてしまった。

 

言い争いこそ、真のコミュニケーション!

 

まあ、ひとつ言えるのはプログラムに多大な影響を与えたのは間違いない!

 

「マスター!なんだか楽しそうです!」

アリスの一言で、俺は我に返る。本来の目的を忘れ、中富博士とのディベートに熱中してしまっていた。

 

「博士・・・博士のフロンティアラインに掛ける熱い気持ち、十二分にわかりました!」

「いやいや、君くらい意見をぶつけて来てくれる人は初めてだよ!楽しかった!」

「博士・・・そろそろ、この17式の暴走を止めてもらえませんか?」

俺は本題を切り出す。プログラムに干渉して、暴走を止める!

 

「私は技術者として、弾かれた人間だ。それがずっと不服で生きてきた。でも、今思えば、私は弱い人間だから、当然の結果なんだと思う。」

そう言いながら、中富博士はうつむく…。

 

「どういう事ですか?」

 

・・・中富博士が歩いてきた人生・・・そして、何故列車暴走事件を引き起こしたのかを話してくれる・・・先程、アリスが調べた情報通りだった。しかし、検索情報にはない出来事を話してくれる・・・

 

「・・・そういう事があって、フロンティアライン計画は頓挫し、私もオーグアーミーの駐屯基地に左遷された。それでも、夢は諦め切れず少しでも計画の足しになればと進めてきたが、妻は先に他界し、私も体を壊してしまった。そんな時に、私に生きた証を残さないかと言ってくる者がいたんだ。」

 

「えっ!!」

 

「私が死んだとしても、私が生きて夢見た証は残してくれると言われ、私は心の脆弱さから、お願いしますと承諾してしまったんだ。」

 

「ちょっと待って下さい!博士が電脳の一部を17式に移植したのは、博士の考えじゃなくて別の誰かって事ですか!?」

 

なんと言う事だろうか!今回の暴走事件の容疑者は中富博士のAIだか、暴走に至るまでを誘導させた第三者がいると言う事実が発覚する。

 

「誰に誘導されたんですか!?」

「それはわからない…と言うか、その部分はプログラムから既に消去されてしまっている。それに今走らせている17式の暴走は私の意思では止められなくなっている。加速プログラムが付けられている。」


「加速プログラム!?」

AIにおける電脳より優先される強行型プログラムを加速プログラムと呼ぶ。

 

「ちょっと待って下さい!アリス!博士のコアに接続して、加速プログラムの解除と消去されたデータの再構築は出来るか!?」

 

「はい、マスター!ケーブル接続で可能です!」

 

「博士!コアに接続させてもらえますか?」

 

「それはダメだ!コアに外部干渉が入るだけで、爆発するように設定されている。サルページは出来ない。だから、私のコア部分を焼き切ってくれ!お願いだ!」

 

「焼き切るって、そんな事をしたら・・・」

 

「もう、時間がないんだ!間も無く第17式機動装甲列車は爆発するように、これも加速プログラムが設定されている。」

 

走行が停止すれば爆発すると、ブライアさんがそう言ってが、もっと残酷なプログラムが設定されていたようだ。

 

 「そのロボットで、私のコアだけを焼き切るんだ。そうすれば爆発させずに止められる!なんとか迎撃ミサイルが起動しないように、加速プログラムを押さえ込んでみせる!」

 

「ですが、博士・・・!」

 

「君!名前は・・・?」

 

「月ヶ瀬悟と言います。」

 

「悟くんか・・・たのむ!私を誘導させた者の正体は思い出せないが、その者は、人間と技術・・・人間とロボットとを引き離そうという意思が感じられる。」

 

「人間とロボット・・・とをですか?」

 

「君と君の横にいる彼女とをケンカさせよう・・・そんな感じだ。」

 

・・・人間とロボットとの関係性は色々とシビアな問題だ。今現在の世界は、ロボットであるリアースによって人間は統治されている世界だからだ。

 

「私や君は技術者だからわかると思うが、ロボットやテクノロジーに嫌悪感を抱くなんて皆無だ!」

 

「おっしゃる通りです!そこには夢や期待しかありません!」

 

「ああ、ありがとう、悟くん!君にお願いしたい!私の尻拭いをしてほしい・・・我々と技術との間を引き裂こうとする者を止めてほしい!」

 

「・・・博士・・・。」

中富博士は言葉こそ洒落めいていたが、表情は真剣だった。

 

「今世紀最高峰の技術者様の尻拭いが出来るなんて、こんな名誉な事はありません!」

 

「・・・悟くん・・・。」

 

「謹んで、お引き受け致します!俺とアリスの仲を引き裂こうとする奴なんて、ぶっ潰しますよ!!なあ、アリス!!」

 

「はい、マスター!! でも、マスターの言い寄り方が、少ししつこい所があるので、ちょっと距離をあけてもらえたら助かるかなーって・・・」

 

「おいっ!アリス!!」

 

・・・そうして、俺とアリスは再びエムズ(対犯罪者用戦闘重兵器車両EMZ-03 )に乗り込んだ。

 

狙うのは、暴走する17式のコア部分・・・中富博士のAIだ。

 

 

 

WEB小説 拡張された世界 〜第一章21〜

・・・・・・・・・・・・・・・

 

・・・少し前、最後の作戦にかかる為、ブライアさんと俺とアリスとで作戦会議をしていた時・・・ 

 

「どう言うことですか!?それって、暴走の動力は17式だけど、暴走を誘導してるのは前の車両って事ですか?」

 

「ああ、二両揃って初めて走行する仕組みみたいだ。」

 

・・・ブライアさんが言うには、前方付随車両内の拡張空間に入り込んだ際、中富博士の断片的な記憶を感じたらしい。

 

電脳化した人間には、拡張世界(オーグリアリティ)を通して、別の人間の記憶が流れ込んでくるという不思議な現象がごく稀に起こるという話を聞いた事がある。

そして、今回のケースは、付随車両内という限定的な拡張世界である『空間拡張』内で、その空間を作った中富博士の記憶がブライアさんの電脳内に流れ込んだという訳だ。

 

「マスター、中富博士の周辺情報の集積が完了しました。」

そう言って、アリスは自身の目に搭載されているプロジェクターで、エムズの機体甲板部分に向けて情報を映し出してくれる・・・

 

中富康之、元レールライン開発技術研究所所長・・・数多くのルート開発や車両開発に携わり、彼が64歳の時、彼の集大成である最大プロジェクト『フロンティアライン計画』を打ち立てる。4年越しで認可を得て、開発研究は順調に進むかと思われたが、突然その計画は凍結させられる・・・その後、彼は幽閉されるかのように研究所を追い出され、地球07エリアのオーグアーミー(この世界の軍隊機関)施設へと赴任する。その翌年、彼の妻である中富和子氏が亡くなり、それを追うかのようにその翌年死去ー享年72歳。

 

「オーグアーミーに赴任って、ブライアさん!?」ブライアさんは元オーグアーミー所属だ。

 

「ああ、その頃は、もう辞めていたからわからないけど、なんでオーグアーミーなんだろうか!?それにフロンティアライン計画って??」

 

「確か、聞いた事があります・・・研究資料としてデータベースにも残していたはず・・・アリス、フロンティアライン計画を説明してもらえるか?」

 

「はい、マスター!フロンティアライン計画というのは、レールの上を車両が走るレールラインシステムに対して、レール自体が走るインフラ計画がフロンティアラインです・・・」

 

・・・アリスの説明によれば、フロンティアライン計画とは、まず地上の上に蜘蛛の巣状のもう一層の地表を作り、地球全体を2層構造にする・・・当然、今までの地上は影に覆われてしまうのだが、上の地表をステルスコーティングして見えなくさせる事で、今まで通り、地上に住む人は、なんの変化も感じないまま暮らし、その上の層を使って、自由に人や物が行き来するインフラシステムだ。

ステルスコーティングにより見えなくなった上の層では、蜘蛛の巣状に張られた地表の上を、1×1mの六角形のプレートが自由に動き回る。プレートは何枚も連結させる事が出来、大きさや数問わず運搬することが出来る。

上の層と下の層を繋ぐのが、ステーションエレベーターであり、地球の至る所に出来る事になるが、このステーションエレベーター間を点移動するのがこのフロンティアラインシステムの肝だそうだ。

 

これまでの決められたレールの上を通る形態ではなく、点と点を自由に移動するインフラ形態・・・そんな世界の実現化がフロンティアライン計画だった。

 

「余りに話が壮大過ぎて、付いていけないんだが・・・」ブライアさんが言う通り、計画の規模が大き過ぎる。

 

「でも、上の蜘蛛の巣プレートを構成するブラナ合金という素材が、かなり低コストで調達出来るとかで、ホントに実現出来そうとか、業界でも話題になっていたと思います。」

 

「しかし、計画は凍結された・・・のか。」

 

「恐らくは、その計画は余りにオーバースペックだとリアースに判断されたのではないかと思います。上の層は、その上に乗る人や物を含めて丸ごとステルスコーティングされている・・・これって、見えない所で色んな人や物が地球のどんな地域にも運搬されるって事ですよね。例えば、武器やテロリストが自由に行き来出来る訳で・・・」

フロンティアライン計画の問題点は、そのセキュリティ管理機能に幾つかの問題を抱えていたように記憶している。しかし、リアースとの協力により、それがクリア出来ると中富博士は訴えていたように思う。

 

 

しかし、結局はリアースが拒否したのだ。

 

 

それだけではなく、中富博士はリアースからオーバーテクノロジーを生み出す危険人物に認定され、幽閉される・・・その幽閉先が何故オーグアーミーだったかはわからないが、そのおかげで、彼は17式に触れる事が出来、今回の列車暴走事件に繋がった訳だが・・・

  

「それがな・・・前の車両に乗り込んだ時に見えたのは、中富博士と彼の奥さんだったんだ。」

 

「奥さんですか?」

 

「俺があの車両内で見たのは、レールラインで目的地へと向かって旅をしている中富夫婦だったと思う。」

 

「その目的地とは?」

 

「ステーションエレベーターだと思う。あの時俺は、拡張空間の中で中富博士がそう言ったのを覚えている。」

 

車窓から見える外の景色を楽しみながら旅する老夫婦・・・それが中富夫婦で彼らが向かっていた先はレールラインからフロンティアラインへと移行するインフラシステムを妻に案内しながら、この世界がさらに良い方向へ向かっていけばという中富博士の夢が溢れ出したように、拡張空間を通してブライアさんの中に流れ込んだそうだ。

 

「そうですか!!これは、暴走を止められるかもしれません!!」

僅かな可能性だったが、自信があった。

 

「止められるって、どうやって!?」

 

「中富博士の目的が、奥さんにフロンティアライン計画を見せる事だったとしたら、そのフロンティアライン計画が実現した風景、ステーションエレベーターから上の層まで完成した風景を見せる事が出来れば目的は達成して暴走を終わらせる事が出来るんじゃないでしょうか。」

 

「見せるって、どうやってフロンティアラインを見せるんだ!?」

 

「・・・そこでオーグリアリティ(拡張世界)の出番ですよ!アリス、作れるか?」

 

「はい、問題ありません!」

 

考えた作戦というのは、中富博士が考えたフロンティアライン計画が実現した世界を拡張世界に映し出す事だった。

前方車両の空間拡張にプログラム干渉を加える事で、フロンティアライン計画の実現した世界を見せる。

 

「中富博士の提唱したフロンティアライン計画のプレビューを、今から俺とアリスとで構築します。」

 

「そんな事が出来るのか!?」 

 

 「7、8分程あれば出来ます!今から、エムズで暴走車両へ向かいます。ブライアさんはここで休んでいて下さい。」

 

 「おいっ、ダメだ!危険すぎる・・・」

 

「大丈夫・・・とは言いませんが!俺達は修理屋である前に技術者です!技術者なりの戦い方でこの状況をひっくり返してやります!・・・それに、この超優秀なアリスもいますし!!」

 

「マスター!やだ、優秀とか可愛いとか・・・恥ずかしいです・・・!」

 

「いやっ、誰も可愛いなんてひと言も言ってないんですけど・・・」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

前方車両の上、エムズコクピット内・・・

 

「では、プログラムを投下・・・開始!!」

 

「はいっ!マスター!!」

 

拡張空間に向けてフロンティアライン完成プレビュープログラムを投下させた・・・。

 

 

 

WEB小説 拡張された世界 〜第一章20〜

17式が持つ4門のバルカン砲のうち、3門がこっちに向かって火を噴く。

 

ブォァァァァーーーーーーーーーー!!

 

しかし、エムズはこれまでにないような巧みな動きで、その後集中砲火を寸前の所でかわし続ける。

 

「すごいな!バルカンの軌道を予測表示してくれるのか!?」

 

モニターには、次にどのような攻撃が来るのかを秒単位で詳細に線表示してくれており、機体をどの位置に動かすかも矢印で表示してくれている・・・

もう完全に17式は丸裸状態だ。

 

「17式の行動パターンはほぼ100パーセントに近い程把握しております!ですが、向こうも自立AIを搭載した兵器ですので、そろそろ行動が読まれていると把握する頃でしょうか?」

 

「どういうことだ?」

 

「こっちの攻撃が読まれていると認識して、行動パターンを変えて来るかと思われます。」

 

アリスの言う通り17式は、誘導機能を搭載していない近距離迎撃ミサイルとバルカン砲を織り交ぜながら攻撃して来る・・・

そのミサイルの一発が、エムズの右後ろ足に命中する。

 

ダァァァァァァォーーーンッッ!!

 

「ほらね!」

 

「ほらねじゃねーよ!!??どうすんだアリス!?機体バランス・・・ってアレ?」

 

「大丈夫です。残りの3本の足だけでも充分に機体は支えられます!それに相手がパターンを変えてきたのなら、今度はさらにその先を読むだけです!」

 

「頼もしいな、お前は!じゃあ一気に近づくぞ!右腕だけは完全死守!」

 

「はい、マスター!」

 

エムズの右腕のショットガンは残弾1・・・最後の一発は有効的に使わせてもらう。

 

キュ、イイィィィィィィーーーィィィーーーン!

 

エムズの脚部は、それぞれの足を折りたためたり、位置を360°調整する事が出来る。着弾して破壊された脚を切り離し、前足二本、後ろ足一本という、三角形の位置取りで機体を支えながら、17式に向かって突撃する・・・

 

「よし、ジャンプだ!!」

 

17式にいよいよ距離50mまで詰めた手前、エムズを二足モードに変形させ、残量の少ないブースターを全開にして地上から大きくジャンプさせた・・・

 

「最後の一発はこうやって使うんだよ!!」

 

17式のバルカン砲が、ジャンプしたエムズを狙おうと砲門を動かせた瞬間、それよりも早く、エムズの右腕ショットガン・・・最後の一発を使用した。

 

バァァァシュゥゥゥゥァァァァーーーーッ!!

 

17式の頭上に広がる大きな爆発と煙・・・エムズの右腕を暴発させたのだ。

暴発させるため、右腕ショットガンの銃口に詰めたのは、さっきの作戦で使った煙幕だ。

・・・つまり、狙いは17式本体ではなく、17式の対象補足機能をかく乱させる事にあったのだ。

 

シュゥゥゥゥァァァァーーーーッ!!

 

辺り一面覆い隠す程の煙幕が立ち込めるが、17式や付随列車は走行しているので、立ち込めている煙幕から抜けるのも、さほど時間が掛からなかった・・・

 

・・・煙から抜けた17式とその前の付随車両・・・

 

・・・17式のバルカン砲が、360°クルクルと回転しながら、エムズの機体をサーチしている・・・

 

 

「おーい、ここだぞ!!」

 

「こっ、コラ!マスター!見つかっちゃいますよ!」

 

「ウンっ!!でも、大丈夫!もう既にチェックメイトだからな!!」

 

「そうですね!それじゃあ、解除しますか?」

 

「ああ・・・そうしてくれ!」

 

「はい!!ステルスコーティングを解除します!!」

 

 

・・・エムズのステルスコーティングが解除され、そのボロボロになった機体が現れてくる・・・

 

・・・その現れた場所は、17式の前方、付随車両・・・上半分が吹き飛ばされ野ざらしになった車両土台の上に乗りかかるような状態でエムズは姿を現わす。爆音と煙幕、そしてステルスコーティングの三段構えで17式のサーチ機能を回避した。

 

そして、既にエムズのケーブルと付随車両の土台とを繋いでいる状態・・・

 

俺達の作戦・・・ブライアさんと考えた作戦の狙いは、17式ではなく、その前方の付随車両だった。前方車両の土台とエムズとをケーブル回線で繋いで、付随車両土台の上に作られている『空間拡張』に対して干渉プログラムを投下する事・・・これが作戦の最重要項目だった・・・

 

 

 

 

 

WEB小説 拡張された世界 〜第一章19〜

「俺達の目には、黒いカーテンが降ろされたように見えたんだ。」

 

オーグリアリティ・・・機械や人間の目に見える景色を拡張させて覆う世界。それによって、本来目に見えるはずだった世界を黒で覆ってしまったのだ。

 

「それからカーテンの向こう側で何が行われたかは全くわからない。俺達オーグアーミーは封鎖の命令を遂行するだけだった。ただ、カーテンが開けられた時、その向こう側には、人も建物も何もかも無くなっていたんだ。」

 

「・・・そうなんですか。」

 

「俺はゲート封鎖の任についていた。その時一人のオーグセキュリティ捜査官がゲートの向こう側に行かせてくれと泣き付いて来たんだ。」

 

「それって・・・?」

 

「若い女性捜査官で、今回の暴動鎮圧の任についていた彼女は、自分達に任せてほしい、まだ待ってくれと嘆願しながら、他の隊員に取り押さえながらも訴えてきた。」 

 

・・・その女性捜査官というのが・・・

 

「俺はただ事の成り行きを見守る事しか出来なかった。全てが終わって、放り出されてゲートの前で放心状態のまま座り込む彼女に俺は声を掛けた。彼女は、この事態を引き起こしたのは、自分のせいだってずっと泣いていた・・・彼女の涙が忘れられなくて、俺はこうして今、その時の彼女の下で働いているって訳!」

 

22エリア暴動事件・・・ 当時俺は、空から落ちてきて、病院でリハビリをしている時だった。

ニュースで連日報道されていたが、突然シャットアウトされ、報道規制が敷かれた。

その一連の事件の担当捜査官代表が、当時キャリアを歩む予定であった笠原晶子だった事を俺は初めて知ることになる。

 

 

・・・・・・・・・・・・ 

 

 

「なぁ、晶子・・・ここは俺達に任せてくれないか!?」

 

『何を言ってるの!?』

 

「今はブライアさんや俺・・・ここにアリスだっている!」

 

『・・・・・・』

 

「手を伸ばせば届くのに、それを見過ごすなんて、俺は嫌やだ!」

 

『!!!???』

 

「晶子・・・名義上、今の俺の立場は容疑者だ!容疑者が暴れてさらに罪を重ねていくその勇姿を見ててくれ!エムズ一号機はこれより、単独行動に出る!」

 

『 悟 ! ! 』

 

・・・俺は通信を遮断した・・・もう後戻りは出来ない・・・するつもりもない・・・

 

「アリス・・・これで思い残すこともなく、最終決戦に挑める!」

 

「はい、マスター!」

 

「とはいえ・・・最終決戦っつっても、今日の仕事の最後の仕上げって事だからな!ミサイルや砲弾は飛んで来るけど、ちょちょ〜っと行って、ちょちょ〜っと解体してくるだけだからな!」

 

「朝飯前です、マスター!」

 

「ははっ!アリス・・・お前がいると負ける気がしないよ!」

 

「当たり前です!なんて言ったって、私のコアを作ったのは、マスターなんですから!」

 

膝の上に座りながら、チラチラ後ろを気にしながら会話にこたえてくれるアリスの姿は、なんとも幼気な感じがして愛らしく思う。

以前、俺が後ろにいる場合に会話する際、アリスは首を180度回転させて話しかけてきた事があったが、あまりにシュールな姿だったので、もうやめろと命令していた事を思い出す。

 

・・・・・・・・・・

 

「対象まで距離2600m・・・ロックオンされました。」

 

「よしっ!加速する!」

 

「誘導弾、発射されました。」

 

「ハッキング開始!」

 

「はい、マスター!」

 

・・・第17式機動装甲列車、通称17式・・・高火力の列車型機動兵器・・・なんと言っても特徴は主砲のリバイヤキァノンであったが、その他にも16連ミサイルポッドやバルカン砲など、武器構成のスペックが高い。

そして、ミサイルにも種類があり、プログラム誘導機能の中距離ミサイル(誘導弾)が、狙い目であると分析していた。

 

つまりは、誘導弾が17式を離れた時点で、ハッキングして目標を変更させる事が可能なのだ。

 

「ハッキング完了しました!目標は17式、リバイヤキャノン!」

 

発射されたミサイルが180度反転して、今度は17式を目標に向かう・・・相手の武器を使って相手に攻撃する・・・なんとも効率的な戦い方だ。

 

ダァァァァァァーーーーーンッッ!!!

 

しかし、ハッキングした誘導弾が17式に着弾する前に、バルカン砲によって迎撃されてしまう。やはり17式は防衛能力に特化している。

 

だが、迎撃されるのは百も承知だった。

 

「よそ見すんなよ!17式!!」

 

一気に加速させ17式に近付いたエムズの右腕から発射される弾道が、リバイヤキャノンの砲台の先端を掠めた。

 

バァァーーーーーンッッ!!

 

17式本体部分でなく、リバイヤキャノン砲台の先を狙ったショットガンが命令した。

 

「命中しました!これで、リバイヤキャノンは使用不能になりました!」

 

「よしっ!一旦、距離を取る。気付かれてないか!?」

 

「え、えっと・・・今、車輪と地面が擦れる跡で補足されました!」

 

「回避ーーー!!」

 

ダァァァァァァーーーーーンッッ!!

 

ギリギリの所で回避して距離を引き離す・・・まず、第一の目標であるリバイヤキャノンの機能停止は達成した。

 

ここまで、17式に接近できたのはもちろん理由ある。

 

「もう、意味がないか・・・よしっ、アリス・・・ステルスコーティングを解除!」

 

「はい、マスター!」

 

・・・ステルスコーティング・・・拡張世界(オーグリアリティ)を使って物体を透明化する機能・・・これは、先程まで使っていた17式の専売特許ではない。

最後のアタックに備え、急造ではあったがアリスと俺でエムズにステルスコーティング機能を備え付けたのだ。

 

「技術者を、舐めるなよ!!」

 

相手が機械である以上、俺は元研究所職員、電脳工学の技術者としての戦い方が出来る。

 

「リバイヤキャノンは使用不可・・・ミサイルはハッキングされるので撃てない・・・さぁ・・・どうしますか!?中富博士・・・!?」

俺は、17式のコアに移植された中富博士の電脳に語る。

 

ブライアさんの話によると、中富博士の電脳の機能は停止されているそうだったが、中富博士が歩んだ記憶と希望が、17式のコアにフィードバックされているのではないかという事だった。だからこうして、暴走事件を引き起こしている。

 

「ここは、もうサシで勝負するしかないですよね!!」

 

「マスター、誰に向けて話してるんですか?」

 

「17式・・・中富博士にだよ!俺の願望をね!」

 

「でも、マスターのお望み通りになりそうですよ。ミサイルのロックはキャンセルされています。ですが、バックパックが破壊されていますので、この機体もそろそろ限界が近付いています。」

 

「そうか・・・じゃあ、次が最後ってわけだな。」

 

「はい、そう言う事です。」

 

「それじゃあ。行くか!!ラストアタックに!!」

 

「はいっ!!マスター!!」

 

俺は、エムズを加速させる・・・

 

WEB小説 拡張された世界 〜第一章18〜

対犯罪者用戦闘重兵器車両EMZ-03(エムズ)・・・損傷率74%の現状だけあって流石に機体の至る部分で、不具合が生じている。

 

「その不具合を踏まえた上でシステム構築してますから、心配御無用です!」

だが、アリスからは頼もしい返事が返ってくる。

 

「マスター、左右に走らせてみて下さい!」

アリスの指示通りに機体を左右に旋回させながら移動してみる。

 

「すげぇぇぇーーッ!なんだろう・・・ぬるぬる動く!」

 驚く事に先程までとは、全く別の機体反応を見せてくれる・・・

 

「次のモーションに移る迄の待機時間を、限りなくゼロに近付ける為、予め動きをフライングさせています!」

 

「ちょっと待て!それって、俺が次にどう動かすか予測してるのか?」

 

「はい、先程の戦闘時に収集したマスターの行動操作パターンを基に予測演算させています。」

 

・・・つまりは、予測微行動システム・・・先回りした行動を機体に自動的にさせている訳か・・・

 

「それに、なんだ!この画面は!?」

 

モニターには、画面を覆い隠してしまうような文字情報が溢れている・・・先程までとは全く違う、モニターに映る対象物の様々な情報をリアルタイムで書き出すシステムだとアリスが説明してくれた。

 

「何処からこんな情報を!?」

 

「レールライン本社、周辺の住基管理システム、オーグセキュリティ・・・などに現在ハッキングをかけて、あらゆる情報をこのエムズに集積しています!」

 

何か大変危険な事をしているような気がするが、状況が状況なだけに許してくれるはず・・・だと思う・・・

 

「・・・それにですね!マスターの呼吸や息づかいに合わせた操作性能、マスターの体調、筋肉の硬直具合、柔軟度に合わせた機体反応をチューニングしています!」

 

「・・・アッ、アリス・・・お前・・・」

 

何から何まで至れり尽くせりのシステムをアリスは作ってくれたようだが・・・

 

「でも、呼吸や息づかいって?何処でそんな計測してるんだ!?」

 

「はい、マスターの心拍を計測する為に、こうして密着してるんですよ!いくら密着してるからと言って、エロい事考えないで下さいね!」

 

「てっ!・・・てめぇ・・・じゃあ、俺の体調って言うけど、そんなのわかんのか!?」

 

「さっき、ヘッドギア付けてたじゃないですか〜!?計測させてもらいました!!」

 

アリスには自立AIを搭載させている。

加えて、俺の恩師、永森博士から託されたバックアップメモリーも取り付けているが、それによる演算処理能力の強化だけが、そのメモリーの効果ではなく、何かとてつもない可能性を秘めているように思えた。

 

「お前が凄いってことは・・・よ〜くわかったよ!わかったけど、お前・・・管理者の俺が知らない所で、ちょくちょくチューンナップしてるよね・・・!?」 

 

「はてっ・・・?なんの事でしょうか!?ヨクワカリマセン・・・」

 と、バレバレの嘘をつくアリスをポンと小突く。まあ、こいつのこの向上心が助けになる場合もあるが、永森博士から託された研究が、このアリスなのだから、俺はもっと向上してアリスを管理する・・・見守っていく使命がある。

 

「アリス・・・こんなボロボロになった機体でも、俺はお前といると・・・負ける気がしないんだ。」

 

「はい、私が必ずマスターを勝たせてみせます!!その為の私ですから!!」

  

「ああっ!生きて帰って、祝杯をあげようぜ!」

 

「はい、マスター!!」

 

暴走する列車・・・17式に追いつく為にエムズを加速させる。機体の右腕は吹き飛ばされ応急処置だけ施したガタガタの機体だったが、スピードは落ちていない。

 

「ところで、マスター!?そろそろ出られてはどうでしょうか?」

 

「・・・あぁ。そうだな・・・」

 

出るとは、先程から何回も何回も通信が入っている事・・・ガン無視を決め込んでいたが、通信先の相手はわかっている・・・

 

こちら、エムズ一号機!!」

 

『  悟  !  !  !  』

 

通信に出た途端・・・オーグセキュリティE-03部課長、俺の大学時代の友人、笠原晶子から間髪入れずに怒られる・・・先程のデジャブのようだった。

 

「やっ、やぁ・・・久しぶり!」

 

『やぁじゃない!!悟、あなたがやろうとしている事、今すぐやめなさい!!』

 

彼女にはガン無視していたので無理もないが、かなり御立腹の様子・・・

 

「ブライアさんは無事だから、心配しないでくれ!」

 

『知ってる!!言いたいのは、民間人のあなたが勝手にオーグセキュリティの所有機体を操作して動かせている事・・・自分が何をしてるのか、わかってるの!?』

 

「あぁ、わかってる!!晶子、お前を助けようとしてるんだ!17式・・・お前らとドンパチやったら自爆するぞ!」

 

『ブライアから聞いたわ。今、私もそちらへ向かってる。だから、余計な事しないで!』

 

「いいや、それは出来ない!君ら03部は電脳系事件を主に扱う部署みたいだけど、元研究員の俺から言わせれば、まだまだ素人だ。対機械系スキルは、俺やこいつアリスの足元にも及ばないぞ!」

 

 『何をするつもりなの?』

 

「ええっと・・・プロの犯行・・・」

 

『悟、、、いい加減にしないと・・・」

 

「いやいや、自爆もさせず、被害も最小限に抑えて事件を解決してみせる!俺とアリスとでな!」

 

 『駄目!!悟・・・あなたはあくまで民間人でしょ!!そんなの許されない!!』

 

「許してももらおうとは思わない・・・でもな、ブライアさんから頼まれたんだ。お前の力になってくれって!!」

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

・・・17式への1回目のアタック前・・・

湖の真ん中で待ち構えていた時・・・

 

「ブライアさんは何故、オーグセキュリティに入ったんですか!?」

ブライアさんの経歴について以前話をした事もあったが、深くは聞いた事がなかった。

 

「確か、オーグセキュリティに来る前は、施設警備会社でしたよね?」

 

「そうだ!まぁ、その会社は今のオーグセキュリティに入る準備段階みたいなものだったかな。」

 

「そうでしたか・・・じゃあその前は?」

 

「オーグアーミー地球方面軍に所属していたんだ。」

 

・・・オーグアーミーとは、この世界の軍隊機関のような存在だ。治安維持、災害処理、そして軍事行動といったオーグセキュリティとはまた違う役割を担う機関だった。しかし、所属隊員の95%が機械、ロボットであり、残り5%が擬態化した人間に構成されていたが、その5%の中にブライアさんが含まれていたとの事だ。

 

「オーグアーミーでは、俺達のような人間は宇宙に上がらせてもらえなかった。毎日ただ宇宙から送られてくるエアコンや空気調整機の修理ばかりしていたよ。あの時までは・・・」

 

「あの時って・・・ッ!!エリア22暴動事件の事ですか?」

 

「そうだ。」

 

・・・エリア22暴動事件・・・

今から3年前、地球上、リアース 22-16から19エリアの広範囲の地域で起きた大暴動事件である。

エリア22は元々リアースによる地球の統治管理に反抗的な地域であったが、ある時同時多発テロが起こり、それを発端に他の地域からも反リアース的な組織が集まってくるようになった。そして、その流れは一気に地域住民の蜂起にも繋がり、リアース統治以降最大の暴動事件が発生したのである。

 

「あの時、俺達地球方面軍は16から19迄のエリアを完全封鎖するようにと命令を受け、それに従った。何百キロに及ぶバリケードがはられ、中からも外からも虫一匹も通すなという命令だった。」

 

「その後、何があったんですか?」

 

「宇宙にから、黒いカーテンが落ちて来たんだ。」

 

・・・ブライアさんの説明によると、その言葉通り・・・バリケードの内側に向けて宇宙から黒いカーテンのような物体が降ろされたそうだ。

 

 

 

WEB小説 拡張された世界 〜第一章17〜

 

「アリス!ワイヤーを引いてブライアさんを回収!!」

 

「はい!」

 

エムズとブライアさんを繋いでいたワイヤーを巻き上げ、ブライアさんを車両から引き落とす・・・転げるように車両の外に放り出されたブライアさんの身体はそのまま湖に向けて引きずられていく・・・

 

「ブライアさんの所へ急ぐぞ!」

 

「はい、マスター!」

 

それから17式のレーダーに捕捉されないよう距離を調整しながらエムズを動かし、ブライアさんを回収する。

 

・・・ 湖の畔で横たわったブライアさんを介抱する為、俺とアリスはエムズを降りた。

 

「ブライアさん!」

 

「よぉ・・・修理屋・・・」

引きつった表情で挨拶するブライアさんだか、喋っているのが奇跡な程、その状態が酷かった。彼の左胸より下がごっそり無くなっていたからだ。

 

「修理屋・・・擬態の体はいいぞ・・・こんな状態でも、電脳さえやられてなければまだ生きている・・・」

 

「わかりました!わかりましたから、考えておきます!!支局に連絡して救護班も呼んでます。到着するまでの間応急処置しますので、じっとしてて下さい!」

 

擬態化された人間の体は、表面は人の皮膚細胞で覆われているものの、内部のほとんどは機械で構成されている。

内部機器の破片やケーブルの切断等で無残な状態になっているが、外せる所は外し、繋げる所は繋ぐ・・・これをするだけでも、暴発の恐れや体内電流の不全を解消する事が出来る。

 

俺とアリスは、エムズのコクピットに乗せてあった処置道具を使い応急処置に取り掛かる。

 

「修理屋・・・作業しながらでいいから、聞いてくれ・・・」

 

「わかりました!」

 

「・・・さっきのあの車内の老夫婦は、中富博士と彼の奥さんだ・・・後、17式の制御コンピュータには、中富博士の電脳が移植されている・・・」

 

「えっ!!!???」

 

「限定拡張された車両内に入ってみたらわかった・・・中富博士の意思が伝わってきたように思う・・・」

 

ブライアさんが言うように、限定拡張された空間に実際に入る事により、その演出元の意識や思いをごく僅かに共有出来る事がある。

ブライアさんの電脳と17式に搭載された中富博士の電脳とが限定拡張を通して共鳴したと考えられる。

 

「後・・・中富博士はあの時、奥さんと何か話をしていただろう・・・あれは、この旅が終われば、一緒に行こうって言っていた・・・」

 

「行くって・・・何処へですか!?」

 

「おそらく・・・列車の暴走が止まったら・・・17式は自爆するつもりだ・・・」

 

「えぇぇ!!!!!」

 

ブライアさんは車両内に入って、中富博士の色々な意思を読み取ったに違いない。その中から、今必要な事を掻い摘んで話してくれる。

 

「・・・だから、修理屋・・・頼みがある・・・笠原課長達を守ってくれ・・・」

 

「もちろんです!」

 

「今から・・・作戦を伝える・・・」

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

・・・ブライアさんに一通りの応急処置を施した。

 

「ブライアさん、待っていて下さい!必ず勝利の報告を届けてみせます!」

 

「・・・あぁ・・・でも、こんなこと民間人にやらせるわけにはいかないんだけどな・・・任せた・・・」

 

ブライアさんはそのまま目を閉じて休む・・・擬態とはいえ、体への外傷は電脳に大きな負荷を与えていたのにもかかわらず、気力でここまで作戦を伝えてくれた・・・そして、俺に託してくれたのだから、ここは何としてもやり切らなければならない。

 

「アリス!!」

 

「はい、マスター!」

 

「今から、エムズに乗り込んで、もう一度17式にアタックを仕掛けるんだけど、勝利確率を計算してもらえるか?」

 

「はい!ズバリ4%です!」

 

「ヘっへ・・・やるじゃん!ゼロじゃないんだな!?」

 

「はい、現在の機体損傷率や装備状況、17式の武器スペックから割り出した確率です!」

 

・・・4/100とは、ちょっとどころの厳しさではないが、17式が自爆しようとしている事を考えると、この場を引くなど選択肢にはない。

 

「マスター!!」

 

「なんだ、アリス!?」

 

「確かに4%と言いましたが、この確率を100%まで上げてみせましょうか?」

 

「はぁっ!?」

一瞬、アリスが何を言ってるのかわからなかった。

 

「だから!私がマスターに勝利をもたらせましょうかと言う事です!」

 

「お前・・・すごい自信だなぁ・・・?」

 

「私はマスターのアシストロボットです!だからマスターを勝利へ導くのは当然の事です!」

 

ロボットだからかもしれないが、アリスはなんの躊躇いもなく勝利を確信したような口調で俺に問いかける。そして、手を差し伸べてくる・・・そんな光景は、天使に手を引かれているのか、死神に魂を吸われているのかのどちらかわからなかった・・・どちらにしても死ぬという事なのか・・・

 

「アリス、何の根拠もないけど、お前の提案を受け入れるよ!!俺を勝利へ導いてくれ!!」

 

「はいっ!マスター!」

 

・・・そして、俺とアリスはエムズに乗り込んだ。向かうは第17式機動装甲列車だ。

 

「で、具体的にどうするつもりなんだ!?」

 

 「はい、先程の戦闘で、マスターのパイロットとしての基本情報はラーニングしました!機体を動かす時のクセも含めてです。」

 

「うん・・・それで・・・?」

 

「その情報を元に機体のシステム系統を一新します!このエムズをマスターと私だけの機体にするんです!」

 

それからアリスの説明によると、俺のパイロットとしての腕前、クセ、スキルに合わせた操作機能にシステムを変換し、最大限の効率、効果を発揮する為のシステムナビゲートを構築すると共に、エネミー解析による予測演算を行う事だった。今ひとつよくわからなかったが、試してみればわかるだろう。

 

「マスター、失礼します・・・」

 

その後、突然アリスがコクピットに座る俺の膝の上に座ってきた。

 

「おい・・・アリス・・・何やってんの?」

 

「マスターの目線に一番近い場所から情報を観測する為です!これだけでも、性能はグンと上がるんですよ!」

 

「ま、まぁ、わからないでもないけど・・・お前の頭が邪魔で見え辛いんですけど・・・!?」

 

「えっ?ちょっと待って下さい!」

 

「おいっ!ゴソゴソと動くなっ!おいっ!」

 

「ひぃゃっ!マスターのエッチ!!」

 

「てめぇ・・言わせておけば!!!」

 

 ・・・今から死地へ向かおうというのに、こんな所でイチャイチャしている場合ではない・・・

 

「これでいいだろ!?」

 

「はいっ!」

 

「じゃあ、行くか!!」

 

「はい、マスター!」

 

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・・・向かうは第17式機動装甲列車・・・俺達はエムズは発進させる・・・