8mgの小説ブログ

WEB小説(ちょっと挿絵)のブログです。ブログ形式だと順番的に少し読みにくいかもですが、一章ごとに完成したら、別サイトにアップしたいと考えています。※このサイトはリンクフリーです。

拡張された世界

WEB小説『拡張された世界』更新中:バッドエンド後の未来を舞台とした主人公♂とそのアシストロボット♀とのイチャラブSF小説ですm(_ _)m

【期間限定掲載】画面の向こうのプロレスラー(第2話)

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まあでも、リングコスチュームという名のほとんどエ〇衣装の女の子に誘われたら、試合中であれどこでも男はその誘惑に負け、飛び込んで仕舞うものである。いやっ、これは決して(誘惑に)負けた訳ではなく、男として当然の選択・・・自然の摂理なのである。

 

 

・・・だから、こうして地面をのたうち回っている鬼頭さんを俺はどこまでも支持する・・・

 

 

 

助走をつけて体ごと地面へ叩きつけようと・・・ランニング・ボディ・プレスを仕掛けジャンプした鬼頭に、膝を立てて応戦したリリー・・・彼女の膝は鬼頭の脇腹をめり込むように捉え、彼女自身も落下する鬼頭と共に地面に叩きつけられた・・・のだが、いち早く起き上ったリリーとは対照的に鬼頭は地面をのたうち回っている・・・両者のダメージの差は明らかだった。

 

 

「早く起き上がってください!今度は私からいきますね♡」

そう言いながら、軽やかなステップを踏みながらリング上(砂の上)を旋回するように移動するリリー・・・まさに獲物の周りを旋回する鷲のようだ。

 

「くそ、コラぁーーーっ!!」

よろよろと起き上る鬼頭・・・そんな彼が体制を整える前に、待ってましたとばかりに襲い掛かるリリー。

 

「バキィィィーーーッ!!ドカァーーーッ!!バシンッ!!バキッ!!ダァンッ!!ボコォォンッ!!バァァンッ!!バシンッ!!バキッ!!バキッ!!バキッ!!バキッ!!バキッ!!ドゴォォーーーンッ!!」

洒落にならないようなリリーの猛攻が鬼頭を襲う。後ろ回し蹴りを皮切りに、ハイキック、ローキック、パンチ、エルボーと相手に有無も言わせぬ連打を繰り出すリリー・・・鬼頭は最初の打撃をもろに喰らってからはガードを固めて防戦一方だ。そのガードの上から引き剥がさんとするリリーの猛攻・・・体術、とりわけ打撃においては、本物のプロレスラーをも圧倒するリリーの強さは本物と言って間違いないだろう。

 

「アハッ!!ヤァーーーッ!!ウフフゥ~!!ムフッ!!イヒィッ!!」

猛攻を仕掛けて間のリリーは満面の笑みで、発する言葉、掛け声もちょっとイヤらしい(ちょっと所ではない)息遣いと声が視聴者の興奮をさらに加速させる。

 

正直このライブストリーミングを視聴する時は、”一人での視聴”をオススメする。普通でもリリーの際どい恰好とその躍動する体を見ていると、さも〇V動画を見ているかのような気分になるのに、試合が進んで来るとさらにそれが加速し、リリーの行動ひとつひとつが(エロ方面の)精神を揺さぶってくる。男同士でも一緒に視聴するのは抵抗を覚える。視聴している所を母ちゃんに見つかったりでもしたら、それこそ記憶抹消ものである。

 

「バキィィィーーーーーーーーーッ!!」

両腕ガードの上から右足ハイキックを叩き込むリリー。鬼頭の腕や体のあちこちが真っ赤に腫れ上がっている。彼はガードを固めながらしゃがみこんで、足払いを狙う戦い方に切り替えていた。

直立状態のままリリーと打撃で戦えば負けると判断したのだろう・・・それって、本物のプロレスラーが女の子相手に体術ではかなわないと認めたようなことである・・・プライドは無いのか!?と言いたい所だが、鬼頭の判断は正しい。変にいきり立ってリリーと撃ち合おうとしてボコボコにされた男達をこれまで100人以上も見てきたのだ。

 

 

寝転んだ状態でリリーの脚を狙いにいく鬼頭・・・さながら猪木vsモハメド・アリ戦を彷彿させる様相だ。

 

「もうっ!!鬼頭さん!!だいしゅきボールドッ!!」

妙な掛け声でジャンプ一番・・・鬼頭の体へ飛び込んでいくリリー。これリリーの作戦である。女性としての誘惑を駆使しながら相手の懐へ飛び込む・・・だいしゅき△〇□

・・・という言葉が一瞬の鬼頭の集中力を狂わせ、その隙間を逃さないリリーは寝技で鬼頭と組み合った状態から抑え込んでパスガードを極める・・・ブラジリアン柔術の相手のホールド崩しまで会得している彼女には頭が下がる・・・そこからスイープ(マウントを取り返し)・・・マウントパンチ・・・と流れるように視聴する画面上では技の説明テロップが入る。

 

「バシンッ!!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!」

マウントポジションから鬼頭に向かって左右のパンチの雨を浴びせかけるリリー。それを必死に顔面ブロックしてガードする鬼頭。

 

「キスして、キスぅ~ッ!!」

いきなりパンチを止めて、鬼頭の顔に自分の顔を近づけるリリー。彼女の言葉通りにキス顔を近づいてくるリリーに一瞬戸惑う鬼頭・・・その隙を見せた瞬間、素早く体を動かして右腕を掴むとそのまま腕ひしぎ十字固めへと持ち込むリリー・・・前のラウンドと同じ状況だ。

体を伸ばして強烈なダメージを鬼頭に与えるとすぐにリリーは締めを解く・・・「うわぁぁ・・・」と悲鳴をあげて横たわる鬼頭の顔面にめがけて、素早く起き上ったリリーはジャンプする。

 

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「ダァァァァーーーーーーーーーーーーンッ!!」

・・・ヒップドロップが炸裂する・・・

 

リリーのお尻と地面に頭をサンドイッチされた鬼頭の目は完全にイっちゃている・・・やばいって、このままじゃ(鬼頭さんが)死ぬって!!試合の行方よりも、放送事故にならないかどうか不安になってきた。

既に勝敗は決していた・・・が、鬼頭サイドのセコンドからはギブアップの合図もないので試合は続行している。本物のプロ団体に所属するレスラーが、どこの馬の骨とも言えない素人の女子レスラー相手に圧倒され敗北するのは、受け入れがたい事実であるだろう。どんな言い訳も無意味だろう。そんな諸事情すら凌駕してしまうのが、これまでずっと追っかけてきた我らがリリーなのである。

 

 

「大丈夫っ!大丈夫ですよね!うん、大丈夫♡」

意識朦朧(もうろう)の鬼頭に、勝手に問いかけ、勝手に納得したリリーは、そのまま鬼頭の体を引き起こし、持ち上げようとする・・・おそらくアルゼンチンバックブリーカーの態勢に持ち込もうとしている・・・もうほんと止めたげて!!彼のライフはゼロよ!!と言いたい所だ。

 

 

「カァァーーーーンッッッ!!」

 

 

しかし、ここで3ラウンドの終了を告げるゴングが鳴り響いた。

 

 

 

「エェェェェ~~~~~!!嘘でしょ!!」

少し声を荒げて悔しがるリリー・・・しかし、その態勢は鬼頭の顔面をおっぱいで挟み込みながら立ち尽くしている風景・・・

 

 

そこ代わってくれという妬みと、もう解放してあげてという鬼頭さんへの同情が折り重なった変な感情が沸き起こっていた。

 

「うっ・・・うぅ・・・」

ブツブツ言いながら自陣へ戻るリリーとは対照的に、地面を這いつくばりながら戻る鬼頭・・・まさかこんな試合になるとは誰が予想しただろうか。 鬼頭淳弥というプロレスラーを追うファンにとっては災いの日であろう。次のラウンドでは鬼頭ファンにとってあまりにショッキングな映像になりそうなことは確かだ。

 

 

 

〜  第4ラウンド  〜 

 

 

 

・・・運命の第4ラウンドが始まる・・・

 

がんばれ鬼頭!!男を見せろ!!あんなリリーとか言うク〇女になんか負けるな!!

 

いつの間にか鬼頭を応援している自分がいた。リリーを追っかけるファンとしては、大体最後の方は、リリーを悪役側に回して楽しむことが通なのである。

 

・・・こんなエロい恰好で、こんなエッチなボディで、こんなに可愛くて、こんなにエロい性格な女の子に、全身全霊を掛けて負けてしまうなんて・・・

 

・・・被虐的な感情がMAXを振り切って快楽へと変わってしまう・・・このライブストリーミングを視聴する者にとっては最高潮の状況が今、リアルタイムで進行しているのである。

 

「アルゼンチンやめっ!!フランケンッ!!」

そう言い放つ・・・次に繰り出す技はフランケンシュタイナーであることを宣言するリリー・・・相手に向かって飛びかかり、両足で頭部を挟み込んでバク宙のような動きで相手の体ごとかっさらって地面に叩きつける跳び技である。

 

そして、ステップを踏みながら一気に加速して、フラフラになった鬼頭に飛び掛かるリリー・・・もの凄い跳躍力で鬼頭の顔に乗りかかろうとするが、鬼頭はリリーの両足を掴む・・・

 

「ぬぁぁーーーーーーーーっ!!!」

もう駄目かと思われた鬼頭がここに来て意地を見せる。リリーを抱え上げ・・・前方に背中から叩き落す!!

 

「ダァァァーーーーーーーーーンンッ!!!」

最後の力を振り絞った渾身のボディスラムが炸裂する!!

 

うぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!!激アツ展開ぃぃぃーーーーーーーーーっ!!

思わずモニタの前で立ち上がってしまった!

プロレスラー 鬼頭淳弥・・・プロである神髄をそこに見たような気分だ。

 

リリーを地面に叩きつけた鬼頭はそのままフォールへと持ち込む。

「 ワ ン ! ! ツ ー ! ! 」

まさかの意地の大逆転が見られたかと思ったが、リリーは2カウントで鬼頭のフォールを返した。もろにボディスラムを決められたのにそれも返してしまうのかというこれももの凄い熱い展開だ。

 

リリーと鬼頭・・・両者地面に寝そべった態勢でこの戦いが壮絶なものであることをモニタから溢れ出るくらいに漂わせる。

  

 

「ハッハッハーーー!!ハッハッハーーーッッ!!ハッハッハーーーッッ!!」

なんで彼女はこんなにもトチ狂っていて、なんでこんなにも魅力的なのだろうか・・・

 

 

南国の空を見上げながら笑い出すリリー・・・はっきり言ってこれはやべー奴だ。こんな人が一般にいたら裸足で逃げ出すレベルだが、今は試合中・・・視聴する者ならわかる今の状況・・・笑いながら飛び起きるリリー・・・鬼頭は全ての力を出し切った・・・その結果が今の状況。出し切った上でなお立ち上がって高笑うリリーの存在。高笑いながらもアドレナリンに満たされたリリーの表情は視聴者の心を引き付ける・・・視聴者だけではない。対戦する鬼頭の心をも引き付け、完全に心を折れさせたのだ。

 

「フランケンッ!!」

そう言いながらリリーは鬼頭を引き起こす。もはや抵抗する素振りも見せない鬼頭はなすがままに立ち上がる・・・もはや、白旗が上がっているのがモニタに透けて見える。

 

 

「ダァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンンッ!!!」

全てを出し切って真っ白になった鬼頭の頭を両足で挟み込んで、それからはなすがままに吹き飛ばされ、叩きつけられる・・・リリーの宣言通り、フランケンシュタイナーの完遂だ。

 

投げ飛ばされた鬼頭は起き上ることが出来ない。彼の体は既に限界を超えている。後はリリーがフォールするだけだ・・・だけなのだが・・・

 

 

「ねぇ鬼頭さん!?鬼頭さんは私の事好きだよね!?ねっ!?」

狂気と言う言葉を具現化したもの・・・それがリリーだろう。そう言わずにいられないのがこれから行われることだ。リリーを追いかけてきたファンはそれを“死体蹴り”と呼ぶ。体力がゼロになった相手の残り僅かな精神さえも根こそぎ奪っていくリリーのフィニッシュ技・・・それが通称死体蹴りなのである。

 

「フッフーン♫・・・よっと!」

鼻歌を歌いながら、既に行動不能。起き上がることもままならなくなった鬼頭の首を太股の裏とふくらはぎとて挟み込み(この時フォール状態にならないように鬼頭の肩を微妙に浮かせる手の込よう)そして、なんの躊躇いもなくリリーは左手を鬼頭のボクサーパンツの中に突っ込んで、鬼頭の”アレ”を扱き出す!!

 

 

「反則っ!!ファイブカウントまでっ!オーケイ!?」

なんでカタコトの日本語?と突っ込みを入れたくなるような口調でレフェリーを牽制するリリー・・・もう何が放送事故でそうでないか判断基準の感覚が麻痺してくる映像が全世界へ向けてリアルタイムでストリーミングビューされている・・・ただ一言言えるのは、こんな状況下においても、精密なカメラアングルで鬼頭さんのイチモツを見せないようにして試合風景を捉えるカメラマンが神だ!!

 

 

スリーカウントで決めて見せる!!」

なにを決めるんですか?目的の趣旨変わってませんか?

 

「レフェリー!!カウントっ!!」

 鬼頭の両肩が地面につくように押さえつけながら、レエフェリーにカウントするように促すリリー・・・その彼女の左手は今なお鬼頭の”アレ”をがっちり掴み捉えながら、上下への動きを加速させている。とっても楽しげなリリーの表情がもう絶望しか感じない。

 

 

「   ワ ン ! !       ツ ー ! !  」

 

 

 

「 う わ ぁ ぁ ぁ ぁ ・ ・ ・ ・ ・ 」

息も絶え絶えの鬼頭が弱々しい悲鳴を上げる。

 

 

 

「 ス リ ー ー ー ッ ッ ッ ッ ! ! ! ! ! 」

 

 

 

「 カン カン カン カン カン ッッ !! 」

 

 

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試合終了・・・スリーカウントの合図と共に特設リングの周りに備え付けられていたスプリンクラーから一斉に噴水が上がる。試合終了の演出である・・・。

 

 

 

 

「ドピューッ!!ビリュリュリュリューーーーッッ!!」

そして、”鬼頭のスプリンクラー”からも大量の噴水が上がる。

 

 

 

 

「ドピューッ!!ビリュリュリュリューーーーッッ!!」

そして、そして、その試合を視聴する”俺のスプリンクラー”からも少量の噴水が上がる。

 

 

 

 

「ドピューッ!!ビリュリュリュリューーーーッッ!!」

そして、そして、そして、俺だけではなく、今日のこの試合を視聴していた”世界各地の数多くの同士達のスプリンクラー”からも噴水が上がった・・・ことだろう。

 

 

 

 

 

 

4ラウンド、2分52秒・・・リリーのフォール勝ちでこの壮絶な戦いの幕が降りた。

 

 

 

 

 

勝利のガッツポーズと笑顔をカメラに送るリリー・・・その向こうで身も心もコテンパンにされた本物のプロレスラー鬼頭淳弥が昇天、失神した状態で横たわっている。おそらく鬼頭さんはこんな負け方今迄したことがないだろうと思う。メンタルが大丈夫なのか、ホント心配になる。

 

 

 

そして、画面はエンディングセレモニーへと移行しているが、はっきり言ってエンディングなんて全く頭に入ってこない。

リリーの試合は観戦した者も試合後はドッと疲れる・・・そう俺は、今日のこの試合・・・正直を言いますと・・・”4回”・・・イキました。

 

 

 

 

申し遅れました。今日のこの試合を実況解説させて頂いた”鏡恭助(かがみきょうすけ)”と言います。

 

俺は都内の外語大学に通う拙い大学生でありますが、世界一有名なプロレスラーのリリーを最大級に愛する男です!!そのリリー愛は誰にも負けないと自負するものであります。

 

毎日毎日リリーチャンネルを見ては・・・×××してます!!

 

リリーチャンネルを見始めてからは、他の物を使って×××したことはありません!!

 

まぁ、こんなことリリーファンにとっては当たり前のことなので、何の説得力もありませんが、リリーという憧れの存在・・・モニターの向こうの憧れの存在とお近づきになりたい。生涯をかけてでも叶えたい俺の夢が叶ったなら、そこにはどんな世界が待ち受けるのだろう・・・この物語はそんなifが叶ってしまった物語である。

 

 

 

 

 

 

・・・リリーvs鬼頭の壮絶な試合から一夜明けた今日・・・

 

もはや身も心もクタクタな状態の俺・・・。結局昨日の晩、冷静になってからもう2回程試合を見直した。見逃し配信ということで、リリーチャンネルではその日の間に2回再放送される・・・そして1週間後には過去試合として再視聴出来るシステムとなっている。その試合を振り返りながら、カラっ空になるまで”アレ”をやり続けたので、俺はボロボロになっていた。

 

今日は日曜日・・・バイトもなく、明日は大学の講義もあるので今日は体を休めよう・・・昨日の試合を思い出しながら朽ち果てる・・・そんなどうしようもない休日を過ごした。

 

 

 

 

 

・・・週明けの月曜日・・・大学構内を颯爽と歩く俺・・・気分もよくテンションも高い。一昨日のリリーの試合の余韻がまだ残っている。

 

 

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「おーい、月島!!」

「あっ、鏡くん。おはよう!」

 

俺は前を歩く女子に声をかける。この子は月島理科…俺と同じ国際コミュニケーション科の2階生で俺が唯一一目を置く女子である。

 

「おはよう月島!!あれっ?月島、日焼けした?」

「えっ?あ、あぁ、バイトで日焼けしたのかも・・・?」

「そうか!いやっ、そんなことより一昨日のリリーの試合見たか!?」

「えっ、えぇーと、まあ、一応・・・」

 

そう、俺がリリーの話を唯一出来る女子なのである。何人かの男友達の間ではリリーネタで盛り上がることもあるが、女子にこのリリーの話をすると十中八九ドン引きされる・・・理由は言うまでもないが、この月島理科という同級生は俺のリリーへの熱いトークを顔色一つも変えず、むしろどんどん食らいついてくれるくらい乗って話をしてくれる。

 

「スゲー試合だったな!モノホンのプロレスラーを圧倒しちまうんだから!リリーの強さは本物だぜ!!俺、感動しちまったよ!」

「そ、そうだね。」

 

男同士でリリーの話になると色々と性癖が衝突して、険悪なムードになることもあるが、男女間ならそういう心配も無く、俺が一方的に話せるので月島は俺にとって貴重な存在だ。

 

「俺がリリーのファンだと女子に言うとドン引きされるんだけど、月島、お前だけはわかってくれて嬉しいよ!」

「う、うん。」

「リリー=(イコール)男のチ○ポをこねくり回す変態痴女って言う認識だからなー女子は・・・」

「・・・・・・」

「いやっ、そうじゃないんだよ!リリーは美人で、スタイル抜群で、強くて・・・とにかく最高なんだよ!」

「そ、そうなんだ」

「俺が生きてきた中で、一番の理想の女性、それがリリーなんだよ!あー、一度でいいから彼女に会ってみたいよー!!マジで!」

「会えるといいね!」

「そう、会ってリリーの胸を鷲掴みしたい!」

「・・・・・・」

 

俺の会話に、表情豊かにこたえてくれる月島のリアクションはまるで自分のことかのように心がこもったもので、会話する俺も凄く話甲斐のある相手だ。

 

「でも、一昨日の試合・・・南国のプライベートビーチで試合とか、かなりイカすシチュエーションだったな!リリーは試合終了後はバカンスを楽しんでるのかな?」

「いやっ、それがビーチの貸し出しにも時間制限があって、試合終了後に直ぐに撤収、そして空港へ・・・って一体何してんだろ私って話で・・・」

「んっ???」

「・・・と言う裏話をSNSで呟いてたと思うよっ!リリーが!リリーがね!」

「そうかー、月島、お前ってちょくちょくリリーの小ネタ知ってるよな!もしかしたら、俺よりもリリーに詳しいんじゃない?」

「い、いやっ、そんな事ないと思うよ。ははっ・・・」

「いやっ、なかなかのもんだと思うよ!正直、関心するよ。」

「あ、ありがとう。」

「お前のその出しゃばらない性格も、俺の話になんか乗ってくれる寛大さも含めて、月島のそう言うとこ結構好きだぜ!」

「えっ!?あっ、あの・・・」

「!?って、イヤイヤそう言う意味じゃなくて、いつも俺の話に構ってくれてありがとうって意味で!!」

「あっ、そ、そう言う事ね・・・」

 

月島・・・この子はきっと俺の事が好きなのだろう(うぬぼれ)・・・正直、こんな俺の話を聞いてくれる存在は他にはいない。あまりに貴重すぎる存在なのだが・・・

 

「悪いな月島・・・俺にはもう既に心に決めた人がいるんだ。リリーと言う・・・寝ても起きても彼女の事しか考えられない最愛の存在がいるから、もしお前が俺との可能性を少しでも感じるなら、お前を不幸にさせてしまうと思う・・・だから、俺との可能性は忘れてくれ!」

「う、うん、大丈夫だよ!」

俺の正直な気持ちを伝えた。それでも月島とは今迄通りの関係でいたいという気持ちもあるが、リリーを愛する自分の気持ちに嘘はつきたくない!!

 

「ごめんな月島・・・でもそれだけ俺はリリーの事を愛しているんだ!どうせ死ぬなら、リリーに殺されて死んでもいいと思うくらい!」

「い、いや、人は殺めた事はありませんから!」

「んっ!?どうした、月島?」

「いっ、いや、なんでもない。」

「ホントに一度でいいから、リリーに会いたい。ボコボコにされてもそれが本望だよ!」

「そ、そうなんだ・・・リリーと戦いたいの?」

「もちろんだ!そして玉砕したい!」

「ふーん・・・」

「んっ!?どうした、月島??」

「い、いやっ!何でもない・・・けど・・・た、例えば、リリーの配信サイトの下に問い合わせメールフォームがあるよね。そこに練習相手募集してませんか?みたいな感じでメールを送ってみたら・・・どうかな・・・?」

「???」

「ほっ、ほらリリーって、正体を隠してるから、普段練習する時とかどうしてるのかなーと思って・・・もしかしたら実践形式の練習相手がいなくて困ってるんじゃないかなーって・・・」

「そうか・・・練習相手、スパーリング相手っつう事か、月島ー!!お前すごいよ!!その発想は無かった!!次の講義終わったらすぐにダメ元でメール送ってみるよ!なんか・・・スゲーワクワクしてきた!んじゃ行くわ!!月島、ありがとな!!」

「うん!じゃあね、鏡くん!」

 

「・・・・・・」

 

会話の捉え方によっては、遠回しに月島を振ってしまったのではないか。そうして彼女を悲しませてしまうのではないかという恐れもあったが、どうやらそんな雰囲気はなさそうで、今まで通りの関係でいられそうだ!これからも月島とリリーの話が出来る。それだけではなく、月島理科・・・彼女から面白い提案もあった。俺は上機嫌で、感謝を込めて彼女のその提案に乗っ掛かる事を決めた。

 

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【期間限定掲載】画面の向こうのプロレスラー(第1話)

 あなたはこの世界で一番有名な現役プロレスラーを知っているだろうか?

それは間違いなく「リリー」だと断言出来るだろう!

 

推定年齢20歳前後と思われる覆面女子レスラー「リリー(LILLY)」・・・彼女の情報は何も公開されておらず、正確に言うと彼女は特定のプロレス団体には所属していないので、アマチュアレスラーと言える。しかし、彼女の知名度は全世界を網羅し、専属のスポンサーも付いているのだ。

 

彼女が戦う舞台はwebストリーム上だ。観客もいない彼女と対戦者だけの試合を毎回ライブ配信して活動するネット上のレスラーだ。彼女のデビュー戦は、どこかのお寺の本堂で、よくわからないおっさんとのプロレス生配信から始まった。そしてデビューから今日、彼女の戦績は数えて164連勝を達成している。

 

164連勝・・・まさに人気の秘密はこの圧倒的な強さにある。

 

華奢な彼女が、世の中のあらゆる男達と対戦し、懸命に戦い、苦戦したり、圧倒したり…彼女の成長と共に毎回様々な男達をフルボッコにする様をライブで生中継するこの映像コンテンツは、試合の回数が増えるにつれ、フォロアー数も上昇し、有料の配信サイトであるにもかかわらず、視聴者数はうなぎ登りで増え続けた。

そして現在では、世界有数の映像コンテンツへと成り上がった。彼女が試合をライブ配信する際、世界中の何百万人の視聴者が刮目するのだ。これが、今世界で一番有名な現役プロレスラー「リリー」の全容だ。

 

まあ、御託を並べるよりも、百聞は一見に如かず・・・見てみるのが一番手っ取り早い方法だ。この後、生配信が予定されている。

 

リリーライブストリーミング”第165戦目”・・・リリーチャンネルという月額制の有料サイトにて生配信されるミックスファイトだ。もう間もなく始まるので是非見てほしい・・・

 

 

 

〜 LILLY's Live Streaming Fight PART 165 〜

 

 

 「こんにちは〜!!ライブストーミングをご視聴の皆様、リリーです!!今日もご視聴頂きありがとうございます!!」

 今日もおなじみのマスクとフェイスペイントシール、スポーツビキニ・・・という可愛くセクシーなコスチュームで明るくオープニングの挨拶をする彼女が、今世界で一番ホットなプロレスラー『リリー』ある。

 

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「今日私は南国○○○島のプライベートビーチに来ています。・・・えっ!?これですか??これは、こんなに素敵なビーチなのに泳いじゃダメですかと聞いただけで、”泳いじゃ駄目。何の為にここに来たんだ。自覚はあるのか。意識低すぎ。責任感無さ過ぎ。それだから君は・・・”とか一方的に言われて、ムカついたのでお仕置きしている所です。当リリーチャンネルをご視聴の皆さんは気にしないで下さいね!」

いやいや、めちゃくちゃ気になるし、スタッフの彼・・・正直羨ましい・・・リリーにヘッドロックされているのは、桑山君と呼ばれるリリーチャンネルのスタッフで、これまでの配信でもしばしば登場する。運営の意向だからと無理難題をリリーに吹っかけてはリリーに反撃・お仕置きされるおなじみのスタッフさんである。

 

「告知していた通り、今日の対戦相手は、なんとあのBWW!!本物のプロレス団体に所属する人気レスラー鬼頭淳弥さんです!まずは対戦に至る迄の経緯を綴ったVTRをどうぞ!」

 ・・・リリーの振りで画面は用意されていたVTRに切り替わる。リリーチャンネルの生配信はかなり優秀な編集構成になっている。使用言語は基本的に日本語だが、リアルタイムで英語をはじめとする三言語へ同時翻訳される仕組みになっている。もちろんリリー自身も語学は堪能で五カ国語を話せるらしい・・・こういった世界を意識したコンテンツづくりが海外の国でもヒットの要因だろう。

 

・・・画面は鬼頭選手の紹介、プロモーション映像が流れた後、(BBWのとある試合)試合後の独占インタビュー風景が映し出される・・・

 「んっ!!リリー!?誰だそれ、ふざけてんのか!!はっ倒すぞオラー!!」

そう言いながら、もう既にインタビュースタッフ(桑山君)をはっ倒している鬼頭選手・・・明らかに茶番だが、鬼頭選手もノリノリで煽ってくれている。

「とりあえずネットで有名なだけで、実績はゼロでしょ!!ちょーし乗ってるらしいから、ガツンといくぜ!首を洗って待ってろよリリー、シャーオラー!!(カメラ目線)」

まあ、視聴者が見たいのはリリーが果敢に戦う姿なので早くしろと言いたい所だが、こういった前振りのVTRを入れて、視聴者をじらしてくるのもリリーチャンネルの演出の一つである。

 

・・・VTRが終わり、再び対戦の舞台となるプライベートビーチの風景が映し出される。Live Streaming Fight・・・澄みきった青い海。銀色の砂に六角形の間仕切りのラインが引かれただけの簡単なリング。この現場に居合わせるのは、対戦者同士と両陣営のセコンドスタッフ、試合をジャッジするレフェリー、そして数名の撮影スタッフのみで、観客も実況もいない・・・波の音だけがBGMとして流れる少しシュールな現場と言えるだろう。しかし、この物足りなさを払拭するような圧倒的なファイトを魅せるのが我らがリリーの真骨頂だ。

リリーの得意とするスタイルは、アクロバティックな飛び技系だ。生配信のカメラからはみ出すぐらいの縦横無尽に動き回るいつものような試合が出来れば、リリーは強敵”鬼頭淳弥(きとうじゅんや)”を倒す事が出来るだろう。正直、今日の試合・・・もしかしたら、リリーが初めて負けるのでは・・・と一抹の不安を抱えながら俺は視聴しているが、果たしてリリーは俺の不安を払拭してくれるのだろうか・・・

 

ラウンドワン!!ファイト!!」

 両対戦者の簡単な紹介があった後、いよいよ試合開始のゴングが鳴り響いた。

 

ちなみに、このLive Streaming Fightの試合は1ラウンド5分、ラウンドの間に1分間のインターバルをおいた5ラウンド制のルールである。

30分、60分1本勝負が主流のBWWプロレスとは異なるルール上での試合となるので、鬼頭はそのルールに対応出来るのかもひとつの見所だ。

 

 

 〜  第1ラウンド  〜

 

 

試合開始のゴングが鳴り響いたが、両者ともに動かず、その場で相手の出方を伺っている。

試合開始からガンガン攻めていくリリーも、流石に今日の対戦相手は強敵もあってか、じっくりと間合いを計りながら相手との距離を詰めていく様子。

対して、鬼頭も迂闊に前には出ず、リリーの攻勢に受けて立つといった所だ。彼はBWW(プロレス団体)の中では体格は大きい方ではない。しかし、リリーと比べるとパワーや体格差では鬼頭が完全に圧倒している。対して、リリーはスピードとテクニックでどれだけ体格差を埋めるかが鍵となる。

「シャー、オラー!!」

と言う掛け声とともに一気に間合いを詰める鬼頭・・・リリーと取っ組み合いの形になった。両者のファーストコンタクトである。

「シャー、オラー、シャー!!」

取っ組み合いの形から、鬼頭が腕力の違いを見せつけるようにリリーを一気に押し込む・・・たまらず、リリーは片足を地面に付き不利な体勢になる。とここで、鬼頭は得意の絞め技にかかろうとした瞬間・・・

 

「ダァァァーンッ!」

 

転倒したのは鬼頭の方だった。一瞬何が起きたのかわからなかったが、画面下に「両手取り四方投げ」と表示されている。

このリリーチャンネルには、リリーや対戦者が繰り出した技名をリアルタイム表示(技が終わってから5秒程で表示)してくれる演出がなされている。

これはすごい機能で、プロレスに付いて無知でド素人だった俺が、何回も見ているうちに繰り出した技名をだいたいわかるようになってきた。リリーチャンネルが入り口だけど、他のプロレスの試合も見るようになってハマり、まあニワカファンくらいにまでは昇格したかと思う。

 

そして、先程の画面表示「両手取り四方投げ」のように、リリーは他の格闘技の技もちょくちょく入れてくる。彼女がインタビューでこたえていたように『私の格闘スタイルはオムニバス』との事だ。この両手取り四方投げ合気道の技であり、リリーは様々な格闘スタイルをミックスして戦うので、何が起こるかわからない。ワクワクするような戦いを魅せてくれるとともに対戦相手にとっては戦略が立てにくく、かなり厄介や存在である。

 

さて、試合に戻るが鬼頭が得意とする関節技に持っていこうとした瞬間、リリーは手の上下の動きで鬼頭からの圧力を捌き、そのまま転倒させた。この両手取り四方投げは鬼頭が得意の関節技を決めにいこうとすれば、カウンターが待ってるぞと言うリリーからの警告の合図であるかのようだった。

 

既に両者は起き上がり、再び距離を取る。そして、もう一度鬼頭は距離を詰め、関節技を仕掛けにいこうとするが、「バタンッ!!」と先程と同じようにリリーに捌かれ投げられてしまう。

投げられた鬼頭はその場に座り込みながら『ほうほう!』と大きく頷くパフォーマンスを見せる。『さっきのはマグレではなかったみたい』と言っているかのような余裕の表情だ。流石にモノホンのプロレスラーだけあって、これまでの対戦者とは一味違う。試合の魅せ方を知っている。何をどう思いながら戦っているのか、画面を通しても伝わってくるような少し大袈裟なくらいがちょうどいいパフォーマンスだ。

 

ラリアットいくぞ、オラー!!」

次に立ち上がって右腕をぐるぐる回すパフォーマンスを見せる鬼頭は大きくな声で叫ぶ。

これに対して、リリーはその場で小刻みにジャンプを始める。これは、鬼頭のラリアット宣言に対して、真正面から受けて立つというメッセージのようだ。

そして、両者 お互いの相手に向けてダッシュする・・・

 

「オオオオオォォーーーーーーーッッッ!!!」

 思わず声が出てしまった。ダッシュしお互いが交差しようとした瞬間、リリーは鬼頭の頭に向けて大きくジャンプ・・・鬼頭の頭を両足で挟み込むと、鬼頭を軸に旋回するような動きを見せ、そのまま鬼頭を投げ飛ばしたのだ。

 

”ヘッドシザーズ・ホイップ”という表示・・・

かなりアクロバティックな技だ。こういう技をどこかで見た事があったような・・・確か、ベトナムかどこかの国の格闘技パフォーマンスであったような・・・

 

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「ダァァァーーーーーンッ!」

投げ飛ばされた鬼頭はそのまま膝を付いた状態で、両手を上げて『すごい!!やるじゃないか!!』というパフォーマンス。まだまだ余裕の表情だが、おそらく鬼頭は想像していたよりも、遥かに強いリリーに対戦相手として絶賛しているようだ。何回か技を受けてみて、相手がどれだけ強いのか推し量っていたと思われるが、これでようやく鬼頭も本気モードになるのだろうか。

 

 「ラリアットいくぞ、オラー!!」

再び立ち上がって、右手を回す鬼頭・・・また同じ事をやろうと言うのか!?

両者また同じようにお互いに向けてダッシュする・・・

 

しかし、一瞬ダッシュを止めてタイミングを外す鬼頭・・・ジャンプしようとしたリリーは一瞬躊躇して、隙が生まれてしまう。

「ドオォォォーーーーーンッ!」

躊躇してリリーに向けて、鬼頭は足の裏を見せるように右足を押し込む”ケンカキック”を繰り出した。当然、リリーは勢いに体ごと持っていかれ後方へ吹っ飛ばされる。

 

吹き飛ばされたリリーはそのまま膝を付いた状態で、両手を上げて先程の鬼頭のパフォーマンスのように振る舞う・・・『ラリアットするんじゃなかったの?』という ” Why? ” という表情とともに、リリーもまだまだ余裕があることをアピールする。

 

 両者ともにまだまだこれからといった所だ。

 

 再び両者は近付き、取っ組み合いの状態となる・・・リリーは鬼頭の頭に飛びつこうとするが、鬼頭が力づくでリリーの体を押さえ込みながら持ち上げ、そして地面に叩き付けようとする・・・が、リリーは上半身全体を使って回転するように鬼頭の胸元にしがみつき、そのまま足を交差させて鬼頭の手を払いのけ、投げ飛ばそうとする・・・が、鬼頭は踏ん張りをきかせ、上半身を低くかがみ込ませながら、地を這うような回し蹴り”水面蹴り” を繰り出したが、リリーはバク転するように後方へジャンプして蹴りをかわす・・・そして、今度は鬼頭に向かって前転するように”浴びせ蹴り”をお見舞いする・・・が、鬼頭は何とか右手で顔をブロックしてガードする。リリーの蹴り勢いが強く後ろへ押し出された鬼頭だが、きっちりガードしている・・・

 

「・・・す、すげぇ・・・」

と言う言葉が思わずこぼれるような、著しく攻守が入れ替わる、激しい攻防が繰り広げられた。何よりも(爆乳だけど)華奢な体の女の子が、本物のプロレスラー相手に、互角、いやそれ以上の戦いを見せている非日常の光景が、このモニターの向こうで繰り広げられ、それに完全に魅了されている自分がいる。自分だけではない、この生配信を見ている何百万人の視聴者の多くがこの戦いに引き込まれていることだろう。

 

リリーと鬼頭の両者は、再び身構える・・・

 

「ダァァァーーーーーンッ!」

 

鬼頭は体を回転させながら”ローリングバックブロー”を打ち込もうとしたが、それに対して、リリーも回転しながら大きくジャンプ・・・遠心力を効かせた”ローリングソバット”を繰り出し、見事に鬼頭の喉元に命中させた。ローリングバックブローは一旦相手を視界から外すのでリスクを伴うが、それが裏目に出てしまった格好だ。

 

「ごほぉっっ!!」

喉元に蹴りを打ち込まれ、これには鬼頭も堪らず苦痛の表情を見せるが・・・

 

 

「カァァーーーーンッッッ!!」

 

 

しかし、ここで1ラウンドの終了を告げるゴングが鳴り響いた。

 

 

・・・ 濃密な5分間 ・・・

 

静かな立ち上がりで始まった試合だったが、時間の経過につれ、試合もヒートアップしたが、リリーの健闘には驚くばかりだ。普段の試合ではもっと最初から怒濤の攻撃を見せるが、今日は”相手にペースを握らせない的確な攻め”と言った感じだ。本気でこの試合を勝ちにきているのがわかる。対して、鬼頭は手探りの為のラウンドと言った感じだったが、ラウンド終了間際のローリングソバットキックはかなりのダメージだったように思えた。 

 

 

  〜  第2ラウンド  〜

 

 

「シャー、オラー、シャー!!」

開始のゴングと共にいきなり雄叫びを上げる鬼頭・・・これは力の鼓舞なのか 、それともただの強がりなのか・・・

 

強烈なタックルでリリーを掴みに掛かる鬼頭だったが、その下を潜るようにリリーは体勢を低くした状態から起き上がる力を利用して、鬼頭の下あごを突き上げるような頭突き…”ヘッドアッパー”をお見舞いする。

 

「ガァァーーーーンッッッ!!」

続けて、リリーはその場でバク転しながら体ごとぶつけるラウンディンクボディプレスを決める。

「バキィィィィッ!」 

そして畳み掛けるようにリリーの右足を大きく振り上げたハイキックが鬼頭に炸裂する。

 

「ウォッ!!!!」

流石に大きく仰け反ってしまう鬼頭だったが、リリーの連続攻撃に只翻弄されるばかりでは完全に試合の主導権を持っていかれる事もわかっているようで、ここが踏ん張り時だと言わんばかりに、強烈なラリアットで応戦する。

 

「ガァァーーーーンッッ!!」

鬼頭の強烈のラリアットがリリーの胸元に命中する。リリーは体がくの字になるような態勢のまま吹っ飛ばされる。続けて、鬼頭はバックステップを取ってから、追撃のランニングエルボーを繰り出す。

ドガァァーーーーンッッ!!」

先程のラリアットと同じように、体がくの字になりながら、地面に叩き付けられるリリー。おそらく今日の試合で、リリーにとって一番のピンチだろう。

 

「シャー、オラー!!」

鬼頭は一気に試合を決めるつもりで、リリーの体を持ち上げ、パワースラムの態勢に入る。リリーを抱えたまま地面に叩き付け、そのままフォールに持ち込むつもりだ。

「!!!!!!!!」

しかし、リリーは体が宙に浮いた状態であるにも関わらず、鬼頭の足にしがみつきながら必死に抵抗すると、バランスを崩した鬼頭の隙を突いて、足を振り子のように使いながらそのまま体ごと鬼頭を押し倒した。

「ダァァァーーーーンッッ!!」

あれだけの攻撃を喰らいながら反撃に持ち込むとは、リリーは信じられない体力を持っている・・・いやっそうではなく、ラリアットやエルボーの攻撃を体をくの字に曲げてダメージを受け流したのではないかと考えられる。

 

「うおぉぁぁーーーッッ!!!」

画面上では、リリーが鬼頭を押し倒したその態勢から、腕ひしぎ十字固めへと素早く移行している状況が映し出される。ピンチから一転・・・完全に彼女の絞め技が極り、鬼頭の表情が歪む。一方、リリーは先程までの劣勢が嘘であるかのように鬼頭の右手を胸に挟み込み、笑顔まで見せている。

 

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 「しっ、シシャー、おっ、オラー!!」

 どこかぎこちなく、鬼頭の口癖まで真似をするリリー。余裕の表情だ。

 

「くっ・・・くそぉぉぉぁぁーーーーっっ!!!」

鬼頭は既に伸びきっていた腕を力づくで押し込み、なんとか両手で自分の腕をロックした。そして、そのまま力づくで起き上がった。これにはリリーも驚きの表情で、すぐに締めを解き鬼頭の腕を振りほどきながら地面に着地する。持ち上げられたまま、パワーボムを喰らわないように警戒したようだ。

 

それにしても今の場面を見るだけで、やはりリリーと鬼頭ではパワーの違いが歴然であったが、それを差し引いてもこの試合のリリーの善戦ぶりには感嘆するしかなかった。

 

 

「カァァーーーーンッッッ!!」

 

 

ここで2ラウンドの終了を告げるゴングが鳴り響く。

 

 

『あぶねぇ・・・』と言った表情だろうか?鬼頭は右腕をぐるぐると回しながらストレッチするように自陣へ戻る。

 

一方、ゴングの音と共にその場にぺたりと座り込んでいたリリーだったが・・・

 

「ハッハッハーーー!!ハッハッハーーーッッ!!ハッハッハーーーッッ!!」

いきなりトチ狂ったようにその場で笑い出す彼女・・・

 

「・・・失礼しました・・・。」

非礼を詫びるかのように、彼女は冷静な声で謝罪し、自陣に戻っていく・・・

 

しかし、その表情は少し半笑いのようでいて、妖婉さも漂う先程までとは全く違うものとなっていた。

 

 

 

 

キターーーーーーーー(゜∀゜)ーーーーーーーー!!

 

 

 

 

 

これまでリリーを追いかけてきたファンなら誰でもわかるような状況だ。

 

あの何かをやらかしそうな座った目・・・。

 

トチ狂った言動・・・。

 

そして、何故か画面からでも伝わってしまうにじみ出るようなエロス・・・。

 

これが本物のリリーとも言える『狂人化モード』になった彼女が現れた。

 

おそらく、リリーは多重人格レスラーなのだろう。一度カウンセリング受けた方がいいって言ってやりたい。

 

  

「ヒャッハーーー!!」という言葉が似合う、狂人化したリリー・・・どうしてこうなったかと言うと、いつもの事なのだが、試合を進めていくうちに彼女は興奮してきて、ある一定の興奮度ラインをこえるとこのように第二の人格とも言える狂人化したリリーとなってしまうのだ。

 

狂人化した彼女は、それまでとどう違うかについては、まず行動に躊躇いがなくなり、めちゃくちゃ強くなる事だ。そして、エロい事も平気でしてくる・・・男性の急所攻撃も余裕で、反則を疑われても5カウント内はお咎め無しだと主張する理性を持った行動なので余計にたちが悪い。そして、とにかくエロい。サービス精神満点で、自分の体を余す所無く使った物理&精神攻撃を雨あられのように浴びせ、どんな相手(男)でも蹂躙してしまうのが、狂人化したリリーである。

 

・・・果たして、狂人化した彼女は、本物のプロレスラー鬼頭をも飲み込んでしまうのか・・・そういった中で、いよいよ次のラウンドのゴングが鳴る。

 

 

 

 

  〜  第3ラウンド  〜

 

 

 

 

開始のゴングとともに、スッと横に寝転ぶリリー・・・そしてグラビアアイドルのようなポーズを取る・・・これには、鬼頭もポカンとした表情で立ち尽す。

 

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「ねぇねぇ、鬼頭さん〜!来て〜!!はやくぅ〜!!」

ゴロンと寝そべりながら、鬼頭を誘おうとするリリー・・・挑発するにしてもあまりに無防備な体勢で・・・しかも今は試合中である。彼女の行動はあまりに常軌を逸していた。

 

 でもね・・・これは違うんだ!今迄リリーを追いかけてきた者ならわかる・・・これは明らかなリリーの罠だ!

 

通称・・・”釣り野伏”・・・ファンサイトの中でそう呼ばれるリリーの戦い方だ。

 釣り野伏と言えば、戦国大名島津家が得意とする戦法で、囮部隊が敗走を装い追撃してきた相手部隊を伏兵部隊が包囲殲滅する戦法だが、今に置き換えると、あまりに無防備な体勢で敵を挑発するリリー・・・挑発に乗って懐に飛び込んできた相手を、包み込んで殲滅する・・・それがリリーの必殺とも言えるカウンタースタイルだ。

 

当然、そのことは鬼頭も研究済みだろう・・・でもね・・・あの・・・可愛くて・・・バインバインなリリーが誘ってくれている・・・男だったらわかってても火中に飛び込むよな!!!鬼頭さん!!!

 

「ふざけるなっ!!シャー、オラー、シャー!!」

助走をつけてリリーへ飛び込もうとする鬼頭・・・男の中の男だ!!それでこそ!!俺達の鬼頭だ!!

 

 

えぇっとちなみに、リリーの釣り野伏カウンターを喰らった相手はそこからボコボコに・・・されるんです・・・

 

 

<次の話へ進む> 

 

 

WEB小説 拡張された世界 〜第一章25〜

アリスの主電源を落としてからは、じっと狭い空間の中で身体の痛みに耐えながら、助けが来るのを待つだけだった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

この狭い空間に閉じ込められるのは、生まれて二回目だ。

 

一回目は、壊滅した国際宇宙研究ラボから脱出した時…

 

まあその時は、脱出ポッドの中で致命傷を負った俺は気絶していた訳だったが…

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

それから、俺とアリスはオーグセキュリティのレスキューチームに助けられ、ようやく外に出る事が出来たが、日が暮れて辺りはすっかり暗くなり、粉々になったエムズの残骸が今尚燃え上がり、辺りを照らしていた。

 

それから、アリスに突き刺さっていた破片も取り除いてもらった。

 

主電源が落ち、ぴくりとも反応しないアリス・・・。

彼女が身を張って守ってくれたおかげで、俺はこうして生きている。

 

アリスの状態は、頭内にあるコアが破壊されていないので、一種の故障のようなものであり、状態異常のひとつにすぎないが、損傷の有様を見ているとやはり心が痛む。

 

 

だからこそ、早くアリスを元の状態に直したい!

憎まれ口を叩き合いながら楽しく過ごす、元の日常へ戻りたい。

 

 

・・・でも、こんな大事件に携わってしまったのだから、やるべき事はたくさんあり過ぎる。

 結果的には、暴走列車を止めるという目的は達成出来たのだが、目の前の事だけを見ていた為、これからの事など一切考えていなかった。

 

レスキューチームとともに、現場に到着した今回の事件の担当責任者でもある晶子は、レスキューや検証官など各層の担当員に指示を出し、事件処理の指揮をしていたが、一通り指示を終えて、ストレッチャーに乗せられ搬送中の俺の所へやってきた・・・。

 

「ひっ、久しぶり・・・」

 

「悟!!!」

 

・・・ガンッッッッ!!・・・

 

搬送中の俺の脇腹に向かって、さらに追い討ちをかけるように振り下ろされる晶子の拳…。

 

そして、倒れ掛かるように俺の腹部に晶子のヘッドバッドが加えられる…。

 

その晶子の目には、大量の涙が溢れ出していた。

 

 

 

 「なんでみんなっ・・・勝手な事ばかりして・・・私をおいていくのよ!!」

 ”おいていく”という言葉が印象的だった。今回の事件解決に向けて、任務を無視して単独行動を行った事に対しての戒めだと思うが、晶子がかつて助けられなかったたくさんの命の事も含まれているように感じた。”おいていく”という事だから、晶子・・・お前も・・・

 

「おいていく訳ないだろ!!」

俺は全身の力を振り絞って晶子に怒鳴るように反論する。

「アリス、ブライヤさんだって、傷は負ったが生きている!俺なんか、皆が体をはってくれたおかげで、ほとんど無傷だ。お前を差し置いて行動した事は償わなければと思ってる。だけど、俺達がとった行動は最悪の結果を回避する為の最良の方法だったと思う。」

今回の軍事車両暴走事件の被害は、エムズ(対犯罪者用戦闘重兵器車両EMZ-03)の大破や、オーグセキュリティー捜査員の負傷や殉職もあり、多大な損害があった事は間違いないのだが、一般人の被害は避けられる事が出来た。

 

「それに俺は、この命をかけて成し遂げたい事がある!だから、それが成されるまでは何が何でも生きてやるつもりだ!晶子っ、これからもお前の力を使ってでも醜く生きてやる!・・・だから、お前も・・・死にたがりはやめろ!」

 

”死”というワードに反応してか、晶子は我に返るように落ち着きを取り戻し、大きく深呼吸する。そして…

 

「何よ、馬鹿みたい!命をかけて成し遂げたい事って何?」

 

「それは言わない!!他の人には説明はしないけど、俺には協力しろ!!どうだ、図々しいだろっ!?」

 

 「うんっ!最低ね!どうせ、アリスちゃんがらみの事だと思うけど・・・」

 

晶子とは付き合いも長い、俺の浅はかな考えは当然見透かされていた。でも、掘り下げて追求してくる事もないのが、彼女の優しい性格だった。

 

 「こんな最低な男だけど、俺が成し遂げたい目標はお前もこの世界も助ける!絶対に助けるから、これからもよろしく!!」

 

 「うんっ!よろしく!」

夕日に照らされた彼女の笑顔は、なんとも言えない魅力的な顔だった。

どうせ拡張現実のこの世界が起こした演出だろう。そう、一時的な演出で、この世界の女性全てを魅力的に見せるフィルターがかかっているに違いない。俺は自分に強く言い聞かせる。

 

「どうしたの?」

 

「い、いやっ、何でもない!」

 

「そうっ、でも今回の罪はちゃんと償ってもらうから!!」

 

「ですよね・・・」

 

電子不純わいせつ容疑であなたをこれから拘束します。

 

・・・ああ…確か、そんな容疑(アンドロイドに対する数々の嫌がらせ行為)で護送されるという設定になっていた事を思い出した。その護送車両がエムズで、護送中に暴走(実際は暴走していない)して、暴走車両を止めた・・・こんな不自然な理由でまかり通ってしまうのか不安しかない。

晶子は大怪我を負って搬送されるブライヤさんから、今回の単独行動の詳細を聞いたとの事だ(おそらくブライヤさんも相当怒られた?これから怒られるのだろう。)

 

そして、今回の軍事車両暴走事件の詳細を、オーグセキュリティーだけで処理するとは思われない。こんな大きな規模の大事件をこの世界を管理するコンピュータ”リアース”がスルーしてくれるはずはない事は明白だった。

実際、リアースの直系調査機関がこの現場へ向かっていると言う。

だから、こうして先手をうって、俺に容疑をかけて拘束する事で、リアースの目が俺に向かないように便宜を図ってくれたのだった。

 

エムズを軍事車両と対等に戦えるようにカスタマイズした事がバレると、それこそオーグセキュリティーの重大な問題となってしう。ここは、オーグセキュリティーの組織で隠蔽工作するしかないのだ。

 

 

こうして、リアースの目から逃れるようにそそくさと俺はオーグセキュリティー内の病院へ送り込まれ、診察後『電子不純わいせつ』で逮捕・拘束される事となった・・・。

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

こうして、世間を騒がせた列車暴走事件(軍用車両暴走事件)は幕を閉じる事となった。

 

事件の真相は首謀者…中富博士の電脳AIの暴走と世間には発表されることになったが、博士を暴走事件へと掻き立てた黒幕がいるという事実を。そしてその黒幕は、俺達人間とロボットとの繋がりを断ち切ろうという思想を持っている事実を公には発表しなかった。

 

それは、あまりに曖昧で確証の無い内容だったからだ。また、それが事実であればこの世界を揺るがす大問題である事だったからだ。

 

俺がこれからしようとしている事。俺の育ての親、永森博士がしようとしていた事との真逆の思想を持った者がこの世界にいる事を認識しなければならない。認識した上で行動しなければならない。

だから、必ず今後どこかでその思想を持つ者と対峙する事は間違いないと感じていた。

 

 

 

・・・でも今は、俺を助けてくれた、あのちょっとムカつく事もあるけど、すごく愛おしいあのアシスト型ロボットを復活させる事が何よりもの優先事項だった。

 

 

WEB小説 拡張された世界 〜第一章24〜

 

 ・・・どれくらいの時間が経過したのだろうか・・・

 

・・・暗い暗い空間の中、赤みを帯びた光が差し込んでいた・・・

 

 

焦げ臭い臭いとジリジリといった電気音が低くなり響いている。

 

・・・ 俺 は 生 き て た の か ・・・

 

全身鞭打ち状態で体を動かす事はできないが、外傷もほとんどないと自覚できた。

 

あの爆発の中…目の前のスパークとともに全身が上下に揺さぶられ…記憶を失った。

 

それでも、エムズ対犯罪者用戦闘重兵器車両EMZ-03コクピット部分は無事であり、奇跡的に助かったという事だった。

 

 

「大丈夫ですか?マスター!?」

 

目の前に座るアリスが、声を掛けてくる。

 

「ああ、おかげさまで・・・てっ!!お前っ!!??」

 

 

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「申し訳ありません。ミサイルの72%はハッキング出来たのですが、残りは間に合いませんでした。ミサイル破片の先端部がコクピットの前板を貫通してきましたが、なんとか守りきりました。」

 

 あの瞬間・・・アリスは俺に抱きつくように反転して、身を挺して助けてくれ・・・その前にはミサイルをハッキングし、軌道も逸らし爆発も間逃れた・・・今、こうして生きているのは、こいつ・・・アリスがとんでもない処理で俺を危険から遠ざけようとしてくれたということだ・・・

 

「おい・・・ちょっとまってくれよ・・・」

 

 俺はアリスの背中部分に手を回す・・・破片はアリスの背中にめり込み・・・というか貫通していないのが奇跡なほどの状態だった。

 

「アリス。なんでお前はそうやってしゃべる事が出来るんだ。お前の損傷率・・・限界だろ!!」

 

「私のコアは機体損傷率99.7%まで稼働出来ますので、ご安心下さい・・・マスター!」

 

・・・なぜ、こいつ…アリスはわざわざ俺の膝上に乗りかかってきたのか・・・その意味がようやくわかった。アリスは初めから最悪のケースを想定して、その対策を立てていたという事だ。

 

「馬鹿野郎!!お前の損傷は、俺の損傷でもあるんだから、もっと自分を労って行動するように!」

 

「はい、マスター!!」

 

「アリス・・・」

 

「なんですか、マスター?」

 

「ありがとう!お前がいなかったら今回は乗り切れなかった。お前がいないと、俺は何も出来ないよ!」

 

「マスター!!うれしいです!!マスターに飛びつきたいのですが、今動けない状況です・・・マスター、私を引っこ抜いてもらっていいですか?」

 

「いやいやいやいや・・・今のこの体勢じゃ無理だ!!俺も鞭打ち状態で動けないし・・・とりあえず、アリス・・・お前の主電源を落とせ・・・暴発したらどうする!?」

 

「はい・・・マスター・・・でも電源落としたら、次マスターとしゃべれるまでどれくらいかかりますか?すぐにオンしてくれますか?」

 

「いやっ、とりあえずお前の修理しないといけない!全身フルチェンジしないといけないレベルだけど、そんな事はしない!!絶対にお前を直してやるからな!!」

 

「はい、ありがとうございます。マスター!!じゃあ、よろしくお願いします。」

 

そう言いながら、アリスは主電源部分のある右耳アンテナ部分のロックを解除してくれ・・・パカッとアンテナ部分を開いて主電源を落とす。

 

危険領域の為、アリスの全身は至る箇所で発光していたが、その発光が止まる・・・

 

 

「・・・マスター・・・早く・・・会いたいです・・・」

 

そう言い残して、アリスの主電源は落ちた・・・後は、このコクピットから俺とアリスを救出してもらうために救護隊を待つだけだった・・・。

 

 

WEB小説 拡張された世界 〜第一章23〜

エムズに乗り込んだ俺とアリス・・・相変わらず彼女はここがが定位置だと言わんばかりに、俺の膝に座ってくる。

 

「満身創痍だと思うけど、もう少しだけ頑張って動いてくれ!」

俺はそうエムズに呼びかける。損傷率は79%・・・はっきり言って爆発炎上を引き起こしかねない状況だ。

 

「マスター!私には・・・!?」

 

「あぁ、アリス・・・まぁ、ガンバレ!」

 

「ブー!なんですか、そのやる気のない激励は!!」

 

「冗談だよ!アリス・・・当然頼りにしてるよ!お前も俺もここで踏ん張らないと、お互いこんがりとエクスプロージョンしてしまうからな!」

 

「はいでも、そうはさせません!マスターは私が必ず守ります!」

 

「ありがとう、アリス!ほんとお前は頼りになるAIだよ!」

 

俺とアリスは、最後のミッションについて確認しあった後、残り僅かなエネルギーバックパックを使って、エムズを飛び上がらせた。

 

当然、17式の迎撃ミサイルの照準がエムズに集まるが発射されなかった・・・

 

それは、17式のコア・・・中富博士のAIがプログラムに対して必死に抵抗しているからだった。

 

もうこの世にはいない存在である中富博士。

彼は自分の脳を電脳化して、死亡とともに自分の電脳を17式AIに移植した。

だからと言って、中富博士自身は延命出来た訳ではない。器として電脳を活動させ続ける技術は存在しているが、その電脳の意思・・・つまり人の心まで存在させ続ける技術は、この世界にはない。

 

しかしながら、先程の付随車両内の拡張空間には中富博士の意思がはっきりと存在し、コミュニケーションを取ることすら出来た。

 計算式では説明出来ない事象が、拡張空間で起きたのだ。人の心・魂を映し出す、具現化させる力が拡張空間には存在している。

この現象・・・可能性を研究していたのが、私の恩師、育ての親である永森博士であり、その研究の成果を、バックアップメモリーに集約させ、そのメモリーを備え付けたのが、このアリスである。

 

拡張空間・・・拡張されたこの世界の可能性を追求する上で、俺やアリスが、こんな所で終わってしまう訳にはいかないのだ!!

 

 

 

  

「中富博士!!!」

 

 

 

・・・うまくエムズを17式の上部に着地させた!17式はエムズの着地の衝撃で大きく揺れ、思わず脱線しそうになる。

 

 

・・・と、同時に中富博士のジャミング制御が解け、大量の迎撃ミサイルが発射された・・・ミサイルは数十メートルの位置まで上昇し、こちら対象目標のエムズに向かって飛んでくる。

 

 

・・・「「 間に合えーーーッ!!! 」」俺とアリスは共鳴するように叫びながら、エムズの最後の一手・・・脚部のローラーを切り離し、高熱を帯びた脚部をそのまま17式に突き刺した・・・狙ったのは、中富博士のAIが搭載されているコア部分だった。

 

脚部の高熱で、コア部分を焼き切ったのだ。

 

 ・・・・・・・・・・

 

「目標、完全に沈黙。」

 

「よしっ!!!」

 

「ミサイル来ま・・・」

 

 モニタ−越しに目の前が明るくなる。超大型のスポットライトで照らされたような状態と思った瞬間・・・その後の記憶は覚えていない。

 

 

 

 

 

ドゴォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーンンンッッッッッ!!!

 

ガシャァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーンンンッッッッッ!!!

 

 ドオォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーンンンッッッッッ!!!

 

 

 

 

・・・何十発もの迎撃ミサイルを打ち込まれ、エムズ(対犯罪者用戦闘重兵器車両EMZ-03)は大破した・・・

WEB小説 拡張された世界 〜第一章22〜

前方付随車両の拡張空間内・・・

 

 ♪ ♪ ♪ ・ ・ ・ ♪ ♪ ♪ ・ ・ ・

 

合図の音楽と共に、車両内放送が流れる・・・

 

「間も無く終着駅の0779ステーションエレベーター前に到着します。」

アナウンスと共に駅員に扮した俺(拡張プログラムの擬似映像である)が現れる。

 

「中富様、間も無く終着駅です。乗り換えのご準備は出来ていますか?右前方をご覧下さい!」

示した方向には、天まで延びるようなステーションエレベーターが映り、その先にはプレートが空を自由に行き来している景色が広がる。

 

「中富博士。あなたが提唱したフロンティアライン計画が実現した世界です。」

そう、この車窓から見える景色…拡張空間で見せている世界は、俺とアリスとで急いで作ったプログラムの世界である。この即興プログラムデータを拡張空間に流し込み、その拡張空間の基となったシステムAIに干渉すること(もしくは、対話すること)を『プログラムダイブ』と呼ぶ。

このプログラムダイブを使って、中富博士のAIと対話し、17式の暴走を止めるのが、本作戦の主要目的である。

即興で作った干渉プログラムなので、チグハグな部分もあるが、中富博士のフロンティアライン計画をかなり忠実に映像化させたプログラムだ。

 

「まさか…!」

中富博士の表情が変わる。いやっ、正確に言うと中富博士のAIに何かしらの干渉を与えた証拠だった。

 

「本来は上のプレートは見えなくさせるはずですが、ステーションエレベーター周辺はセキュリティの問題から見せるようにしています。むしろ、これだけの技術の結晶をステルスしてしまうなんて狂気の沙汰ですよー!」

「君は技術者かね…!であれば、もっと多方面からの視野について学びなさい。周辺社会、生活環境への影響など考慮して考えられた計画なのだよ!」

「いいえ!それは言い訳に過ぎません!技術によって解決出来る問題を予算の都合で折り合いを付けた妥協案に過ぎません。」

「君は!失礼だな!」

「いいえ!言わせてもらいます!」

 

…何故か、空間拡張世界の中で、俺と中富博士は口論を初めてしまった。

 

言い争いこそ、真のコミュニケーション!

 

まあ、ひとつ言えるのはプログラムに多大な影響を与えたのは間違いない!

 

「マスター!なんだか楽しそうです!」

アリスの一言で、俺は我に返る。本来の目的を忘れ、中富博士とのディベートに熱中してしまっていた。

 

「博士・・・博士のフロンティアラインに掛ける熱い気持ち、十二分にわかりました!」

「いやいや、君くらい意見をぶつけて来てくれる人は初めてだよ!楽しかった!」

「博士・・・そろそろ、この17式の暴走を止めてもらえませんか?」

俺は本題を切り出す。プログラムに干渉して、暴走を止める!

 

「私は技術者として、弾かれた人間だ。それがずっと不服で生きてきた。でも、今思えば、私は弱い人間だから、当然の結果なんだと思う。」

そう言いながら、中富博士はうつむく…。

 

「どういう事ですか?」

 

・・・中富博士が歩いてきた人生・・・そして、何故列車暴走事件を引き起こしたのかを話してくれる・・・先程、アリスが調べた情報通りだった。しかし、検索情報にはない出来事を話してくれる・・・

 

「・・・そういう事があって、フロンティアライン計画は頓挫し、私もオーグアーミーの駐屯基地に左遷された。それでも、夢は諦め切れず少しでも計画の足しになればと進めてきたが、妻は先に他界し、私も体を壊してしまった。そんな時に、私に生きた証を残さないかと言ってくる者がいたんだ。」

 

「えっ!!」

 

「私が死んだとしても、私が生きて夢見た証は残してくれると言われ、私は心の脆弱さから、お願いしますと承諾してしまったんだ。」

 

「ちょっと待って下さい!博士が電脳の一部を17式に移植したのは、博士の考えじゃなくて別の誰かって事ですか!?」

 

なんと言う事だろうか!今回の暴走事件の容疑者は中富博士のAIだか、暴走に至るまでを誘導させた第三者がいると言う事実が発覚する。

 

「誰に誘導されたんですか!?」

「それはわからない…と言うか、その部分はプログラムから既に消去されてしまっている。それに今走らせている17式の暴走は私の意思では止められなくなっている。加速プログラムが付けられている。」


「加速プログラム!?」

AIにおける電脳より優先される強行型プログラムを加速プログラムと呼ぶ。

 

「ちょっと待って下さい!アリス!博士のコアに接続して、加速プログラムの解除と消去されたデータの再構築は出来るか!?」

 

「はい、マスター!ケーブル接続で可能です!」

 

「博士!コアに接続させてもらえますか?」

 

「それはダメだ!コアに外部干渉が入るだけで、爆発するように設定されている。サルページは出来ない。だから、私のコア部分を焼き切ってくれ!お願いだ!」

 

「焼き切るって、そんな事をしたら・・・」

 

「もう、時間がないんだ!間も無く第17式機動装甲列車は爆発するように、これも加速プログラムが設定されている。」

 

走行が停止すれば爆発すると、ブライアさんがそう言ってが、もっと残酷なプログラムが設定されていたようだ。

 

 「そのロボットで、私のコアだけを焼き切るんだ。そうすれば爆発させずに止められる!なんとか迎撃ミサイルが起動しないように、加速プログラムを押さえ込んでみせる!」

 

「ですが、博士・・・!」

 

「君!名前は・・・?」

 

「月ヶ瀬悟と言います。」

 

「悟くんか・・・たのむ!私を誘導させた者の正体は思い出せないが、その者は、人間と技術・・・人間とロボットとを引き離そうという意思が感じられる。」

 

「人間とロボット・・・とをですか?」

 

「君と君の横にいる彼女とをケンカさせよう・・・そんな感じだ。」

 

・・・人間とロボットとの関係性は色々とシビアな問題だ。今現在の世界は、ロボットであるリアースによって人間は統治されている世界だからだ。

 

「私や君は技術者だからわかると思うが、ロボットやテクノロジーに嫌悪感を抱くなんて皆無だ!」

 

「おっしゃる通りです!そこには夢や期待しかありません!」

 

「ああ、ありがとう、悟くん!君にお願いしたい!私の尻拭いをしてほしい・・・我々と技術との間を引き裂こうとする者を止めてほしい!」

 

「・・・博士・・・。」

中富博士は言葉こそ洒落めいていたが、表情は真剣だった。

 

「今世紀最高峰の技術者様の尻拭いが出来るなんて、こんな名誉な事はありません!」

 

「・・・悟くん・・・。」

 

「謹んで、お引き受け致します!俺とアリスの仲を引き裂こうとする奴なんて、ぶっ潰しますよ!!なあ、アリス!!」

 

「はい、マスター!! でも、マスターの言い寄り方が、少ししつこい所があるので、ちょっと距離をあけてもらえたら助かるかなーって・・・」

 

「おいっ!アリス!!」

 

・・・そうして、俺とアリスは再びエムズ(対犯罪者用戦闘重兵器車両EMZ-03 )に乗り込んだ。

 

狙うのは、暴走する17式のコア部分・・・中富博士のAIだ。

 

 

 

WEB小説 拡張された世界 〜第一章21〜

・・・・・・・・・・・・・・・

 

・・・少し前、最後の作戦にかかる為、ブライアさんと俺とアリスとで作戦会議をしていた時・・・ 

 

「どう言うことですか!?それって、暴走の動力は17式だけど、暴走を誘導してるのは前の車両って事ですか?」

 

「ああ、二両揃って初めて走行する仕組みみたいだ。」

 

・・・ブライアさんが言うには、前方付随車両内の拡張空間に入り込んだ際、中富博士の断片的な記憶を感じたらしい。

 

電脳化した人間には、拡張世界(オーグリアリティ)を通して、別の人間の記憶が流れ込んでくるという不思議な現象がごく稀に起こるという話を聞いた事がある。

そして、今回のケースは、付随車両内という限定的な拡張世界である『空間拡張』内で、その空間を作った中富博士の記憶がブライアさんの電脳内に流れ込んだという訳だ。

 

「マスター、中富博士の周辺情報の集積が完了しました。」

そう言って、アリスは自身の目に搭載されているプロジェクターで、エムズの機体甲板部分に向けて情報を映し出してくれる・・・

 

中富康之、元レールライン開発技術研究所所長・・・数多くのルート開発や車両開発に携わり、彼が64歳の時、彼の集大成である最大プロジェクト『フロンティアライン計画』を打ち立てる。4年越しで認可を得て、開発研究は順調に進むかと思われたが、突然その計画は凍結させられる・・・その後、彼は幽閉されるかのように研究所を追い出され、地球07エリアのオーグアーミー(この世界の軍隊機関)施設へと赴任する。その翌年、彼の妻である中富和子氏が亡くなり、それを追うかのようにその翌年死去ー享年72歳。

 

「オーグアーミーに赴任って、ブライアさん!?」ブライアさんは元オーグアーミー所属だ。

 

「ああ、その頃は、もう辞めていたからわからないけど、なんでオーグアーミーなんだろうか!?それにフロンティアライン計画って??」

 

「確か、聞いた事があります・・・研究資料としてデータベースにも残していたはず・・・アリス、フロンティアライン計画を説明してもらえるか?」

 

「はい、マスター!フロンティアライン計画というのは、レールの上を車両が走るレールラインシステムに対して、レール自体が走るインフラ計画がフロンティアラインです・・・」

 

・・・アリスの説明によれば、フロンティアライン計画とは、まず地上の上に蜘蛛の巣状のもう一層の地表を作り、地球全体を2層構造にする・・・当然、今までの地上は影に覆われてしまうのだが、上の地表をステルスコーティングして見えなくさせる事で、今まで通り、地上に住む人は、なんの変化も感じないまま暮らし、その上の層を使って、自由に人や物が行き来するインフラシステムだ。

ステルスコーティングにより見えなくなった上の層では、蜘蛛の巣状に張られた地表の上を、1×1mの六角形のプレートが自由に動き回る。プレートは何枚も連結させる事が出来、大きさや数問わず運搬することが出来る。

上の層と下の層を繋ぐのが、ステーションエレベーターであり、地球の至る所に出来る事になるが、このステーションエレベーター間を点移動するのがこのフロンティアラインシステムの肝だそうだ。

 

これまでの決められたレールの上を通る形態ではなく、点と点を自由に移動するインフラ形態・・・そんな世界の実現化がフロンティアライン計画だった。

 

「余りに話が壮大過ぎて、付いていけないんだが・・・」ブライアさんが言う通り、計画の規模が大き過ぎる。

 

「でも、上の蜘蛛の巣プレートを構成するブラナ合金という素材が、かなり低コストで調達出来るとかで、ホントに実現出来そうとか、業界でも話題になっていたと思います。」

 

「しかし、計画は凍結された・・・のか。」

 

「恐らくは、その計画は余りにオーバースペックだとリアースに判断されたのではないかと思います。上の層は、その上に乗る人や物を含めて丸ごとステルスコーティングされている・・・これって、見えない所で色んな人や物が地球のどんな地域にも運搬されるって事ですよね。例えば、武器やテロリストが自由に行き来出来る訳で・・・」

フロンティアライン計画の問題点は、そのセキュリティ管理機能に幾つかの問題を抱えていたように記憶している。しかし、リアースとの協力により、それがクリア出来ると中富博士は訴えていたように思う。

 

 

しかし、結局はリアースが拒否したのだ。

 

 

それだけではなく、中富博士はリアースからオーバーテクノロジーを生み出す危険人物に認定され、幽閉される・・・その幽閉先が何故オーグアーミーだったかはわからないが、そのおかげで、彼は17式に触れる事が出来、今回の列車暴走事件に繋がった訳だが・・・

  

「それがな・・・前の車両に乗り込んだ時に見えたのは、中富博士と彼の奥さんだったんだ。」

 

「奥さんですか?」

 

「俺があの車両内で見たのは、レールラインで目的地へと向かって旅をしている中富夫婦だったと思う。」

 

「その目的地とは?」

 

「ステーションエレベーターだと思う。あの時俺は、拡張空間の中で中富博士がそう言ったのを覚えている。」

 

車窓から見える外の景色を楽しみながら旅する老夫婦・・・それが中富夫婦で彼らが向かっていた先はレールラインからフロンティアラインへと移行するインフラシステムを妻に案内しながら、この世界がさらに良い方向へ向かっていけばという中富博士の夢が溢れ出したように、拡張空間を通してブライアさんの中に流れ込んだそうだ。

 

「そうですか!!これは、暴走を止められるかもしれません!!」

僅かな可能性だったが、自信があった。

 

「止められるって、どうやって!?」

 

「中富博士の目的が、奥さんにフロンティアライン計画を見せる事だったとしたら、そのフロンティアライン計画が実現した風景、ステーションエレベーターから上の層まで完成した風景を見せる事が出来れば目的は達成して暴走を終わらせる事が出来るんじゃないでしょうか。」

 

「見せるって、どうやってフロンティアラインを見せるんだ!?」

 

「・・・そこでオーグリアリティ(拡張世界)の出番ですよ!アリス、作れるか?」

 

「はい、問題ありません!」

 

考えた作戦というのは、中富博士が考えたフロンティアライン計画が実現した世界を拡張世界に映し出す事だった。

前方車両の空間拡張にプログラム干渉を加える事で、フロンティアライン計画の実現した世界を見せる。

 

「中富博士の提唱したフロンティアライン計画のプレビューを、今から俺とアリスとで構築します。」

 

「そんな事が出来るのか!?」 

 

 「7、8分程あれば出来ます!今から、エムズで暴走車両へ向かいます。ブライアさんはここで休んでいて下さい。」

 

 「おいっ、ダメだ!危険すぎる・・・」

 

「大丈夫・・・とは言いませんが!俺達は修理屋である前に技術者です!技術者なりの戦い方でこの状況をひっくり返してやります!・・・それに、この超優秀なアリスもいますし!!」

 

「マスター!やだ、優秀とか可愛いとか・・・恥ずかしいです・・・!」

 

「いやっ、誰も可愛いなんてひと言も言ってないんですけど・・・」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

前方車両の上、エムズコクピット内・・・

 

「では、プログラムを投下・・・開始!!」

 

「はいっ!マスター!!」

 

拡張空間に向けてフロンティアライン完成プレビュープログラムを投下させた・・・。