8mgの小説ブログ

WEB小説(ちょっと挿絵)のブログです。ブログ形式だと順番的に少し読みにくいかもですが、一章ごとに完成したら、別サイトにアップしたいと考えています。※このサイトはリンクフリーです。

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WEB小説『画面の向こうのプロレスラー』をメインで更新中!ちょっとアレな性格の女子レスラーの成長物語ですm(_ _)m

WEB小説 拡張された世界 〜プロローグ〜

この世界を一言で表現すなら・・・



「 人 類 は 夢 の 中 で 生 き て い る 。 」




目の前に映る景色はプログラムによってつくられた世界



現実を上から塗りつぶしたまるで夢のような世界

 
拡張された現実 と 閉ざされた真実 ・・・ 人はそう呼ぶ


街を行き交う人々の和やかな表情


その笑顔を齎せるのは、プログラムによる夢の演出


永遠に続くかのような夢 ・・・ 

 

ここまでがポジティブな部分 ・・・

 

そして、俺は掛けている眼鏡を外す


目の前に広がるのは、閉ざされたグレーの世界



これが俺達の住む世界の真実だ







【 俺の名前は月ヶ瀬悟(つきがせ さとる) 】
 

AI研究の権威、永森博士の研究チームに所属していたが、色々あって現在は街の修理屋をしている33歳ー。


次に、この地球と言う星について語ろう。

先の世界大戦で人間以外の動植物も含め、そのほとんどを壊滅させてしまったこの星・・・灰色の大地に、核の冬が開けたとはいえ、日照時間もほぼ無いどんよりとした空、それが今の地球の姿だ。

その地球を再生させる為、世界には7つの人工知能が搭載されたマスターコンピュータから成り立つ統治機構「リアース」という惑星再生計画が生き残った人間達によって設立された。

 


現在の地球は、このリアースというコンピュータによって統治・管理されている。



ナノマシーンによる空調・水質環境の再生、土壌整備から植物、農作物の大規模運営システムの部分的構築など、人類が再びこの地球で生きて暮らしていくために必要な分野のほとんどをこのリアースを基盤として再生・循環されている。

 

そして、この星の生物の管理・・・リアースは地球上の全ての生物の管理も担う。
もちろん、私達人間もその中に含まれ、人類はリアースによって管理されていた。

人類が二度と大きな過ちを犯さないように、地球全ての統治をコンピュータに委ね、リアースによる世界の中で私達人間は、生まれ、暮し、そして死んでゆく・・・

この世界の重要な機能のほとんどはコンピュータが担っている世界・・・そのコンピュータが請け負いきれないすき間の部分を埋めるのが私達人間の役割だった。

 

しかし、そんな世界の中で人の心・精神は満たされているのだろうか?


それを補うのが 『 拡 張 さ れ た 世 界 』


人が生まれた時、まず脳にナノチップを埋め込まれるのがこの世界のシステムとなっている。

そのナノチップは、病気の早期発見や低周波による早期治療など、人が健康であり続けるための医療用チップとしての機能が表面上での目的だが、その他にも人をナンバーリングする事で個人の情報や戸籍を管理し、銀行や公共施設など全ての機関の利用を円滑化させる有益なシステムであったが、人権問題など大きな反面も存在していた。

しかし、先の世界大戦を生き残った人間達は自らが持つ人権を放棄してもコンピュータの統治管理による世界にかけたのだ。これによって、人工知能コンピュータの集合体「リアース」による管理運営の世界が今日の地球の姿・・・つまり、リアースはこの世界の神、絶対的存在なのだ。

 
また、ナノチップによる人間の脳への干渉もこのシステムの大きなファクターである。人の脳に微弱な低周波を送り込む事で、人の目に映る世界を拡張させる・・・

 

これを ” 拡 張 世 界 (オーグリアリティ) ” と呼んでいる。

この拡張世界の中で人類は生きている。

地球上の99.96%の人間がナノチップを脳に埋め込んでいるが、それを持たない人間も僅かには存在する。俺、月ヶ瀬悟もその中の一人だ。俺の脳内にはナノチップは無く、代わりに俺が付けている眼鏡のように、疑似ナノチップ機能を搭載させた端末機器を使いながら、拡張世界を生き抜く人間も存在しているのだ。

 

ナノチップを脳に埋め込まない人間というのは、主に「コンピュータによる人間世界の支配」に反逆する勢力に所属している者がほとんどだが、俺はそういう過激派ではない。
生まれた場所がその反リアース派勢力の中だっただけで、物心がついた頃には、育ての親でもある世界的に有名な永森博士の元で研究員として勤しんでいた。それからも、脳内にナノチップを埋め込む手術はしなかった。なぜなら拡張世界(オーグリアリティ)とは違う、真実の世界が見れなくなるのが恐ろしかったからだ。


眼鏡を外す・・・。

眼前に広がるのは、無機質な白壁の建物が延々と続く世界、1つ1つが白か灰色の物体で構成された世界だ。そして、空はどんよりとした曇り空というよりは霧のかかったような灰色の空・・・先の世界大戦の後遺症である。こんな色のない世界・・・それがこの地球の本当の姿なのだ。

眼鏡をかける・・・。

先程までの白と灰色の世界から一変して、青い空、カラフルな街並、1つ1つの物に命が吹き込まれたように動き出す世界。無機質な真実を上書きする有機的な現実・・・これが拡張世界(オーグリアリティ)だ。


灰色の世界・・・地球の本当の姿の中で生きて暮らしていると、いつか精神が病んでしまうと思う。だから、地球を統治する『リアース』は人々の目に映る世界を拡張させたのだ。

真実と拡張された現実とを行き来しながら、俺の物語はスタートする。