WEB小説 拡張された世界 〜第一章23〜
エムズに乗り込んだ俺とアリス・・・相変わらず彼女はここがが定位置だと言わんばかりに、俺の膝に座ってくる。
「満身創痍だと思うけど、もう少しだけ頑張って動いてくれ!」
俺はそうエムズに呼びかける。損傷率は79%・・・はっきり言って爆発炎上を引き起こしかねない状況だ。
「マスター!私には・・・!?」
「あぁ、アリス・・・まぁ、ガンバレ!」
「ブー!なんですか、そのやる気のない激励は!!」
「冗談だよ!アリス・・・当然頼りにしてるよ!お前も俺もここで踏ん張らないと、お互いこんがりとエクスプロージョンしてしまうからな!」
「はいでも、そうはさせません!マスターは私が必ず守ります!」
「ありがとう、アリス!ほんとお前は頼りになるAIだよ!」
俺とアリスは、最後のミッションについて確認しあった後、残り僅かなエネルギーバックパックを使って、エムズを飛び上がらせた。
当然、17式の迎撃ミサイルの照準がエムズに集まるが発射されなかった・・・
それは、17式のコア・・・中富博士のAIがプログラムに対して必死に抵抗しているからだった。
もうこの世にはいない存在である中富博士。
彼は自分の脳を電脳化して、死亡とともに自分の電脳を17式AIに移植した。
だからと言って、中富博士自身は延命出来た訳ではない。器として電脳を活動させ続ける技術は存在しているが、その電脳の意思・・・つまり人の心まで存在させ続ける技術は、この世界にはない。
しかしながら、先程の付随車両内の拡張空間には中富博士の意思がはっきりと存在し、コミュニケーションを取ることすら出来た。
計算式では説明出来ない事象が、拡張空間で起きたのだ。人の心・魂を映し出す、具現化させる力が拡張空間には存在している。
この現象・・・可能性を研究していたのが、私の恩師、育ての親である永森博士であり、その研究の成果を、バックアップメモリーに集約させ、そのメモリーを備え付けたのが、このアリスである。
拡張空間・・・拡張されたこの世界の可能性を追求する上で、俺やアリスが、こんな所で終わってしまう訳にはいかないのだ!!
「中富博士!!!」
・・・うまくエムズを17式の上部に着地させた!17式はエムズの着地の衝撃で大きく揺れ、思わず脱線しそうになる。
・・・と、同時に中富博士のジャミング制御が解け、大量の迎撃ミサイルが発射された・・・ミサイルは数十メートルの位置まで上昇し、こちら対象目標のエムズに向かって飛んでくる。
・・・「「 間に合えーーーッ!!! 」」俺とアリスは共鳴するように叫びながら、エムズの最後の一手・・・脚部のローラーを切り離し、高熱を帯びた脚部をそのまま17式に突き刺した・・・狙ったのは、中富博士のAIが搭載されているコア部分だった。
脚部の高熱で、コア部分を焼き切ったのだ。
・・・・・・・・・・
「目標、完全に沈黙。」
「よしっ!!!」
「ミサイル来ま・・・」
モニタ−越しに目の前が明るくなる。超大型のスポットライトで照らされたような状態と思った瞬間・・・その後の記憶は覚えていない。
ドゴォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーンンンッッッッッ!!!
ガシャァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーンンンッッッッッ!!!
ドオォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーンンンッッッッッ!!!
・・・何十発もの迎撃ミサイルを打ち込まれ、エムズ(対犯罪者用戦闘重兵器車両EMZ-03)は大破した・・・