WEB小説 拡張された世界 〜第一章10〜
ブライアさんに対犯罪者用戦闘重兵器車両EMZ-03(エムズ)の搭乗許可をもらった俺とアリスは、早速、エムズのコアコンピュータにアリスのコアを代理接続させる設定に取り掛かかる。
エムズとアリスをケーブル接続して、チョチョイと打ち込み設定すれば・・・ほらこの通り・・・
「接続設定完了しました!」
アリスとエムズが完全リンクされ、モニターには A L I C E という文字がエフェクト点滅している。
「これは、凄いな!」
「はい、基本操作は変わらず、レバーとペダルをお使い下さい。もしくは、私に話しかけてくれればそれに従います。」
「このお嬢ちゃん、凄い性能だな、修理屋!?一体、どんなAIを積んでるのか聞きたくなるよ!」
鋭い突っ込みを入れてくるブライアさん・・・流石にアリスのスペックを披露し過ぎ感はある・・・が、この一大事に躊躇っている暇はない。
「詮索すれば、この世界から消されるレベルのAIです。」
「そうか・・・まあ、深くは追求しないよ!それより今は、早く現場に向かわないとな!」
ブライアさんは深く詮索してくるような、そんな性格では無いとわかっていた。
「ドックハッチを開けてくれ!これより、現場へ急行する。」
ブライアさんがオペレーションルームに呼びかけ、ドッグハッチが開く・・・
「ブライア・イグニス、エムズ、発進する!!」
掛け声と共に、エムズが急加速して、ドックから発進した。
「オォォォォーーーッ!すげぇぇぇぇぇーーーーッ!!イグニスさんカッケーっスよ!アニメとかでやる本物の発信だ!」
俺はちょっとテンションが上がってしまう。俺もやりたい。
「マスター、はしゃぎ過ぎですよ!」
俺が調子に乗った発言をする時は。きっちりとアリスは突っ込みを入れてくれる。
「オーグセキュリティEを出た瞬間、晶子様から通信連絡が届いています。応答しますか?」
ひぇぇぇ〜、流石、鬼の笠原晶子課長・・・本来今頃は改修中のはずのエムズ一号機が発進したものだから、何というアンテナ・・・恐れ入ります。
「えぇっと、エムズ一号機は改修して間も無く、通信系統に異常が発見されております・・・という感じで、通信エラー信号を送り返しなさい。」
「了解です。マスター!」
「修理屋・・・」
「大丈夫です、ブライアさん!俺も一緒に謝ります!」
「そうか・・・笠原課長の鉄拳制裁はキツイぞ!」
「はい、よく知ってます。ですが、擬態化してバージョンアップした晶子のパンチは受けた事がないので凄く心配です。」
「ははっ!大丈夫!修理屋も擬態化すればいいだけだ!」
擬態化推しをしてくるブライアさんだったが、今、俺がしている事はオーグセキュリティ捜査官の犠牲を減らすためにしている事だから・・・と自分勝手な謎理論で勝手に俺は納得した。そして通信を遮断した。
「今、晶子達はどこにいるんだ?」
「オーグセキュリティ屋上で、輸送機へ搬入・搭乗されておりましたが、先程離陸された様子です。」
アリスの報告では、オーグセキュリティ所有の輸送機は、別の基地にあり、その手配には許可申請等含めて、少し時間がかかるらしい。これも、空輸や航空戦力を望まないリアース(地球の統治管理コンピュータ)の意思が働いているようだ。
「どちらが先に着くかなぁ!向こうは空から、こっちは陸からだから出遅れるかもな。」
「大丈夫です、ブライアさん!このエムズには秘策があります。必ず、現場へ先回り出来ます!」
「本当か!?」
「はい、実は自分もさっきこのエムズのシステムをいじっていた時に見つけただけなんですが・・・やってみましょう!」
「ああ、でもどうやってそんな高速移動するんだ?向こうは空輸だぞ!対して、こちらは陸上移動・・・」
「こちらも空から行くんです!空輸ではなく、大ジャンプで!!」
「大ジャンプ!?」
・・・対犯罪者用戦闘重兵器車両EMZ-03(エムズ)の隠された機能を使って現場へ最速で向かうことにした・・・