WEB小説 拡張された世界 〜第一章09〜
「悟っ!くれぐれも余計な事は考えないで依頼した仕事を続けてればいいから!!」
俺は晶子に改めて、事件に首を突っ込まないように釘を刺される。
「了解・・・事件解決・・・頑張れよ!」
晶子は俺とアリスを見ながら、少し頷くと現場へと向かう・・・小型戦闘車両など装備品を整えて、エレベータへ積み込み上昇ボタンを起動する・・・屋上のヘリポートから、輸送機で現場付近へ向かうそうだ。
「ブライアさんは、居残りですか!?」
「いやっ、俺はエムズ二号機で出撃かな・・・」
ブライアさんは、晶子達とは別行動を取り、本日俺が改修依頼されている対犯罪者用戦闘重兵器車両EMZ-03(エムズ)・・・その二号機で現場に向かうとの事。
「ブライアさん…もう少し、待ってくれませんか!?この一号機の改修がまもなく終わりますので!!」
「どれくらい?」
「15分くらいです!」
「・・・それで、修理屋も一緒に乗って試験調整しようって魂胆か?」
「そういうことです!」
晶子は頑なに俺の協力要請を断っている以上、本丸攻めではなく、外堀から攻める必要がある・・・だから、ブライアさんにアプローチを掛ける。
「無理だなぁ・・・それだけじゃ、課長に言い訳出来ないよ。」
「そうですか、それじゃ・・・」
とっておきの方法を提案しようとした瞬間、また警報音と共に列車暴走事件の続報が入る。
『先発隊が原因不明の攻撃を受けて後退、繰り返す・・・原因不明の攻撃を受けて後退。捜査官の安否は不明』
・・・恐れていた事が起こった・・・
暴走列車に最初に駆け付けた捜査官達が、列車に接触を試みる・・・そして、列車の後ろ…ステルス機能を搭載した装甲列車から攻撃を受けたに違いない。原因不明の攻撃という事は、装甲列車からの攻撃もステルスコーティングされているという事だろうか?だったらこの状況はかなりマズイ・・・
「アリス!ここの装備であの装甲列車に勝てるか??」
「現在の勝利確率は13%です。エネミーリサーチ後に確率は上昇します。」
「現場に駆け付けた捜査官は、当然ステルス対策はしてるはずなのに、それでも攻撃を当てられたのはどうしてだと思う?」
「おそらく、赤外線モードの死角から攻撃してきたものと推測されます。」
暴走する装甲列車は思考・策略を働かせる事が出来、捜査官の裏をかいて攻撃を撃ち込んだ・・・経緯から間違いなく人の電脳が搭載されているはずだ。
「なんと!・・・笠原課長!」
ブライアさんもこれからの行動・判断について、かなり迷っている様子だった。
「ブライア様、このまま敵戦力と戦闘になった場合・・・例え勝利したとしても自戦力の4割から7割の犠牲を払わなければならない演算結果になります。」
アリスの言葉にブライアさんの表情もさらに険しくなる。切迫した状況下で、俺はもう策をろうするのはやめ、正面からブライアさんにお願いする事にした。
「だから、ブライアさん!このドック内で一番戦闘スペックの高いエムズを使って下さい!」
「まだ出来上がってないだろ!?」
「メインコアコンピュータはまだ改修中ですが、代理のコアと繋げれば今からでも動きます!」
「代理のコアってどこに!?」
「ここにあります!」
俺は、アリスの頭にポンと右手を乗せて左手でアリスを指差す。
「お嬢ちゃんが代理のコンピュータになるっていうことか?」
「そうです。エムズの解析もしているので、操作系統の誤差も修正出来るはずです。そうだよな、アリス?」
「はい、マスター!誤差は0.007迄抑える事が出来ます。」
「現場に向かいながら、システムの組み立てもします!だから俺達に任せて下さい!」
「・・・あぁ。でもどうやって言い訳をするべきかな・・・」
「そこは任せて下さい!確か俺に逮捕状が出てましたよね?」
晶子は俺に逮捕状を用意してくれていた。容疑は『電子不純わいせつ容疑』・・・アンドロイドに対する数々の嫌がらせ行為に対する容疑という、とんでもない案件で逮捕状を本当に用意してくれていたのだ。
「容疑者として、俺月ヶ瀬悟は拘束され、エムズに搭乗し護送されている最中に事件が発生した。」
「当然、事件に解決にはエムズが必要であり、容疑者を拘束しつつ、現場に向かう行動を取った・・・というシナリオだな!?」
「そういう事です!」
暴走する装甲列車は、ステルス機能を搭載しており、まだ解析すら出来ていない状況・・・この段階での戦闘は自殺行為に等しい・・・だから誠心誠意でブライアさんにお願いする。
「修理屋!お嬢ちゃん!今回の事件・・・最後までナビゲート頼んだぞ!」
「はい!喜んでッ!」
俺とアリスは揃って返事した。