WEB小説 拡張された世界 〜第一章07〜
エムズ(対犯罪者用戦闘重兵器車両EMZ-03)のメインコアコンピュータを作り直すために、俺はコクピットのシートに座りなら、プログラムを打ち込んでいる。
「マスター、失礼します。」
と言いながら、アリスは割り込むように俺の膝の上にちょこんと座ってくる・・・
「アリス、何やってんの??邪魔なんだけど・・・!?」
「いえっ、マスターのお手伝いをしようと思いまして・・・!」
「手伝うどころか、お前の頭が邪魔でモニタが見えないし、動きづらいし・・・てか、何で俺の膝に座ってんの!?」
「マスターが喜ぶと思って・・・」
「そんな事では喜ばないし(ちょっと嬉しいけど)作業効率ダウンだから、座席の後ろでデータ構築処理してもらえるかなぁーーー!!??」
「だって、こうしてマスターと一緒に現場で作業出来るのが3ヶ月ぶりなので・・・もっとマスターの近くに居たいんです!」
「アリス・・・」
「マスターが私を見てムラムラして、心拍数を上昇させるようにする事が、今私にとって一番重要なミッションです。」
「アリスちゃん、そんなミッション一言も命令した覚えはないよ!どこからの命令かな!!??」
「 ヒ ミ ツ で す ♡ 」
「 立 ち 去 れ ぃ っ ! ! 」
膝の上に座るアリスを追い出そうと揉み合いになっている所・・・
「お熱い所、申し訳ないけど、ちゃんと仕事してくれよ、修理屋!」
「違うんです、ブライアさん!これは、こいつが・・・って、俺はそんな趣味はないです!!」
「マスターは年齢で言うと、約14歳〜47歳ととても守備範囲の広い女性の嗜好・・・」
「いいから、お前は黙ってろ!!」
アリスを追い出して、ブライアさんにコクピットに座ってもらい、進行状況を確認頂く事にした。
「まだ、右腕部分しか構築出来ていませんが、反応誤差が0.8%減少させられました。」
「ん〜、まだ何とも言えないけど、ガトリンクを使えば実感できそうだな。」
「まあ、こんな感じで改修していきますので、もう少し待っていて下さい!」
「ああ、期待してるからな、修理屋!」
ブライア・イグニスのおやっさんは、気さくで頼りがいのあるオーグセキュリティの捜査官だ。経験も豊富で、このオーグセキュリティに務める若手職員の相談相手にもなっており、03部以外の部に所属する職員とのパイプ役もこなしているらしい。おやっさんが晶子をサポートしてくれているからこそ、オーグセキュリティE-03部はこれまで数々の事件を解決して成果を挙げ続けていられる。
「晶子は相変わらずそうですね?」
「ああ、俺達オーグセキュリティのアイドル…笠原晶子課長は常に事件と向き合い、常に事件解決に向けて全力を注ぐ・・・そんな俺達職員の理想を体現したようなヒロインだよ。」
「晶子が・・・ヒロインですか・・・ここは相当な人材不足ですね。」
「いやいや、そんな事はないよ!笠原課長の親父さんは、オーグセキュリティB長官ってこともあるけど、事件現場の前線で指揮する課長の勇姿は絶対に惚れるぜ!」
「そんな、長官の娘がなんでキャリアの道を踏まずに、全身擬態化電脳化してまで最前線に立つんでしょうね??」
晶子は、この世界・・・人間社会の治安を脅かす事件に対して、恐ろしい程の執着心を持っている。それに気づいたのは、俺が地球に落ちて来て、病院を退院した後の事だった。俺が入院している時、何度も訪ねてくれた彼女だが、彼女の思想は大学時代と比べると大きく変わったように思う。
一つの漏れも出さないように犯罪者を徹底的に探す・・・そして、潰す・・・そんな感じだった。
なぜ、そこまで執着できるのかについて、聞こうかと思った事もあったが聞けなかった。何かパンドラの箱を開けてしまうような気がしたからだ。
・・・その時だった・・・
ブワァーンッッッ!!ブワァーンッッッ!!ブワァーンッッッ!!ブワァーンッッッ!!
緊急警報がフロアに響き渡る・・・続いてアナウンスが鳴り響く・・・
『 事件発生・・・事件発生・・・情報局から入電。エリア07-17から07-16エリアへのナンバーズライン上で鉄道車両1両が暴走。原因は現在解析中・・・。 』
ナンバーズラインというのは、人間の居住区を繋ぐパイプラインで、その上を旧時代の産物とも言えるレール式の鉄道が走り、人々の移動手段となっている。この世界のインフラ環境は、空輸は極力制限され、レール式の鉄道や幹線道路が主流となっている。それが、リアースが決めたこの世界の方針だ。
その鉄道路線上で列車が暴走しているらしい。
「修理屋、ちょっとすまんな!」
ブライアさんは飛び出すようにブリーフィングルームへと向かった。事件が起きると捜査官達はまず先にブリーフィングルームに集まるのがルールのようだ。
「マスター!!」
「うん、俺達も”ちら〜っと”見に行こうか!!」
「はい、マスター!!」
俺達もブリーフィングルームへと向かった。