WEB小説 拡張された世界 〜第一章06〜
どこから手をつけようか・・・
まずはこのエムズ(対犯罪者用戦闘重兵器車両EMZ-03)の現状スペック解析から始める事にした・・・
「マスター!解析を始めます。約2分程お待ち下さい。」
アリスの左耳に付いている差し込み口とエムズの内部コンピュータとをケーブルを使って有線回線で繋げる。情報解析能力にも長けたアリスにとっては、どんな機械でも診断する事は可能だ。
アリスが診断している間…笠原晶子やブライアさんにエムズに何が足らないのかを聞くと、揃って操作性について問題を指摘した。
アリスが診断している間…笠原晶子やブライアさんにエムズに何が足らないのかを聞くと、揃って操作性について問題を指摘した。
「エムズの操作系統は何回も改修してるのよ!でも、搭乗するとなぜか思うようにいかないの!」
「いっ、いえ!丁重にお断りさせて頂きます、はい。」
素人の俺相手に笠原晶子は大人げなく本気で突っ込んでくる未来が見える・・・彼女は負けず嫌いの化身だ。
「マスター、解析終わりました。結果を報告します。」
素人の俺相手に笠原晶子は大人げなく本気で突っ込んでくる未来が見える・・・彼女は負けず嫌いの化身だ。
「マスター、解析終わりました。結果を報告します。」
そう言いながら、アリスは丁寧にもコクピットモニターに解析結果を映し出してくれる。
・・・0と1の羅列がモニタ画面ぎっしりに埋め尽くされている・・・
「何が書いてあるかさっぱりわからない。言語プログラムで変換してもらえる?」
・・・0と1の羅列がモニタ画面ぎっしりに埋め尽くされている・・・
「何が書いてあるかさっぱりわからない。言語プログラムで変換してもらえる?」
「いやっ、大丈夫。大体何が問題なのかは解ったよ。つまり、あれだ!
このエムズは、上半身と下半身にそれぞれ制御コンピュータが備えられていて、その2台のコンピュータを繋いでいるのが、識別AIを搭載したメインコアコンピュータだ。
でも、そのメインコンピュータは、一世代前のコアを使用しているため、情報処理部分でズレが生じ、それが操作性の違和感に繋がっている…という分析結果だ!」
「つまりは、最新型のコアに置き換えると解消するって事!?」
「そういう事!!だけどこのエムズタイプのコアコンピュータを手に入れるのはおそらく難しいと思う・・・。」
「どういうこと?」
「エムズの最新機種EMZ-00Fのメインコンピュータも、こいつと同じ古い世代のタイプだからだ。つまりは、古い世代のコンピュータで頑張って戦えよ!って事。エムズの次世代タイプのコアコンピュータを搭載しているのは、月面作業用ロボットLAMくらいしかないと思うから、そのコアが回ってくるのは・・・到底無理!」
「なんなのよ、それ!」
「こいつの性能をフルに発揮させたら、お前らオーグセキュリティが何かよからぬ事を考えるのでは?・・・と思ってるんじゃない!?」
「・・・・・・・・・・・・・」
笠原晶子は口には出さなかったが、かなりの怒りを感じている様子だった。
もちろん、その矛先はこの世界を統治・管理するコンピュータ『リアース』にだ。
この世界に住む人間達はリアースの統治の元で生きている。リアースは言わば、この世界の神的存在であり、その神から与えられた物や環境の中で人間は生きている。
この世界に住む人間達はリアースの統治の元で生きている。リアースは言わば、この世界の神的存在であり、その神から与えられた物や環境の中で人間は生きている。
その神は、人間達の世界を人間達の手で円滑に回すために、ある一定の武器を与えた。
でも、それはある一定のみで、それ以上を望む事は許されないのがこの世界の理なのである。
「私達にどうしろと言うのよ!」
震える声の笠原晶子に、俺は声を掛ける。
「大丈夫だ。晶子!!」
「そうです。マスターが今からコンピュータを作り直してくれるので、大丈夫です!!ねっ?マスター?」
「お前が言うか、アリス!?」
晶子の悲痛な想いは理解しているつもりだ。リアースから与えられた最低限の武器装備で最大限の効果を発揮させながら、この世界の治安を維持している。
もし、オーグセキュリティだけで手に負えない事態が起こった場合・・・いよいよ、リアースが動き出す事になるのだ。そう言った事件が発生した例は少なからず存在する。
地球上のあるエリアで、多発テロが起こり、暴動が発生した。そのエリアのオーグセキュリティでは収拾がつかなくり・・・その結果、リアースはある行動に出た。
・・・エリア全域を封鎖し、そのエリアの物・生物全てを消失させたのだ・・・
人間や動植物を含めた全ての物を消失させた。その方法については公開されていないが、この事件について、深く追及する事もタブーとされている。
そんな神の存在がある中で、晶子達オーグセキュリティは、この世界・人間社会の治安を維持していかなければならず、その苦労は容易に想像できる。だからこそ、俺はそんな中で戦う晶子に手をかさざる負えないのだ。
「それに、アリスが解析してくれた報告画面の後半部分にはな・・・”このY系回路をX系回路に繋げたらいいんじゃないかな~”とか”このプログラムを書き換えてほしいな~”とか色々書いてあるんだよ!頼んでないのに・・・」
アリスの分析報告欄には、現状の結果だけでなく、問題解決する為の、説明方法まで詳細に報告してくれていた。
「アリスちゃん!!」
「べっ、別にあなたのために解析サポートしたんじゃないんだからね!勘違いしないでよね!」
「アリス、お前・・・そのツンデレどこで覚えた!?」
「べっ、別にあなたに答える必要なんてないんだけど、今回だけ特別に言ってあげるわ!ユーザーが集まるアリスサーバーで覚えただけよ!」
「とりあえず、アリス!お前のそのふざけたツンデレプログラムデータを後で消去してやるからな!」
「晶子様、助けてください!マスターが私の中を覗こうとして・・・痴漢してくるんです!!それも毎日・・・!!」
「大丈夫よ!アリスちゃん!悟の逮捕状はいつでも用意してあるから!!」
いつの間にか、このアリスの電脳AIはどんどんと進化しているように思う。これが永森博士が俺に託した夢なのか・・・末恐ろしい、その片鱗を見た。
「まあ、現状のコンピュータプログラムをベースにつくり直す訳だから、そんなには時間は掛からない、今日中には出来ると思うよ!」
「ありがとう!悟!」
晶子の心の中のモヤモヤが少し和らいだろうか・・・?
少しの笑顔も見せながら、晶子は俺達に現場を託して立ち去る。アリスの分析結果をデータベース上に残すそうだ。
「じゃあ、始めるか、アリス!」
「はい、マスター!」